どんな時でも――
――一方その頃……。
「ったく……防衛戦も楽じゃねぇな……」
ラルクは、中庭でそよ風に打たれながら、弾の補充をしていた。拠点外から襲撃されて、社会科見学へやって来た小学校の児童達や教師達を拠点内へ移動させたため、風の音がハッキリと聞こえている。
すると、中庭の目立たない場所から、黒い穴が出現した……!
「邪魔スル者……排除スル!!」
「うわぁ! いつからここに? お前、さっき俺達を襲ってきた奴なのか?」
「襲ウ? 俺タチは、奪イカエシ二来タダケダ……主……ノ望ミダ」
「主? どーせあの先遣隊三人組の一人のベンガルのことだろ? あいつら、ろくなことしねぇから、大したことねぇよ!」
「三人組……? ベンガル……? 何ノ事ダ? 我ガ主ハ一人ノミダ、下級ノ先遣隊デハナイ!」
「あっ? ベンガルじゃなかったらヴェンルかシャド・ニャンなのか? ハッキリとしやがれ!」
ラルクの言葉を一切耳を傾ける事なく、ヒューマル・アサシンはラルクに刃を振り下ろした……!
「消エ失セロ!!」
「ラルク! 危ない!」
ヒューマル・アサシンは、『Ice』タイプのマジックにより、足を捕らわれて動けなくなった。ラルクはヒューマル・アサシンの攻撃を回避する。
「おっ! 優二じゃねぇか! 助けに来てくれたのか~!」
ラルクのルームメイトで、知識豊富なマジックユーザーの『夜咲 優二』だ、彼は中庭に入ってすぐに、ラルクを支援をしたのだ。ヒューマル・アサシンは自身の足に向かって、刃を振り下ろして、氷を散らしながらこう話した。
「ク……邪魔ナヤツラガ増エヤガッタ! 何度モ言ワセルナ! タダ、奪イカエシ二来タダケダト!!」
「君が何を返しに来たのか言ってくれないか。オペレーターから、ウイルス因子が奪われたって情報があったけど、それが狙い?」
「貴様ラニ口ヲ貸スワケナイダロウ!」
ヒューマル・アサシンは、時間の無駄を感じたのか、再びここを去って行ったのだ……。
「あっ……また逃げやがった!! 転売ヤーと同じくらいきたねー野郎だ! あ、それよりもさ優二、さっきはサンキューな!」
「言っとくけど、児童が危険に晒されてるって聞いて、駆け付けただけだよ」
「児童……? 他に誰がいるんだ……?」
「見ろ、あそこの木の後ろにいるだろう」
優二が一番長い木の根の部分を指差して話した。その先には、木の後ろから小さな影がひょっこりと姿を表したのだった……。
「あれ? 本当だ! なんでここにいんだ? 先生の後に付いて行くべきだっただろう?」
中庭に残っていた児童は、咲人だった。咲人は服の裾を掴みながら、下を向いて話していた。
「実は、ここの中庭を散策して、戻ってきたら、誰もいなくなったんだ……」
「えっ……? なあ、ラルク……確か、中庭は児童達が使ってたはずだけど、今いるのは、僕たちだけだ……どうなってるんだ……?」
「あ~……一から説明するとさぁ~……――」
ラルクは先ほど起こったことを詳しく、擬態語が多くして、説明した……。
「なるほど……それで今の状況に……」
「ああ、早く先生達の元へ返してやらねーと……んで、お前名前は?」
「オレは、『和泉 咲人』、今日、フューチャーファイターズの拠点に行くって言われて、ワクワクしてたんだけど、まさかこんな事になっちゃうなんて……」
「それよりも、ここは危険だ、咲人くんも中に入ってみんなと合流しよう」
ラルク達は、咲人を拠点に避難させようかとした所、ラルクの端末から、着信音が聴こえてきたのだった。
「ラルクさん、優二さん、いますか?」
「おう、いるぜ!」
「レイさん? どうかなさいましたか?」
「実は、ホース小学校の教師さん達と連絡が取れないみたいなんです……現在、校長先生が何度も通信を行っていますが、何度やっても上手くいかず……それどころか、授業に使う部屋も何だか異常事態になってたらしく、イリルさん達と一緒に調査をお願いできますでしょうか……」
「やっと出番が来たか~! 俺と優二はいつでもいけるぜ!」
「許可なく、人を巻き込んで物事を決めるなよ……。僕も行くけど……」
優二の横にいた、咲人もレイとの通信に割り込んできて――
「待って! オレも連れてってください!」
「あなたは、ホース小学校の……」
レイは咲人の言葉を受け入れたい気持ちがあった。しかし、彼はまだ子供な上にTypeの力に恵まれていない。もし、彼の身に何かがあったら、戦士達では責任を負い切れないだろう。レイは、そのことを考えながら、遠回しに待ってもらおうと説得する。
「お気持ちはありがたいのですが……戦士達が向かう場所は危険がいっぱいなので、あなたは校長先生と一緒に拠点へ残った方が……」
「でも、戦士になるには、どんな事でも立ち向かうべきだって、お父さんが言ってた! 多分だけど、みんなその部屋にいるはずだと思うから……!」
「レイさん、なるべく咲人くんから目を離さないようにする。なるべく無茶な戦いを避けるから。その上で防衛用の物を持たせるようにする、それならいいだろう?」
優二が咲人の言葉を耳にして、微かな微笑みをしながらも、レイに話した。その後、校長先生が通信に入って来て――
「咲人くん、君の戦士の情熱は伝わったよ……でも、ウイルスと戦いになったら、なるべく安全な場所へ隠れててくれ……」
「はい、わかりました!」
「……状況は把握しました。優二さんにラルクさん、咲人さんに例の物を渡したら、急いでイリルさん達と合流を! 校長先生、お急ぎのところ申し訳ございませんが、皆さんを見つけ出してみせます!」
「ありがとうございます……」
咲人は、レイに膝を曲げてお辞儀をした。優二は端末から、何かを取り出した。
「はい、咲人くんにはコレをあげるよ」
「これは……?」
優二は咲人に、カードのような物を渡した。カードには、絵本に出てきそうなウサギの絵が描かれている。
「これは、ウイルスから守れる物なんだ、きっと君に役に立つと思うよ」
「ありがとう、優二お兄ちゃん……?」
「礼には及ばないよ。君は何だか、小学生時代の僕にそっくりな気がしてさ」
「準備は整ったみてーだな! 急いで行こうぜ!」
ラルクと優二は咲人を連れて、急いで拠点内の目印の部屋へとむかうのだった。
――そして……目印の部屋にて――
「イリル!」
「来たね……ってん? その子は」
「オレ、『和泉 咲人』です……実は、みんなここに閉じ込められたかもしれないから、一緒に行くことになったんだ」
どういう事か、優二と呼ばれる戦士から、説明を的確にかつ簡単に説明してもらった……。
「さぁ、開けるわよ!」
私とセナで、ドアを押したら、何だか不気味な基地のようだった……。何だか禍々しい煙が出ているし、怪しい画面が沢山浮かび上がっている……。
「なにコレ?! フューチャーファイターズの拠点にこんな部屋あったの?!」
「いえ、ここのドアは多目的ホールのはずです……ここはしばらく使ってない為、昨日掃除したばかりのはずですが……恐らく――」
途切れ途切れになっているレイとの通信が、等々一瞬にして切れてしまったのだ……。
「あれ……? レイ?」
――接続エラー




