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3020ストーリー~『第二の地球』と戦士の記憶を辿りながら~  作者: ユニィウルフ
〈第一章〉共鳴する過去の灯

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支えてきた人

 私達は天皇の血を継ぐ、天閃野家の檜木様と、娘の若葉と合流する事になった。外への合流は一段落して、食事をしながら、合流する事になった。

 向かった先は、何だか高そうな懐石料理の店だった……内装は畳が敷いてあり、庭から水が流れてくる音が聴こえてくる。


 「さぁ、こちらの席へ……ここは若葉のお気に入りの店であります」

 「わぁ~素敵! 私、懐石料理食べるの初めて~! ご招待頂いて、ありがとうございます!」

 「お気に召して、感謝致します」


 私は檜木様達にこれまで起こったことについて話した。


 「なるほど……ウイルス因子が立て続けに……」

 

 酢橘は、手を顎に乗せながら話していた。


 「親王様、これはやはり、シャドウ・ウイルスの復活の予兆でしょう……ウイルスが再び襲撃して来たら、この第二の地球が……」

 「確かにそうだな……最近、ウイルス因子を使った犯罪が多くなってきたのはそれが原因だ……我々も慎重に調査命令を出したのだが、予想よりも遥かに早すぎる……」


 セナは力のない表情をしながら話した。


 「実は、私達がこの時代に時渡りしてきたのは、ウイルスの親玉の事なの……イリルが『ウイルス大戦』に参加した戦士の一人だって知ってるわよね……ただ……問題があるの……」

 「実は……『ウイルス大戦』も、自分が戦士だったってことも……思い出せないんだ……」

 「なるほど……記憶喪失……大変でございますな……」


 私が記憶喪失だって言うことを話すと、檜木様も若葉も、詳細を把握し、頷き、瞬きをした。そんな中で、酢橘はゆっくりと立ち上がった……。


 「親王様、私はトキワタリ様の過去を連想させるような場所をいくつか存じあげています。お食事が終わった後、私が皆様をご案内いたします」

 「いいの? ありがとう」


 酢橘は、少し、首を下げながら、話した。どうやら、過去に関する手がかりがあるみたいだ。しかし、酢橘も一緒に行くってこととなると、護衛が減っちゃう……そんな風に考えていたら、美菜が、手を上げた。


 「もし、酢橘様がイリルさんの護衛をするなら、私は天閃野家を護衛いたしましょう」

 「ご協力に感謝します」


 美菜は一時的に、檜木様達の護衛に就くこととなった。笑は、まだ茶碗を持っている様子で――


 「ん~たいめひおいひ~(鯛めし美味しい)♪」

 「笑……ちょっとは行儀を真紀和得なさいよ!」

 「あっ……ごめんなさい! 鯛めし初めて食べたから、つい……」


 笑は頬を赤くしながら話した。そして、最後にやって来る料理を食べ終えて、懐石料理屋を離れた。

 私は、セナと笑を連れて、酢橘に案内されるがままに、歩いて行った。そこは、松の木や梅の木が生えてあり、きっと庭園が近い場所だろうとも、何だか台があり、戦士や近衛兵達が使いそうな場所だった……。


 「『ウイルス大戦』に関する事の一つ目の場所ですが……どうか思い出せますか?」 

 「ううん……どっかで見たことある気がする……」


 私は目を瞑って考えた。『ウイルス大戦』の記憶の中で、思い浮かべた。松の木や梅の木の傍で、ここで何かしたのかを……。


 「あっ! ここはあの時の!」

ふとした瞬間、私はあの時の記憶が、蘇ったかのように浮かび上がった!


 ――「続いては、戦士代表の宣告です、イリルさんお願いします」

 「はい」


 そうだった、私はここで第二の地球全体で、『ウイルス大戦』の宣告をしていたんだった……。あの台にライルと一緒に乗って、宣言したんだった……。


 「大戦士に選ばれし物よ、我々フューチャーファイターズは長きにわたり、『ダークマター』と決着を付ける日がつくづくと近づいて来た。大戦士『ライル』よ、貴殿は優秀な戦士でこの『ウイルス大戦』に終止符を打つための、大役に選ばれた、貴殿は――」


 宣言をしていた途中、小言が聴こえたような気がする……他の戦士だったような……。 


 「お、おい、あいつ……練習の時よりも少し暗いな……」

 「仕方ないよ……イリルにとって、ライルはパートナーでもあるんだけど……ちょっと劣等感も嚙み合わせてるからさ……」

 「そう……まぁ、あの娘があの男に対しての考え方も分からなくないぞい」



 「ど、どうしたの……? イリルさん……何だか渋い顔していたけど……」

 「あの時の事を思い出した……ここは、大戦の前に行われた宣言をした所だ……」


 ブモォォォォ!


 「ヴァク・ブルズ?! 何でここにいるの?」

 「うわぁ!」

 「危ない! 笑様!」

 

 酢橘は笑を助けようと、抱きかかえながら、ヴァク・ブルズの突進攻撃を避けた! すると、動き出した反動で、兜が飛んで行ってしまった……。


 「怪我はありませんでしたでしょうか?」

 「だ、大丈夫です……ってあれ?!」


 笑は、地面に腰を下ろしたまま、酢橘に向かって、目を見開き、丸くした。髪の毛の色に顔立ちが、あの若葉にそっくりだった……。

 そして、カチャっと音をしながら、首からペンダントも出てきた……。


 「あ、あなた……ひょっとして、若葉様……?」

 「えっ?! い、いえ、私は……あっ……」


 酢橘(?)は、かぶっていた兜を確認しようとして、頭を手に当てた。すると、兜の場所を確認したら、少し、視線を逸らして話していた。


 「もう一回言うけど……あ、あなた……本当に、若葉様……?」

 「……はい……」

 「え、えっと……? んじゃあさっき懐石料理までの若葉様は?」

 「あ、あちらは(わたくし)の近衛兵こと、本物の酢橘です……」


 なんと……、若葉と酢橘と姿を入れ替えて合流してたことを明かされた……。セナはまだ「どうして」って言わんばかりの表情をしながら話した。


 「な、なんで、天閃野家のお嬢様がそこまでして、ここへ連れて出してきたの?」

 「申し訳ございません……しかし、騙すつもりはありません……実は、ここは……私の思い出の場所でもあったからなのです……」

 「思い出の……場所……?」


 若葉様は石で出来たベンチに座り、膝の上に手を置きながら話した。


 「はい、私と私のおばあ様との最後の思い出の場所であります……」


 若葉は、微笑みながら昔のことを話していた……。

 

 「母方の祖母、「天野山(あまのやま) (なずな)」様は、私にとって、人生の恩人なのです。私がまだ幼い頃から、剣術に興味を持ちましたが、全然うまくいきませんでした……」


 「剣なんか振っても、全然切れない! もうやだぁ! やめたい!」

 「若葉……この前も剣の稽古を休んだだろう……ダメだ」

 「やだやだやだやだ! 剣術なんかちっとも楽しくなぁ~い! 先生のお手本通り振っても全然切ってくれないんだも~ん!!」

 「若葉?! どこ行くんだ?!」


 「あの頃の私は剣術にうまくいかず、投げ出すことが日常茶飯事でした……その時、ここで座り込む事がほとんどでした……」


 「剣術なんか、もう無理~!」

 「若葉、簡単にすぐやめるって思わないで」

 「お、おばあ様……何でここがわかったの?」

 「お前さんは、嫌なことが起こってるたんびに、ここへと向かうことはわかってるんだよ。でも、ここはお偉いさんが戦士さんが使う場所だから、もう少し穏やかな所へと行きなさい……」

 「ごめんなさい、おばあ様……でも、近くの庭じゃすぐにお父様に見つかっちゃうんだも~ん……私が剣の才能無いから、剣の稽古が長く感じるの……」

 「そう思うのは、お前さんだけじゃないんだよ……私だってそうだったんだ」

 「え?」

 「私だけじゃなく、本葉だってそうだった。みんな、誰だって上手くいかないんだ、一歩づつの積み重ねが、才能が、あの大きな木のように立派になるんだよ。お前さんだって、早く剣術を磨き上げたいんだろ?」

 「お母様も……? 確かに、剣を習いたいって言ったのは私だけど……」

 「うむ、だから、自分の進むべき道は最後まで進まなきゃ意味ないんだよ、途中で諦めたら、今までの進んだ道が全部台無しになってしまうよ。だから、諦めちゃダメだよ、若葉」

 「……わかった、もう一回お父様の所へと戻ってくるね!」


 「その後、剣の稽古に戻って、剣を気に向かってもう一回剣を振りました。すると、初めて、木を切ることができて、お父様にもお師匠様にも、褒められました。その後も何回も剣を降り続て、ようやく、一人前の剣士になり、現在の『若葉』、皆が誇れる『天閃野 若葉』へと成長していったのです……ただ、おばあ様は5年前に他界してしまいました……」

 「若葉様がここに来たのは、そのおばあ様に会いに来たってこと?」

 「ええ、なぜなら、私のみでは現在の『天閃野 若葉』が、皆様の誇れる『若葉様』に到達出来なかったからです。お父様やお母様、弟に親戚の方々、そして、酢橘に近衛兵の方々、そして……おばあ様、……皆様の支えがあってからこそ、私は『天閃野 若葉』としていられるのです。そして、フューチャーファイターズの皆様の協力関係を結びたいと思い、今回の合流も兼ねて、ここへ導きました」

 「そうなんですね……でも、もうちょっと早く言ってほしかったです……」

 「こっそりと教えるタイミングが見つからなかったんです……ごめんなさい……」

 「皆の支え……」


 若葉の思い出を聞いて、何かもう一つ思い出すことがあるような気がしてきた……。この言葉……どっかで聞いたことがあるような……。


 「あっ!」


 ――実は、あの話には続きがあった、あの後、ここより少し離れた大樹の傍でライルと一緒に夕陽を見たんだった!


 「等々、一か月前過ぎたね……」

 「ああ」


 私は少し、曇った表情をしながら、ライルに質問をしたんだった。


 「イリル……何だか浮かない顔だぞ、あの戦いを恐れているのか?」

 「ううん……、それもあるけど……、ライルはそのハンマーを使いこなせているの……?」

 「ああ、俺はこいつを気に入っている」

 

 確か手に持っている武器は『時渡の武器(トキワタリのぶき)』の一つ『時渡の戦鎚(トキワタリのせんつい)』だった……時渡の武器は遥か昔に造られ、英雄のようなものじゃないと手に持てない武器だったはず……。

 ライルは目を輝かしく、柔らかい眼差しをしながら話した。


 「でも、こいつを使いこなせているのは、お前やセナ、皆のお陰であってからこそ、今の『大戦士』でいられるんだ。お前も『ウイルス大戦』に参加できるだけでも、十分みんなに貢献できている。だから、もう少し自信を持て、イリル」

 「ライル……そうだけど……やっぱり少し恐いよ……色々と……」


 「思い出した……」


 私は、思い出した事をみんなに話した。


 「なるほど……ライル様は、私と似たような言葉を……」

 

 笑は手のひらに胸を当てながら、若葉にお礼を言った。


 「また、イリルさんの記憶を取り戻したね! ありがとうございます! 若葉様!」

 「いえ、私は当然のことをしただけのことですから……それよりも早くお戻りいたしましょう、酢橘のことも、お父様のことも心配です」


 セナから、プルルルルっと音が鳴った。


 「あら? レイからの通信?」


 レイは慌てた様子で、私達に映像を見せながら、話していた。


 「緊急命令! 中央ニュートラル通りにて、大型ウイルスの出現予兆を確認! そこには、天閃野家や美菜さんの反応もあります! 今すぐ向かってください!」


 美菜たちに何かあったの……? 私は美菜に通信を繋げた……!


 「美菜?!」

 「イリルさん……? ごめんなさい……ウイルス達に気を取られている隙に先遣隊三人組に、侵入を許してしまいました!」

 「天閃野家は無事?」

 「はい、ですが、檜木様達は人質にされています……急いでください!」

 「わかった、今から行く」


 美菜との通信を終了した……このままだとまずい……! 


 「まずいわ……早くいきましょう!」

 「待ってください、私もお手伝いさせてください」

 「あなたは若葉様の身分でしょ? 大型のウイルスに攻撃されたらどうするの?」

 「そういう事態にも備えてきています。しかし、お父様も本当の酢橘も、私を支えてきた存在です!」


 若葉は再び兜を被りながら、片手剣を取り出した。


 「お願いします……もう少しだけ『星神門 酢橘』でいさせてください、私の最後のお願いです!」

 「あっ! 待って頂戴!」

 「追いかけよう……!」

 

 若葉は私たちよりも先に、中央ニュートラル通りへと戻っていった……。


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