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3020ストーリー~『第二の地球』と戦士の記憶を辿りながら~  作者: ユニィウルフ
〈第一章〉共鳴する過去の灯

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オープンカフェにて

 フューチャーファイターズの拠点内のロビー、ここでは、クエストカウンターと言う場所があった。基本的に緊急命令や、討伐作戦以外の依頼はここで受けるようになっている。そんな中、沢山の戦士達が立っている中、私とセナは笑と合流して、一緒に依頼を受けることになったのだ。


 「まさか、イリルさんと一緒に仕事ができるなんて、夢にも思わなかったよ~!」

 「笑……大げさなんだから、万が一、私達がトキワタリじゃなかったらどうするの? 例えば……宇宙人だったら?」

 「宇宙人でも嬉しいよ~!」

 「またまた……」


 すると、奥の方から走っている足音が見られていた……。


 「はぁ……はぁ……間に合った……か……?」


 私達の前にウルがこっちに来て、息を切らしながら確認した……。


 「あ、あら? ウル? あなたも仕事へ行くの? それにしては慌ててたけど……」

 「イリルにセナ……そして笑まで……恥を忍んで頼む」


 ウルは私達に、首を45度降ろした。


 「この依頼を俺にやらせて欲しい……」

 「えっ……なんで?」

 「元々、この依頼は俺が受けようかと思ってキープしてもらったんだ……理由は後で言う……譲ってくれ! 頼む!」


 ウルは手を合わせながら、私達にお願いしてきた……。でも、セナは目を細めたまま、ウルに問いかける。


 「いいえ……イリルが言いたいのはきっと、この依頼内容の事よ……あなた……本当に、これ出来るの……?」

 「……はぁ?」


 ……仕方なくウルも連れて、依頼を受ける事にした。

 そして、辿り着いた先は若い世代に人気のオープンカフェ『ペドロ・ニュートラル』だった。辺りは、色がパステルカラーの床になっており、白いテーブルや椅子が設置されている。そして、店の方は童話に出てきそうな小屋を連想させる外見だった。


 (くっ……不覚を取った……まさか、オープンカフェの依頼だったなんて……!)


 ウルは耳を下げながら、顔を合わせようともしなかった。笑はまだ、驚きを隠せない様子で、ウルに問いかける。


 「逢神さん……こう言う感じのあんまり好きじゃないイメージがあるんだけど……何で自分から受けようかと思ったの?」

 「後で言うって言ったはずだ……! 悪いが他の奴には言うなよ……」

 「言わないから、ウルは笑と一緒に接客をお願い。入り口に長座の列が並んできてる」


 笑とウルは、客人を対応しに入り口へと、私とセナは商品を提供するため、キッチンへと向かっていった。


 「いらっしゃいませ~!」


 ウルは、店の近くの席に向かっていった。その席は、女子大学生の二人が、世間話をしているようだった。


 「……ご注文は……?」

 「ブレンドコーヒーをふた……って……きゃあ!?」

 (びっくりした……な、なんだよ急に……!?)

 「ね、ねぇ……愛子、このオオカミさん素敵じゃない?」

 「本当だわ! かっこいい~!」

 「ねぇねぇ、写真撮らせてって言ってよ~」

 「え~? 有希がお願いしてよ~」

学生二人は、顔を赤くしながら、話し合っていた。ウルは大きく振りそうな尻尾を力尽くで抑えようとしながら、こう話した。


 「すまねぇが、俺は雇われた戦士だ。写真については、今は遠慮して欲しい」

 「そ……そうですか……残念……」

 「……」


 そういいながら、ウルは学生二人の注文を受けて、さっさと次の客の接客しに行った。……一応、店長に聞いてみたら、「ここのカフェはルール違反じゃなければ、撮影してもいい」って言ってたけど……。

 一方、笑の方は両手に配膳盆を持って、客に持って行った。向かったテーブルには、何だか暗い感じの男性二人組が座っていた。


 「はぁ……もう10回目なのに、推しが出てこね~……」


 笑は注文した飲み物を届けると、男性二人は目を丸くした。


 「お待たせしました~! Aquaブルーベリーソーダです!」

 「どうも~……ん?」

 「うおおおおお?! 君、『マルマンっ!』のヨーコリンにそっくりじゃん!」

 「さ……さっきのもう一回言って! そして、あの決め台詞も言って!」

 「えぇ……んじゃあ一回だけ……」


 笑は男性二人のリクエストに答えて、アイドル(?)の台詞を言いながら、提供した。


 「お待たせしました~! Aquaブルーベリーソーダだヨーン! ヨーコリンが、あなたのハートをよんよんっとしちゃうよ♪」

 「うおおおおお‼ 本物そっくりだぁぁぁぁ! んじゃ、俺を踏んでくださいっ!」

 「え……えっと、ごめんなさい……踏むのはちょっと……」

 「お願いします! ホントのホント! 推しが全然当たんなかったから、その悲しさを埋めたいんだぁぁぁぁ!! しかも、今日で最終回なんだぁぁぁぁ!」


 男性客が、土下座して笑に願いを下げる、すると、ウルがやってきて――


 「その辺にしておけ、ここはそう言う店じゃねぇんだが、これ以上をやると、セクハラで訴えられるぞ」

 「ひぃぃぃぃ! お、オオカミ……! ご、ごめん……つい、推しのヨーコリンそっくりで、こいつと一緒に舞い上がっちまって……」

 「好きな奴が出てきて嬉しい気持ちもわかんなくねぇが、程々にしとけよ? さぁ、こいつに謝れ」


 男性二人は一度立ち上がって、笑に向かって頭を下げた。


 「ごめんなさい……」

 「お、おじさん達、アイドルオタクだけど……悪い人じゃないからね!」

 「ちょっとビックリしちゃったけど……大丈夫だよ!」


 そういいながら、男性二人は席に付いて、飲み物をすすった。笑とウルは別の客人を対応しに行った。


 ――一方その頃……――

 オープンカフェの外れに、不審感がある男二人が話していた……。

 「ああ、確かに受け取りました……所で、あの者はどうなさいますか?」

 「あそこは危険だ……結構目立ち過ぎている……」

 男二人は、オープンカフェにいるウルを中心に偵察しにきた。それを横目に、ウルは気づいていた。

 (やっぱり来たか……)


 ようやく、オープンカフェの依頼を終わらせて、私とセナと笑は一緒に歩いて帰ったが、ウルは音速で先に帰っていった。

 そして、夜になった……あたりが真っ暗で、建物が輝きだしていた。私とセナは、拠点の屋上に、風に吹かれながら夜景を眺めていった。


 「綺麗ね~」

 「うん……あれ……あそこよく見たら全然出来てないところがある……」


 明るいビルの後ろ側に、山のような場所があった……すると、背後から、ゆっくりと足音が聞こえてきた。


 「……ニュートラル区は、メイキョウ地方の中で一番新しい場所だ……あの辺りは、原生生物やウイルスが沢山いるから、街の開発工事が遅れちまってる」

 「う、ウル? あなた何でここに?!」

 「元々、この辺りは俺の庭みてぇなもんだったが、お前達のような先客が出てくることは全然ねぇ……だから、何なんだって話だが」


 私は、何だか引っかかるような事を全てウルに問いをかけた。


 「ウル……そう言えば……あんた、あの時、依頼を譲ってくれって頼んで来たよね……今回の依頼とあんたの事と何か関係があるの?」

 「イリル……お前は鋭いな……実は、カフェの外に敵がいた、そいつらは以前、マルチ商法で捕まったことがあってな……今は、俺を殺そうと企てているらしいんだ」


 マルチ商法……確か、会員が新規会員を誘って、その新規会員が、別の会員を勧誘する連鎖によって、階級組織を形成・拡大する違法の販売形態なはず……。

 会員は「儲かる」や「成功する」と甘い言葉で洗脳してくるため、一度入ったら抜け出せず、その上で、違法な商品販売や取引を行っている。


 「なるほど……何でわざわざ、表に……?」

 「ああ、奴らは所詮、ただの捨て駒だ、無差別に人を騙し、家族や友人との縁を切らせ、ただの虚しい金儲けしかならない犬だ、だから派手な場所で場所を把握していた」


 だから、あの時、依頼を譲ってくれとお願いしてたんだ……。


 「何せ、奴らの指示役も、その指示役の組織も、俺がとっちめたからな。殺意を向けられても仕方ねえ。少し前、美菜はそいつらからの勧誘を断り切れなくて、変なもんを購入しかけたことがあったんだ……幸い、俺と李徴さんとで、美菜をあいつらから引き離した上に、証拠も集めてくれたんだ」


 マルチ商法に掛かった人は多額の借金を抱えることになることが多い……。それに、「師匠」と名乗る者の下で「儲かるノウハウを学べる」や「これ逃したら、これからの将来で後悔するよ」などの言葉で洗脳する形で弟子になることが多いんだとか……。

 ウルの話を聞いて、セナは顔をこわばりながら――


 「ええ……美菜が……? 美菜の弱いところをつかむなんて、サイテーね!」

 「ああ、俺は命を弄ぶ野郎は何よりも許さねぇんだ。あの犬どもも指示役に騙され、まだ信じている様子なんだ、明日、ハッキリと目を覚まさせねぇとな」


 ウルは拳を握って、話していた。


 「そうだね、それじゃあ、何時くらいにどこへ行けばいいの?」

 「これ以上、お前達に迷惑かけるわけにはいかねぇ、俺があいつらをおびき出してさっさと決着を着ける」

 「ちょっと! いくら対峙した事があるからって、このままじゃ無謀よ! 相手はマルチ商法で集められた組織の一員なのよ! あなたに策があるからって、万が一の事に――」

 「その時は、メッセージで知らせる、悪りぃが、俺一人でとっちめさせてくれ、じゃあな」

 「行っちゃった……なんで人と組むの嫌がるんだろう……」


 ウルがここから後にしていく様子を見ながら、私達は疑問に思った。何で、命を大事にしているのに、自分は意地でも一人になりたいのかを……そう思いながら、医療室へと戻っていった……。



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