答えて――
私達が、依頼でジオラマを掃除している最中に、横槍が入るかのように、ガラの悪い男が三人組、私達に押しかけてきた。彼らは美菜を狙っている様子だった、私とセナと笑で、あの男達を対応することにした。
「ん? 誰だお前は?」
「私はこの人の依頼を受けてやって来たわ。聞いた感じ、美菜に、何か用があるみたいだけど、何でかしら?」
「フン、誤解があるみたいだな! 俺たちはあの小娘に賠償金を請求しに来ただけだ!」
「ば、賠償金!? 美菜に何かしたの?」
セナは目を丸くして、話していた。リーダー格の男は頭をかきながら話していた。
「ちょっと前に彼女と初デートに、シックスウォールビルスへ行ったんだ――」
「彼女とイチオシデートスポットに向かおうとした、その時、強そうな原生生物の群れがあのマジックユーザーとなんかしてたんだ!」
「怖~い! ねぇ~他のスポットはない?」
「大丈夫大丈夫! あんまり近くなきゃ巻き込まれることないって!」
「でも……」
「水よ……私にお力を!」
「ぎゅぃぃぃ!」
「マジックユーザーと戦ってた原生生物が、俺の方へと飛んできたんだ! 俺はそいつを払おうと必死で、腕を振り回したけど……」
男がミチタガメを振り払おうとした。すると、ミチタガメは彼女の方へと飛んで行って、服が破ける音がした。
「ああぁぁぁぁ!! 今日降ろしたばっかりなのに! わざわざ、そこまでして、凶暴な原生生物を見せるなんてサイテー!」
「いや……違うんだっ! 俺は原生生物を見せたかったんじゃなくて……いってぇ!」
「もうあんたにはついていけない! さよなら!」
「お陰で彼女に振られ、その上で、俺が女を振り回す奴だとキャンパス中へと広まってしまった! あいつのせいで人生どん底だ!」
……あの男は、足を強く踏み鳴らしながら話した。……でも、あいつの言っていることは、ただの逆恨みだった……。笑は美菜を庇うように、こう話す。
「聞いた感じ、美菜さんは戦ってただけでしょう! それに、彼女さんも怖がってたのに、わざわざ近づけさせるなんてサイテー!」
「うるせぇ! さっさとあの小娘を出せ!」
「あんた達が一旦ここから出たら、美菜に話してくる」
「チッ! またかよ! 5分だけなら待ってやる! お前ら、行くぞ!」
あの男達は、ジオラマを後にした……。もし本当に、誘拐する気なら、このままだと、美菜が危ない……! 私達は急いで美菜の所へと向かった。
美菜に先ほどの事を全て話した……。これを聞いた後、美菜は両手を前に握りしめて、悩みがありそうな目付きでこう話した。
「そう……だったんですか……やっぱり、あの人に賠償金を払った方が良かったのでしょうか……」
「払わなくていい、美菜は何も悪くない」
「しかし……」
「美菜、さっきの話の続きなんだけど、なんだか、美菜とフォリーンは何だか似てるような気がする……」
美菜は、「どういうこと?」と言わんばかりに、疑問が浮かんでいた。笑は、何かに気づいたような表情が浮かんだ……。
「えっ……どの辺が……?」
「『優しすぎる』て所だよ」
「確かに、今まで美菜さんが反論したってことは見たことがない……」
「美菜、その優しさが返って損になる事があるのよ」
セナは、少し暗い表情をしながら話した。
「ライルだってそうだったわ……」
セナはライルとの思い出を話した……。
「ライル、お前、最近イリルに甘すぎるぞ。イリルのみならず、リュコスにも単独行動を許可したって、ジーナから聞いたぞ」
「すまない……でも、どうしてもあいつが行きたいって聞かなかったんだ……でも、なるべく危険を感じたらすぐに戻るように、伝えてある」
「そう言う問題じゃない。お前は他人に甘すぎるんだ。その甘さが返って損になることだってあるんだ! リュコスの性格だってわかりきったはずだ。あいつは目的の為ならなんだってする、危険があっても、噓をついてでも行きたがるはずだ」
かつての司令室にて、ライルと司令長官が二人で話している所を横目に、セナは作業をしながら、耳を傾けていたと言う……。
「そ、そうだったんですね……」
――一方その頃……。
駆は、ニュートラルシネマに到着をして、男達の影を見つけていった。駆は一般人のふりをしながら、映画館の端へと歩いていき、ウルに通信をつなげた。
「君がさっき忠告したことって、美菜は優しすぎるから、近づけさせないようにするってこと?」
「あ? そうだが、何で教えてもねぇのにわかったんだ?」
「えっと……実は、ちょっと思い出した事があって……」
駆はウルに、これまでの経緯で気づいた事を挙げていた……。
――「……もしここがあたしじゃなく美菜だったらあんたの気持ちを優先してたかもしんねーけど」
――「は、はい……わかってます……え、えっと、これは……絶対に渡せ……ません……」
「なるほどな……それで、あのきたねぇ男どもは見つかったか?」
「あぁ、見つけたよ! でも、ニュートラルシネマの中に入っちゃった……映画でも観るのかな……? 今話題の『水神フォリーン』、オレも観たいと思ってたんだ!」
「今は捕獲に集中しろ……? ま、まさか!」
ウルは、慌ただしく、駆にこう言った。
「おい! 今すぐ映画館に誰かいるのか確認しろ!」
「う、うん、わかった……あっ! イリルさんとセナさん、笑と美菜もいる!」
「イリル達もいるのか……三人が上手く、時間稼ぎしてくれればいいのだが……おい、イリルに連絡しろ! 俺は今すぐそっちに行く!」
「わかった!」
駆はウルの通信を切って、すぐさまイリルとの通信をつなげた。
――その頃……。
「あら? 駆から通信がきたわ」
「イリルさん? 聞こえる? さっきガラの悪い男たちが入ってこなかった?」
「入ってきた。何だか美菜に逆恨みをしていたようだったよ。今、入り口で待っている」
「それはかなりマズい! なるべく美菜を近づけさせないようにして! オレは男たちを何とか――」
駆は慌ただしくなるべく追い返すように話したが、美菜は落ち着いた様子で――
「待ってください……なるべく武力は……控えてください……」
「え? み、美菜? どうしたの……?」
「実は、武力を使って解決しようとすると、フューチャーファイターズの名に悪い影響を及ぼす可能性があります。私はあの時、戦いに必死で人の注意を払わなかったので、あの人の彼女さんの服が……恐らく本当は団体の名誉堕落が狙いかもしれませんので……」
駆は、「確かに……」といいながら、美菜の作戦を聞いた。
「実は、本当に水を綺麗にする大きなマジックの準備が整いました。ご三方が再び戻って来た時に唱えるので、私にお任せを! そして、イリルさん、先ほど言いそびれてた印象に残った言葉を教える時が来ましたので、それもかねてお届けします」
「あっ、確かにもうすぐまた入ってくる! 私は、他のお客さんを対応してくる!」
「了解! オレはウルとスタンバイしてくるよ!」
「わかった……美菜、あんたを信じるよ」
「皆さん……ありがとうございます!」
笑は他の客人を対応に、私とセナは入り口の方へとスタッフと共に美菜を見守る事にした。
そして、再び、男達がジオラマに入って来て、美菜に向かって、荒っぽく話した。
「やっとこの時がきたぞ……しかも、他の奴らを外に出してお前一人で、立ち向かうとはな……らしくないぜ?」
「……」
「さぁ……さっさと賠償金を払えって言え! 嫌ならフューチャーファイターズに悪い噂を流すか、お前をかっさらって土下座で謝罪させる生放送してやるぞ! さぁ、どうするかさっさと決めろ!」
「水よー私に答えて」
「おい、何言ってんだこいつ……ってうわ! 噴水か!」
美菜は、片手に長杖を持ちながら、マジックを唱えた! そして、水が噴水のように飛び上がるのを背景に、美菜は少しずつ歩いて行く。
「『水は生命を支え、生命の幸となす、時に生命を阻み、生命の災いとなす』私は、これまで水と共に歩んで来た、か弱き民を支えるために歩んで来た。そう、例えいずれ、奇跡と言われなくとも、恵みと思われなくとも、恩を深く思っている限り、水は消えない」
「……いかがでしたでしょうか……」
美菜は、マジックを終えると、外から拍手の音がたくさん鳴り響いてきた。
「素晴らしかったよ、美菜」
「うわぁぁぁん! 最高です、美菜様! まるで本物のフォリーン様のような素晴らしいマジックでした!」
スタッフは涙目に、声を震えながら話していった。他の客人の拍手を鳴らしていたにも関わらず、リーダー格の男は、まだ怒っている様子だった。
「こいつのマジックが最高だと? こいつは俺の人生をどん底に突き落としたやつだ! 褒めるなら、俺の方にしろよ!」
「あんた、まだそれを言うの? あんたのやってることはただの逆恨みよ!」
次々とリーダー格の男への冷たい目線と、クレーム殺到が絶えなかった。等々リーダー格の男は耐えられなくなり、出直そうとしていた。
「やい、ここはずらかるぞ!」
「はぁ……綺麗だったな……もう一回観たいな……」
「オレも……」
「チッ! 役立たずどもめ! お前らはもういらん! 俺だけでも逃げる!」
リーダー格の男は連れを置き去りにして、映画館の外へと逃げようとしていた。しかし、待ち伏せていた駆とウルに捕獲されてしまった。
「逃げられると思ったら大間違いだよ! 煙幕まで持ちこんで……」
「ゲッ! 待ち伏せか! でも、戦士には逮捕出来る権利なんてないだろ!」
「まさか、俺達だけだって思ってんのか? 哀れな奴め」
「貴方を威力業務妨害と誘拐未遂の疑いで逮捕する。話や愚痴は署で聞くわ」
「クソッ! 警察まで呼んだのか! きたねぇことしやがって!」
「お前にだけは言われたくねぇ、俺達はこの世の平和を守るのが義務だからな」
「そろそろ、こいつを連行するわ、フューチャーファイターズさん、ご協力に感謝する」
警察官達はリーダー格の男とその連れを連行して、まだ、自分は悪くないと抵抗されながらもパトカーへと向かった。
――そして、翌日、映画館は大勢の人がにぎわっていた……。
「み、皆様、昨日は、ありがとうございました! 来場者はいつもと倍以上の記録を更新しており、ジオラマの方も大好評です! その上で、マナー違反やゴミの散乱も前よりもかなり減っており、我々も安心して、再現ジオラマを提供できます!」
「良かった~! これも美菜さんのマジックのお陰だよ!」
「そうですかね……私は当然のことをしたまでですが……」
「こういう時は、もっと喜んで良いわよ! 美菜!」
「セナに同意。今回は美菜のお手柄でうまくいったから、自分を褒めるときは褒めても大丈夫だよ」
「た、確かにそうですよね……あ、ありがとうございます」
美菜は微笑みながらもこう話した。
「きっと、お母さんもお父さんもこんな感じで、人を説得したのでしょうか……」
「美菜? 今なんて?」
「あっ……いいえ、大丈夫です……」
美菜は私達の方へと戻り、一緒にジオラマへと向かった。
人は時には優しく、時には厳しくすることも大事だ。優しすぎたら、人に利用されやすくなるし、厳しい過ぎても、人に負荷を与えやすくなるし、そのバランスが大事だね。




