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3020ストーリー~『第二の地球』と戦士の記憶を辿りながら~  作者: ユニィウルフ
〈第一章〉共鳴する過去の灯

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水を綺麗にするマジック

 私とセナは、美菜と笑を連れて、ニュートラルシネマへと向かって行った。ニュートラル区は、映画館も激戦区であり、同じ映画でも内装は様々で、どの映画館かでどの映画を観るのか、こだわる人も多いらしい。

 映画館の中に案内されて、撮影ブースと言う場所に案内されて、ゴボゴボと水が流れる音と、滝が落ちる音が同時に耳に響いた。

 笑は目を輝かせながら、話した。


 「すご~い! 映画版の『水の女神フォリーン』再現フォトスポットだ~!」

 「本当に、大丈夫何ですか……?」


 映画館のスタッフは、はきはきとした表情で、私達に話して、奥の方へと手を向けた。


 「はい、今回フューチャーファイターズさんの皆様は、この、期間限定フォトスポット『水の女神フォリーン』の名シーンの再現ジオラマのお掃除を、お手伝いしてもらおうかと、ダメ元で頼んでみました!」


 なるほど……現在のフューチャーファイターズは有名な場所の手伝いもするのか……。


 「掃除……? 一件綺麗そうだけど……あっ……」


 噴水の下段の所に、プラスチックのカップが流れていた……。


 「あっ……あっちには紙袋が……その隣に使ったティッシュがある……」

 「理由は、ご覧の通り……このようにゴミがジオラマに散乱されておりまして……ファンの方に楽しんでもらえて、我々も嬉しく思う一方で、マナーを守らないお客様も増えていくばかりで、困り果ててしまっているんです……」

 「それはひどいわね! 水は私達に欠かせないのに、当然にあるかのように軽々しく汚していったり、一体何考えてるでしょうね!」

 「そうですよねっ! ましてや、噴水に飲みかけの飲料をこっそりと流した人までいるんですよ! 例えると「深い湖に仔猫ちゃんを平気で入れさせている」と同じです! あなた達だって、水が苦手な猫ちゃんに、遊び感覚でプールに入れたりしませんよね?」

 「そうよねっ! そもそも、飼い猫は外に出したりはしないわよ! 外に出たがる時は、思いっきり、家で遊んであげればいい事よ!」

 スタッフとセナが急に猫に話題が移り変わり、愚痴が沢山出てきた……。私は、セナに一言声を掛けた。


 「え、えっと……セナ……? そろそろ始めない……?」


 二人を落ち着かせた後、美菜は長杖を片手に持って、こう話した。


 「あ、あの……水を綺麗にするマジックの準備が出来たので、そろそろ使ってもよろしいでしょうか……」

 そういいながら、美菜は汚れている水を綺麗にするために、奥へと向かった。その後、笑は袋を持って来て、やる気満々に満ちた様子で話した。

 「んじゃあ、仕事を始めよう! マナーを守らない人に対しては掃除した後に対処方法をみんなで考えよう!」

 「みなさん、どうかよろしくお願いします!」

 スタッフは私達に頭を降ろして、入口に向かおうとしていた。

 「それでは、早速、使わせていただきます……ってあら?」


 どうやら、このスタジオに何かがいるようだ! ウイルスかと思い、私達は戦闘態勢に入ろうとしていたが……――


 「うわぁぁぁぁぁ!! 虫っ! 虫嫌いーーー!」


 スタッフが慌てて、腰を抜かしてしまった。


 「えっ? 虫?」

 「あっ! あれは『ミチタガメ』だ! 人を襲う原生生物だよ! 私に任せて!」


 原生生物……? ウイルスとは全く別の種族のようだ……。


 「はぁっ!」

 「ぎゅぃぃぃ!」


 ミチタガメの群れは、笑のジェットブーツで、宙を舞って言って消えていった。笑曰く、凶暴な性格らしく、頑丈な顎や鋭い爪で攻撃するらしい……。


 「こ、怖かった……ど、どうしてジオラマに虫型の原生生物さんが……?」

 「多分だけど……落ちてたビスケットの袋に反応して、こっそりと入ってきたと思うの……中を確認したんだけど、食べ残しが……」

 「あっ……本当だ……」


 笑はビスケットの袋を、少し心残りがあるかのように、ゴミ箱へ入れた。食べ残しまであるなんて……何だかこの時代は、マナーに関心がない人が多いのかなって私は思った。

 それはともかくとして、掃除を始めてからしばらくすると、美菜の方は順調にやっているかな……? 美菜は長杖を両手に持って、水を綺麗にするマジックを唱えていた。するとどんどん、汚れの原因となるものをバケツに積まれこんでいった。


 「これが、水を綺麗にするマジックか……」

 「……イリルさん……?」

 「あっ……ごめん……邪魔しちゃったね……」

 「いえ、こちらは、半分終わりました。そちらの方は大丈夫でしょうか……」

 「だいぶ片付いた」


 美菜はこの作品に対してあまり話さなかったけど、なんでだろう……私は、少し聞いてみる事にした。


 「そう言えば、美菜ってこの作品って知らない……?」

 「いいえ……『水の女神フォリーン』は私の好きな神話です。子供の頃から、ずっとこの物語を大切にしてました……。時は世紀末の砂漠になり果てた王国で、貧しい家族がいました。ある日、息子さんが突然、急に倒れてしまいました。家族は長い間、水を飲んできていないので、水をタダで手に入れようとも、うまくいきません。そこで、天界から、家族を見つけてきたのは水の女神フォリーンです。フォリーンは奇跡を起こして、雨を降らしました。すると、王国の付近に大きなオアシスが誕生したのではありませんか。住民達は大喜び、息子さんも水を一杯飲んで、翌日にすっかり元気を取り戻しました」

 「へぇ……いい話だね……」

 「はい……ただ、中盤になるほど、不可解なことが沢山起こります……」

 「不可解なこと……?」

 「この後、住民達の生活がどんどん豊かになります。しかし、盗難やカツアゲなどと言う、水の奪い合いが発達するようになって、王様も頭を抱える事態になってしまいます……。その後、大雨による大洪水で、王国ごと襲われて滅んでしまいました……」

 「……」

 「天界でも、フォリーンは王国を滅ぼすほどの大洪水を起こしたと噂されてしまいます……最終的に、彼女が冤罪にも関わらず……死刑を言い渡されます……そして、そのまま刑が実行されました……」

 「そんな……フォリーンは悪くないのに……」


 私はフォリーンの結末を聞いて、何だか胸が苦しくなってきた……。


 「悲しい結末なんだね……」

 「はい……現代人にとって、結構重い話かもせれません……しかし、私は印象に残った台詞があります。それは――」


 美菜は私に、印象に残った台詞を言おうとしていた。しかし、突然の大声でかき消されてしまった。入口の方が、何だか騒がしい……スタッフに何があったんだろう……。


 「も、申し訳ございません……只今、こちらのスポットは清掃中なので、もうしばらくお待ちください」

 スタッフの前に、やけにガラの悪い男が三人組が立っていた。ジオラマが目的とは思えないけど……何が狙いなんだろう……。

 「うるせぇ! こっちは急いでんだ! 何分待たせれば気が済むんだ!」


 ガラの悪い、リーダー格の男が、スタッフを拳で脅迫して来た。


 「いやぁ! 暴力反対です!」

 「フン、時間取らせんなよ! 早速、あのマジックユーザーをさっさとさらって行くぞ!」

 マ……マジックユーザー……? まさか、美菜が狙いなの……?

 「美菜……隠れてて……ならず者は私とセナが相手する」

 「で、でも……」

 「大丈夫……なるべく武力を使わないようにする」

 そういいながら、私とセナと笑で、入口の方へと向かっていった。


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