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「お父さん――」

 メイキョウ地方、ニュートラルシティ、雨音が強い、寮の部屋の中で、ある記憶を思い出しました。

 

 「お父さん、どこいくの?」

 「どこにも行きませんよ。ただ、街の平和を守りに行くだけです」

 「いや……行かないで……もし帰って来れなかったどうするの? お母さんのように……」

 「小鳥になって、あなたの事を見守るとしましょう」

 「じゃあ……とりさんが嫌いなな雨の日は?」


 父は少し考えた後に、こう話しました。


 「雨になって、あなたに力を捧げましょう」


 父は、私の頭に、手を乗せた後にこう口にしました。


 「これだけは覚えといてください。どんな形でも、どんな事であろうとも、あなたは、思い続ける限り、お父さんもお母さんも一生あなたと一緒です」

 「お父さん……」


 ――この時の私は、父との最後の会話となるは、全く思っていませんでした。病気で亡くした母の代わりに、たった父の手一つで、私を育て上げ、大賢者とも異名を持つ程の、大天才マジックユーザーと呼ばれていました。私は父親を心の底から、尊敬をしています……。


 あの後、父親は帰ってくることはなく、他の戦士が、父が持っていた大きな杖を持っているだけでした……。あの言葉が口に流れるまでは希望は保たれていました……。


 「落ち着いて聞いて……先生こと、君の父さんは超大型のウイルスとの戦いで犠牲になってしまったんだ……。先生は、君にこう伝えて置いてって、杖と一緒に伝言を残していたんだ……。「どんな形でも、どんな事であろうとも、あなたは思い続ける限り、お父さんもお母さんも一生あなたと一緒です」って……」


 「……」


 私はこればかりは、受け入れられませんでした……。


 「ぐすっ……ぐすっ……何でなの……お父さん……」


 涙声で叫んだまま、机に伏せたまま、一日中離れませんでした……。

 この後、私はのちに、寮母となる『魔法使いギルド』のサブリーダーに引き取られ、小学校に入学する頃には、ある女の子と出会いました。はい、その子はネリネと呼ばれる女の子です。

 そして、目を開けると、私はマジックに関する資料が手元にありました。はい、今年に入ってから、『フューチャーファイターズ』と呼ばれる団体に入団しました。かつて、父が入団していたこの団体ならきっと、私は……父のような、万能なマジックユーザーになるのを、きっと支えてくれるかもしれません……。


 「お父さん……お母さん……どんな姿になっていても、私の事を見守ってください……」


 言葉にしながら、両親に挨拶を伝えました。今日も仕事を初めてましょうと、私は自分に言い聞かせました。

 外に出ようかとした所、何だか少し激しい音が、「誰かいる?」や、私とネリネを呼ぶ声がドアに響いてました。



 「はい、今から向かいます」

 「ヤッホー! 美菜、マジックの研究?」


 このお方は、矢ノ宮 弓さん(やのみや ゆみ)先輩の戦士で、弓矢を扱うことが得意な人です。明るくて、他の人の気配り上手なお方です。


 「はい、只今、『パワード』と『プロテク』の詳しい仕組みを研究していました。前者は闘争心を向上させて攻撃を与えやすく、後者は身体を丈夫にさせて、耐えやすくする支援マジックです」

 「おお、なんかすごそうじゃん! 美菜は、他に支援マジックを覚えてるの?」

 「先ほどの二つの他に、吸引マジックの『ウィンデール』と、回復マジックの『キュアール』を使うことが出来ます。しかし、今使っているパワードとプロテクの効果時間が平均より0・0012秒位短かった気がするので……こうして研究していたって事になりますね。ところで、何かご要件をお話ください?」


 私が、要件を伺いした後、矢ノ宮先輩は、急に顔色を暗くしました……。


 「あ……そうだ……最近、笑が元気ないんだよ……普段、ご飯を3杯おかわりするのに1杯しか食べなかったり、話しかけても返事がなかったりするんだよね~……どうしたのか聞いても、「私はいつも通りだよ」って言うばかりなんだ……美菜、なんか心当たりある?」

 「……それは恐らく……」


 私は矢ノ宮先輩にニュートラル区中央公園での一件を伝えました……。


 「そっか……それは災難だったね……」

 「笑ちゃんは、元々孤児院から過ごしていたので、きっと、昔のことを思い出してしまったのでしょうね……」


 確か、笑ちゃんの過去も、私と似たような経験をしたはずです……。


 「大切な場所や、大切な人をウイルスによって滅ぼされ、悲しい人生を歩んで来たと聞いております……それでもなお、彼女は前を向いて歩いてきて、戦士という身分でここへたどり着きました。これが、何だか私と共通している所があるかもしれません……」


 矢ノ宮先輩は、手を腰に当てながら、私にこう言いました。


 「なるほどね……それなら、笑を元気付けるのはあんたに託すよ! 笑は今は、ネリネと休憩スペースでなんか話している最中なんだ。あいつ、自慢話ばっかりする所があるじゃん? だから、ネリネだけじゃ不安だったんだよね~……」

 「そ……それで、私にご相談を……?」 

 「まさか~! 可愛い後輩ちゃん達を見捨てるわけにはいかないでしょ! お礼に、あんたの好きな、あそこのパンケーキご馳走してあげるね! ちなみにアタシ、何度かバイトや依頼で行ったことあっから!」

 「わ、わかりました……! とりあえず、笑ちゃんとネリネを探しに行きます」


 矢ノ宮先輩は、部屋を後にした後、私は休憩スペースへ向かう準備をしました。

 休憩スペースの入口の扉を通った後、テーブルに向かい合っていた、ネリネと笑ちゃんが座っている所を見えました。


 「え、えっと……この前、んよりぴのくじやってたんだよ~! アタシさぁ、E賞だったんだけど、シールがめっちゃ可愛くてさぁ~!」

 「う、うん……私もくじ引いたんだ……私はF賞だったけど、その後に引いた、駆さんがA賞引いたんだよね~駆さんってくじ運いいなって……」

 (この話はまずかったかな……てか、かーくんばっかりずるい! アタシも本当はA賞のんよりぴスタンドライト狙いだったのに~!)

 「ん、んじゃあさ……この前のプラス20の新曲聞いたんだけど、すごい心に残っててさぁ! 特にRuiのシーンがマジで痺れたんだよね~!」


 「うん、かっこよかったよね……私も聴いたよ~! だけど、他の人にも聞いてほしくて、逢神さんに聴かせたんだけど「この曲、なんか裏がありそうだな」って好きじゃなかったみたいだけど……」

 (この話もダメかぁ……てか、アイドル系を聴かないウル先輩になんで聴かせたのか分からないけど、、先輩もいくらなんでも関心がなさすぎ!! えっと……ビブラート……かどうか分からないけど、別の表現あるだろ!)

 「え、えっと……お、美味しいミート10円パンの店見つけたんだけどさぁ~」

 「えっ⁈」

 (おっ! これは、上手く行くかもしれない!)


 ……どうやら会話中の様子でした……。私は、声かけようとしていた所、ネリネと目が合って、私を呼び出すかのように、手を振っていました。


 「あ、お~い! 美菜! ちょっと座ってあんたからもエミを元気付けてやってくれ~」


 えっ……まだ、タイミングがまだのような気がしますが……私もネリネの隣の席に腰を下ろしました。


 「え……笑ちゃん……えっと……」


 私は笑ちゃんに、部屋から取り出して来たクッキーを袋のまま渡して、過去の経歴を話しました。すると、笑ちゃんは目をそらしたまま――


 「み……美菜さんも……そんな経験していたんだ……大変……だったよね……」

 「はい、最初は受け入れたくありませんでした……それでも私は足を止めずに、マジックの研究を続けて、ここまでたどり着きました。お父さんを追いかけて続け、間もなく18年経ちます。私は今でも、両親の事を、まだはっきりと覚えています……」

 「美菜さん……」

 「だから、笑ちゃんも、身近な人の事を思い続けている限り、どんな形になっても、笑ちゃんの事を見守っているはずです。だから、今度……一緒に墓参りに行きませんか……?」

 「……うん……私、また昔の事を思い出していた……でも、美菜さんの話を聞いて、少し楽になったよ……孤児院で優しくしてくれた、先生の事も、友達の事も、そして、戦士になった時に仲良くなったシュン君の事も、みんな見守ってるんだって思うようになったの……だから、次は私が、みんなを守る番だね! ありがとう……美菜さん! 予定を空けて、案内するね!」

 「元気になって、もらえて良かったです」


 笑ちゃんは、笑顔を取り戻した様子で、私に感謝を述べました。すると、その横目にネリネは何だか、納得できない表情で――


 「美菜ばっかり褒められてずる~い! エぇぇぇミぃぃぃ~アタシもトークで元気づけたんだからさぁ……アタシにもお礼を――」


 「ネリネさん、ミート10円パンのお店、教えてくれてありがとう! 今度、イリルさんとセナさんと一緒に行ってくるね!」

 「アタシはそこだけなのか~?!」


 そんな中で、何やら入口方面から、足音が聞こえてきました。


 「笑……元気が戻って良かったね……」

 「うん、そうね……それに、美菜も辛いことを体験したのね……」


 トキワタリのイリルさんとセナさんが、休憩スペースへとやって来ました。イリルさんも、笑ちゃんに用があるのでしょうか……と少し思いましたが、私の方へと目を合わせました。


 「美菜、ちょっといいかしら?」

 「はい、何でしょうか」

 「実は、ニュートラルシネマのオーナーが、「誰か、水を綺麗にできる者はいないか」って、私達に依頼してきたの。そこで、李徴に聞いてみたんだけど「美菜なら水の扱いに慣れているから、頼んでみるといい」って言われて、あなたを尋ねてみたわ」

 「私に……ですか……? はい……!」


 水の扱いは確かに慣れていますが、依頼ってなると初めてのことです。一体どんな感じの依頼になるのでしょうか……私はイリルさんとセナさんの後へついていきました。


 ――一方その頃……。

 「うぅ……ん、逃げられちゃった……」

 「全く……逃げ足の速い上、きったねぇ野郎どもだ……対ファイター用に煙幕を持ちやがって……」


 東ニュートラル大通りで、駆とウルが何やら不審な人物を3人見つけて、声を掛けた。しかし、声を掛けた所、煙幕を二人に投げつけられ、3人共に姿を消して行ってしまった。


 「どうする? ここは二手に別れた方がいいよね? オレかウル、どっちかがさっきの奴らを見つけたら、コッソリと連絡を取り合おうぜ」

 「おうよ、ああ、くれぐれも美菜に近づけさせるなよ。それじゃあ、行動開始だ! 俺はこの辺りを探してくる」

 「了解! オレはニュートラルシネマの方へ行ってくる!」


 駆とウルはそれぞれダッシュで違う目的地へと向かった。その最中、駆は疑問点を浮かんでいた。


 (そう言えば、何であいつらに美菜を近づかせちゃダメなんだろう……あ、そう言えば、あの時……)



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