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駆の秘密

 ニュートラルシティの電気屋から、少し離れて、人気が少ない場所へと歩いて行った、私達だけど、駆は『ぞくせいたい』の件について何らかの縁があるようで、表情が曇っていた。そして、駆は『ぞくせいたい』について今口を開こうとしている。


 「あの時、イリルさんがオレのこと庇ってくれたこと、感謝しているんだけどさぁ……実は、あの子たちが言ってた『属性体』の件、本当だったんだ……」

 「えっ……!?」

 「うん……属性体、本名は『属性術依存体質』って言うのは生まれつきにTypeの力が身体に宿っている体なんだ……一見、すごそうだと思っても、コントロールが効かずに勝手に反応しちゃって、相手を傷つけたり、悪気がなくても物を壊したりしちゃったり危険だったりするんだ……」


 話によると、『属性術(ぞくせいじゅつ)依存体質(いぞんたいしつ)』は一歩間違えれば、大惨事に起こりえない身体障害の亜種のようらしい……特別な支援は不要なものの、Typeの力が誤作動するリスクもある為、なるべく症状を抑える薬や、Typeの力をコントロールする訓練をする必要があるそうだ……。駆は左手の方を見ながら、追加で話してくれた。


 「今は大丈夫なんだけど、たまに症状が現れるんだ……研修の時も練習のし過ぎで体が燃えそうになっちゃったんだよね……。その時は美菜のおかげで大惨事にはならなかったけど……」

 「だから、そのことを隠していたのね……」 

 「いや、意地でも隠していきたい理由はそれじゃないんだ……昔の事になるんだけど、オレ、メイキョウ地方の田舎町、グラス市出身なんだ……」


 グラス市……メイキョウ地方の中でも田舎町が多い場所で、自然豊かな場所って、本に書いてあったな……。


 「小学生だった頃……グラス市の公園で、『グラス市の暴れん坊』と言う奴がいてさぁ、そいつは仲間と一緒に、自分達の縄張りを広げて行っていた、近所で迷惑な小学生だったんだ……。ある日、グラス市の公園で遊びに行った時、友達が暴れん坊にいじめられている所を見つけて、放っておけなかったから止めに入ったんだ……」

 「なるほど……その後、どうなったの……?」


 セナが駆に少しづつ寄り添って言った。


 「その後、暴れん坊とやりあったんだ、その時に、手から炎が出て、すぐさまに爆弾かのように爆発しちゃったんだ……! 何が起こったのか分からないオレは、すぐ腰を抜かしちゃって……目の前には、倒れ込んだ暴れん坊とその仲間が……怯えて、逃げて行った友達が、黒焦げになっちゃった花壇や芝生……オレは、どうしようって繰り返して言うばかりで……この後は、友達が母さん達を呼んで、オレを病院に連れていってくれたんだ……」

 「それで……『属性体』が判明したの……?」

 「うん……この後も、オレが放火魔や殺人鬼だとか噂されちゃってね……本当は、ファイターじゃなくて、牢屋にいた方が良かったのかなって今でも思うんだ……」


 駆は両手でポケットをぎゅっと握りしめながら、過去の事を話した。でも、セナは駆に、微笑みを見せながらこう話した。


 「あのね、駆……そんなに抱え込んじゃダメよ、確かにその時はショックだったかもしれないけど、ただ、友達を助けたかっただけでしょ? その上で勝手にTypeの力が発動しちゃったんでしょ? 全部が全部って訳じゃないけれど、その間違いは悪じゃないんのよ。あなたは、それでも乗り越えて、前を向いて、誰とでも明るく接しようとしている。それだけでも立派なことなのよ」

 「セ……セナさん……」

 「それに、駆は、私やイリル、笑や美菜、そして、ウルもいるから、もっと頼って頂戴。過去に囚われてばかりじゃ、前へ進めないわよ」

 「セナ……」

 「ありがとう……セナさん……おかげで楽になった気がするよ!」


 駆は元気を取り戻して、拳を上に上げた。


 「よーーーっし! 立派な戦士を目指してがんばるぞー!」

 「イリル……思い出せないかもしれないけど……これは、ライルの譲りよ」

 「ライルの……待って! 何だか騒がしくない?」


 爆発の音と共に、逃げて行く人々の足音がどんどんこっち側に近づいてきた。

 


 「フン、このビルの占拠もたいしたことないな! ビルのセキュリティーが緩くて助かったぜ!」


 爆発の音の方向へと歩んで、ビルの入り口の前から、何やら見覚えがある小さな姿と、危険な感じの姿を見つけた。


 「先輩、こいつをどうしますか?」


 人型のウイルス二体が、向かい合って話していた。水色のウイルスは、片手に、震えて声が出ない状態の子供を掴んでいた。


 「姉貴の言うとおりに、対ファイター用に人質を出すつもりだ、それまでにはこいつを逃がさねぇように、見張っておけ」

 「はっ、分かりました」


 ハッキリと見えないけど、黒い男(?)と小さい子供と一緒に爆発したビルの方へと入っていった……。


 「あ、あの子は……誰か聞こえる?」

 「は、はいっ、こちら、レイ! どうしましたか?」

 「実は、駅前のビルが、ウイルスらしき物体に出てきたみたいで、その中に人間の子供が捕まっているんです!」


 あの男はウイルスだったのか……、レイは真剣な顔で、話した。


 「分かりました! 急いでファイターに緊急指令を出すので、その子供の救急を!」


 レイの通信画面が、シュッと消えるように、通信を終了した。


 「駆、イリル……何だか怪しい気がするわ……ここは慎重に取りかかりましょう……」

 「えっ? ここって、一気に突撃するんじゃないの?」

 「さっきの、人型のウイルス達の姿を見て、私達をおびき寄せている感じがしたわ! 下手に突っ込むと、かえって危険よ! 相手の策にかかるかもしれないわ!」

 「それは、分かってるんだ! でも、あの子の今の状況が、昔の友達と暴れん坊と何だか似てたから……オレは……同じような足場に浸りたくないんだ……!」


 駆は拳をぎゅっと握りしめるように、私達に話した……ん? この決意どっかで感じたことがあるような……。あっ……! ひとまず駆にその気持ちを受け取ろう!


 「……でも……」

 「待って、今は駆の案を提案しよう……だって――」



 ――一方その頃……

 「フンフフ~ン♪ 早く来ないかしら~♪」

 「少しはお前も準備しろよ! ベンガル!」


 ベンガルはビルのベンチに両足を大きく広げながら、イリル達を待ち伏せをしていた。その横目に、ヴェンルとシャド・ニャンは大型の機械を、金属音を鳴らしながら準備をしていた。シャド・ニャンは金槌を握りながら、肩を回しながら、ベンガルを見る。


 「いくら大型の機械だからとはいえ、低予算で注文したから、まだ防御力に不備があるニャ……」

 「そこは、火力に回しちゃえばいいのよ! 『攻撃は最大の防御なり』とかいうでしょ!」

 「んニャこと言っても……」

 「それよりもヴェンル、人質をあいつらに任せといて良かったのか? あいつら、手下の中でも、喧嘩っ早く、殴る事しか眼中にない奴らだぞ?」

 「まぁ、大丈夫でしょ! バグズ・ヒューマルは最初みんな好戦的だし! 給料ちょ~っと減らしてもみんな平気な顔だし!」


 先ほどのような、人型のウイルス、『バグズ・ヒューマル』は、通常のウイルスの中でも、最も人間に近い個体だ。主に、一般人がウイルス因子に感染したり、細胞から生まれた事で誕生をする。

 最大の特徴は、人間のように、道具や武器を扱うことができ、多少の知能も駆使できる。その上で、一般人よりも強い力を持っている。しかし、知能の方は人間に劣っており、バグズ・ヒューマルが20代の平均知力を獲得出来るのは、最低、でも50年かかるらしい。なので、大体の個体は大雑把かつ、大胆である。

 シャド・ニャンはベンガルにとある紙を見せてきた。


 「これが、どこのちょっとニャ?! ベンガルが部下たちに渡していたのって、一つまみ位の因子だったはずニャ! 吾輩だったら、一般社会らしく、お金を請求したはずニャ!」

 「あんたにお金なんか渡しても、ツナ缶しか買わないくせに! アタシのような節約術を身に着ければ、この強力な兵器が手軽に――」


 ヴェンルは、スパナを握ったまま、目を細めて話した。


 「ベンガル……この前、俺たちには内緒で高そうな服買ってたよな……」

 「吾輩もコッソリと聞いちゃったニャ……この前、ベンガルが、話題を呼んでいる美容院に入っている所を見たって、部下たちがいってたニャ……ついでに、証拠写真まで見せられちゃったニャ……これじゃあ、節約どころが、ブラック企業まっしぐらニャ……」

 「う、うるさいうるさ~~い!! 口を動かす暇あるなら、手を動かしなさ~い!」


 後ろから、呼吸が荒くなっている、バグズ・ヒューマルがベンガルの元へやって来た。


 「あ、姉貴! 急いでアレの準備を! ファイターの小僧達が、どんどんこっちへ向かってます!」

 「え?! 早くない?」


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