公園での戦い
美菜とネリネがいるニュートラルの森エリアに移動した私達は、彼女たちとの合流を果たして痕跡の場所を辿っていった。
痕跡を見たって場所は、地面に、草や武器の破片が散乱しており、木に切れ目があった。一体何と戦っていたんだろう……ん……? 待って、これって仮面? しかもさっきの奴がしていた物と似たような感じだ……。
「んん~他にもうなさそうだな……そろそろ次に――」
「あっ! ネリネ! 後ろを!」
「ん? うわぁ!」
美菜がネリネの背後の気配に気づいて、ネリネは敵が不意打ちして来た瞬間、盾で攻撃を受け流した。背後から忍んできた敵は、またしてもウイルスだった。カマキリのにも見えるウイルスが、ネリネに攻撃を仕掛けてきた。
「聞こえますか? その個体はシーフ・クリケットです! 素早い身のこなしと刃のような腕で攻撃を仕掛けます!」
「うぜぇ~‼ なんだこいつ!」
シーフ・クリケットはネリネの攻撃を避けたりしていた。すると、美菜は一瞬の隙を見て、杖でTypeの力を使った。
「バブルバインド!」
シーフ・クリケットは泡で拘束され、身動きが取れなくなった。シーフ・クリケットは抵抗するも、泡は頑丈で、ほどけなかった。
「サンキュ~美菜! っしゃオラーーー!」
ネリネは剣とWindタイプの力で、シーフ・クリケットに攻撃を仕掛ける。
シーフ・クリケットは地に鎌が着き、倒れていった。すると、物陰から、誰かが近づいて来る。
「死ぬかと思った……って、ゲッ! ファイターか!」
「あ、あなたは!」
そう…もう一人の若い世代の、黒髪で細身の強盗だった。奴は、急いで逃げようとしたが、美菜のバブルバインドで泡に閉じ込めてくれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ! 俺はカナヅチなんだぁぁぁぁ! もう、白状するから許してくれぇぇぇぇぇ!」
美菜のバブルバインドを解除をし、黒髪の男は、腰を抜かした様子で、話していた。
「実は、指示役の秘密をこっそりと知っちゃったんだけど、とにかく人々を恨んでて、ウイルスの薬を探していたんだよぉぉぉぉ……」
「なんで?」
「それは知らない! 会ったことないからぁぁぁぁ! この、メッセージアプリで、やり取りしたからぁぁぁぁ! 画像だってあるぅぅぅぅぅ!」
強盗の一人は、手を震えながらも、端末を見せた。
すると、例の画像を確認したところ、彼とリーダーらしき人物との、恐ろしいやり取りが書かれていった……。
まず、面接代わりに、身分証明書をこちらに送ってください。
その上で、家族の情報も送ってください。
(黒髪の男の身分証明書や家族の情報の写真が貼ってある……)
送りました。
確認しました。仕事の内容は明日、封筒の手渡しをお願いします。一件に付き、5万円位渡します。場所はニュートラル区中央公園で。
分かりました。
(二日目のやり取りだ……結局、封筒の手渡しを引き受けちゃったのか……)
封筒、受け取りました。
お疲れ様でした。それでは、貼ってある場所へのロッカーへ入れてください。
(指定されているロッカーの場所が貼ってある……)
今日の分まだ振り込まれていないのですが……
今日の分は明日の仕事をやってから振り込むよ
すみません……明日はちょっと……
何言ってんだよ、やるんだよ! お前の情報をネットに晒すぞ!
は、はい、明日はどこに行けば……
(三日目のやり取りだ……ちょうど、今日に繋がるのか……)
すみません…私には強盗なんてできません…この仕事を辞めたいです。
何言ってんだよ、もうお前は犯罪者だろ
ふざけんな! お前の実家わかってんだぞ!
(メッセージはここで終わっている……証拠としては十分集まった……)
「ん? 通信がきたわ!」
黒髪の男はこの辺りをパトロールをしていた警察に取り押さえられ、連行されていった。すると、レイは慌てた様子で通信を行ってきた。
「緊急命令! 最後のマーク地点なんですが、大型ウイルス反応も確認! あ……! 逢神さんの反応もあります!」
「なんですって⁉」
「……!」
笑は無言でマークした所に走って向かって行った。そういえば、調査を始めてから、あんまり喋らなったけど、誰かと何かあったのかな……?
(……シュン君…あの時、私が相談に乗っていたら……)
――笑は走りながらも、ある過去の記憶を振り返った。
「こんにちは……え、笑ちゃん……」
「こんにちは! また会ったね!」
笑は数日前、亡くなった茶髪で細身の青年と何度か出会ったことがある。
名前を俊と言い、ニュートラル区の大学に通うために、上京をしていたが、近所となじむことができずに、ニュートラル区中央公園で過ごす事が多かった。
その日、笑は、ニュートラルの森で散歩をしていた最中に、俊を見つけて、都会の事について相談されることが多かった。
「ここに来てからしばらく経つみたいだけど、調子はどう?」
「あ、う……うん……大丈夫だよ……」
俊は締まりのない表情になっても、笑には『大丈夫』と言わんばかりに心配させないようにしていた。しかし、笑はまだ慣れてないのかなと思い、どうしたのかと聞いてみる。
「どうしたの? いつもよりも口が回っていないよ? まだ困ったことがあるなら何でも言ってね! みんなも相談に乗るから、いつでも頼ってね!」
「あ、ありがとう……でも、今はまだ自炊生活に慣れてないくらいだから……それじゃあ、僕はそろそろ買い物に行かないと……」
そう言いながら、俊は笑に別れの挨拶を告げて、来た道の方向へ戻っていった。
(言えない……なかなか親の仕送りだけじゃ足りなくて、今の生活じゃ苦しいから、都会のバイトを探しているって言う事を……)
これが、笑と俊の会話がこれで最後だとも、まだ二人は知らなかった……。
――時は今に戻し、芝生広場の北側、私達は、急いで最後のマークした所へたどり着いた。現在、人型のウイルスが現れ、ウイルスはウルと交戦を交えていた。その周囲には強盗と思われる人達がうつ伏せで倒れていた。
「ウル!」
「イリルにセナ、そして笑も! こいつは危険だ! 離れろ!」
「ウル⁈ 大丈夫?」
「駆まで……俺は無事だ、ただ少し予想外な事が起きちまって……」
ちょうど駆が緊急命令の通信を聞いて、こちらへと、駆け付けてきた。私は、剣を構えた所、レイの通信が入って来る。
「分析結果、『ヒューマル・アサシン』を確認!」
ヒューマル・アサシンと呼ばれる人型のウイルスだ。レイ曰く、ウイルスは人から誕生する者もあり、侵食する事でウイルスになってしまうとのことだ。中でもアサシンは、その名の通り、暗殺者の見た目をしており、素早い特性を活かした攻撃を繰り出すらしい。
「こいつは元々、あの強盗の指示役だ! こいつは人類に恨みがあって、俺たちを倒した後、こいつらの仲間と全く無縁の赤の他人まで道連れにするつもりだ!」
「さっきの受け子の言ってたことは、本当だったみたいね……」
ウル曰く、一度ウイルスになると、二度と戻ることができず、なってしまった者は『死亡』として扱ってしまうそうだ……だから、殺人ではなく道連れになるんだ……それよりも早くあいつを止めないと……! 関係ない人まで巻き込まれたら、大変なことに!
「早くあいつの計画を阻止しないと……ウル、後は私が足止めするから、一旦引いて! はぁっ!」
ヒューマル・アサシンに向かって片手剣を振った。しかし、ヒューマル・アサシンの素早い身のこなしによって交わされてしまった。
「ふん、なんだそのぬるい攻撃は」
「さぁそれはどうかな? フレイムアッパー!」
駆がヒューマル・アサシンの背後をついて、攻撃を仕掛けた。不意を仕掛けるも、まだ奴の気は平常のままだ。
「ぐっ……やるな……しかし、これで終わらせる!」
「うわぁ!」
「イリル! 駆!」「イリルさん! 駆さん!」
ヒューマル・アサシンの分身が炸裂して、私と駆は、身体にロープのような物を巻きつけられてしまった! 身動きが取れないまま、奴の両刃に攻撃されてしまい、芝生の広場の方へと飛ばされてしまった……。
「ぐっ……こいつ……強い……!」
私と駆は、地面に膝を付いたまま、荒い呼吸を繰り返した。ヒューマル・アサシンは堂々とした姿勢で話した。
「はぁっ‼」
「うぐっ! 不意打ちが過ぎるぜ!」
笑は、ヒューマル・アサシンの急所を狙い、ジェットブーツで攻撃した。
「これで……決める! ジェットホイールっ!」
「甘いっ!」
笑はTypeの力を駆使して、ヒューマル・アサシンに攻撃を与えた。しかし、ヒューマル・アサシンは、攻撃を受け流し続けて、地面に潜伏された。
「笑!」
「動くな! 動いたらこいつを刺す」
ヒューマル・アサシンは、笑の背後に付いて、刃を首に向けようとしていた。笑は、あまりにも突然、近づけられたため、身動きがとれなかった。
「はっはーーー! これで間もなく願望が果たせるな! 人の命なんてどこにでもあるんだから、いくつ道具に使っても罪は同じなんだよ! 最初はこの小娘からだ! さらばだ!」
ウルはヒューマル・アサシンの両刃を大剣で、受け流して、ヒューマル・アサシンに向かって牙を向けた。
「――さねぇ……」
「ま、まだ動けるのか、お前は!」
「お前はもう、救いようがねぇな……俺は……命を弄ぶ野郎が許さねえんだ! たった一つしかない命を簡単におもちゃのように扱って……少しはこいつらの立場になれねぇのか! 一人は娘の大学費用に金を貯めて、一人は祖母の病気を治したくて、バイトを掛け持ちして、一人はお前とブラック企業から抜け出して、自由を手に入れられたんだ!」
「ウル……」
「そして、俺の知り合いにも、大学に通っている奴がいるんだ! そいつは今の生活が苦しくなってて、一人暮らしや人生について相談されたんだ! それでも……俺たちは、生きているからここにいるんだ‼」
「お、逢神さん……シュン君のこと……知ってたんだね……」
ウルはこわばった表情で電撃を放った。その後、ヒューマル・アサシンの元へ向かって、首を掴んだ。ヒューマル・アサシンは、身動きが取れなくなった隙に、ウルはこわばった顔で大剣を振り下ろす!
「雷に飲まれろ!」
「うわぁぁぁぁぁ! 有り得ない! ファイターの犬にやられるなんてぇぇぇぇ‼」
ウルはブラストを放ち、ヒューマル・アサシンを炎で包み込んだ。すると、ヒューマル・アサシンは膝を地面に付いた。つかまっていた笑は、弱っている隙に腕を掴んで、抜け出した。ヒューマル・アサシンは虚ろな目になりながらこう話す。
「なんで……なんで俺は……どこで道を間違えてきたんだ……」
「お前は、ウイルスに手を染めようとした時点で道を間違えたんだ。お前は人を金で釣って、騙して、自分の代わりに犯罪をさせようとしたこと。そして、その上で、罪なき人たちを巻き込んで命を粗末にしようかとしたこと。お前の動機は分からなくもねぇが、これは、絶対に進んではならない道なんだ」
「……今更後悔しても遅い……か……」
ヒューマル・アサシンは何もかもなかったかのように消滅した……。その後、救急と警察がこちらへやってきて、倒れた強盗達の意識が回復した直後に逮捕する見込みになるそうだ。こうして、無事人々の平和を守ることが出来た。……でも、笑の体が心配で、しょうがない。目立った傷はなかったけど、少し苦しそうに話していた。
「笑……怪我はない?」
「う、うん……大丈夫……」
笑は、苦々しい表情ながらも、私に平気だと話した。その後、あっと思い出したかのように、セナは最初の目的の話に戻した……。
「はぁ……目の前のことを解決してたら、結構時間かかっちゃったわね~」
「イリルさんの記憶探しは……また明日になるのかな……」
セナと笑は、ため息を付いていた所、私は二人に対して――
「いや、実はウルが言ってたこと、あの時のライルが言っていたんだよ……」
私は、先ほど思い出したことを二人に伝えた。あの記憶には続きがあって、ライルと一緒に窃盗団を捕まえた時だった。
「お前は、ウイルスに手を染めようとした時点で道を間違えてたんだよ。お前は人を金で釣って、騙して、自分の代わりに犯罪をさせようとしたこと。そして、その上で、罪なき人たちを巻き込んで命を粗末にしようかとしたこと。お前の動機は分からなくはないが、これは、絶対に進んではならない道なんだよ……」
そう言いながら、ライルと一緒に、犯人達を警察に任せて、現場から立ち去って行った。
何もかも失う闇バイト……もし応募を見かけても、警察に通報をして、応募してしまっても、一人で抱え込まず、警察や周りの信頼できる人達に相談して、闇バイトによる被害を少しでも減っていくように、私は願っている……。
闇バイトは犯罪です!
「簡単作業」「短時間・高収入」などの甘い誘惑に注意してください。
特にSNSやネット掲示板で登場する事が多いですが、ちゃんとしたアプリ等でもひっそりと出てくる事もあるので、見極めも大事です。