寝起きに見る太陽
※ 家紋武範様主催『夕焼け企画』参加作品です。
俺は寝起きがいい。スパっと切り替えるように眠りから覚め、大きく伸びをして、いつものように遠くの山並みへと目をやった。
ちょうど、太陽が半分ほど稜線から頭を出している。そのあたりの山並みや雲が太陽に照らされ、赤く輝いているのが見える。
俺は昔から、寝起きにこの光景を見るのが好きだった。
仲間たちは、今頃はまだ惰眠をむさぼっているはずだ。
『そんなに早く起きるなんて、馬鹿じゃないか?』なんてからかわれることもある。
だが、俺に言わせれば馬鹿なのはあいつらの方だ。デキる男は早くに起きるものだ。
仕事が始まる瞬間にベストな状態で働けるよう、身体も頭も目覚めさせて、牙を磨き爪を研いでおくべきなのだ。
見てみろ、あの美しい赤い空を。
あれを見ていると、自然と自分の血が沸き立ち、テンションが上がってくるのがはっきりわかる。
これが俺にとっての、目覚めのルーティーンだ。
他のやつらこそ、最も成果を上げている俺の流儀に合わせるべきなのだ。
まあ、あいつらがどうなろうと知ったことではない。俺は俺のやり方で、誰よりも成果を上げてみせる。それだけのことだ。
そんなことを考えているうちに、空の様子がだいぶ変化してきた。
太陽はもうすっかり山の向こう側に沈み、反対側の空がどんどん暗く色を失っていき、星が瞬き始める。
──さあ、一日が始まる。
闇に紛れてのんびりと草を食む奴らを狩って、今日も存分に喰らってやろう。
あの空の色にも似た獲物の血と肉の色を思い出し、柔らかい喉笛に噛みつく甘美な歯ごたえを思って喉が鳴る。
俺たち肉を喰う獣にとって、あの空の赤は狩りの始まりを告げる色なのだ。