表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編小説

寝起きに見る太陽

作者: 歌池 聡


※ 家紋武範様主催『夕焼け企画』参加作品です。



 俺は寝起きがいい。スパっと切り替えるように眠りから覚め、大きく伸びをして、いつものように遠くの山並みへと目をやった。


 ちょうど、太陽が半分ほど稜線から頭を出している。そのあたりの山並みや雲が太陽に照らされ、赤く輝いているのが見える。


 俺は昔から、寝起きにこの光景を見るのが好きだった。

 仲間たちは、今頃はまだ惰眠をむさぼっているはずだ。

『そんなに早く起きるなんて、馬鹿じゃないか?』なんてからかわれることもある。

 だが、俺に言わせれば馬鹿なのはあいつらの方だ。デキる男は早くに起きるものだ。

 仕事が始まる瞬間にベストな状態で働けるよう、身体も頭も目覚めさせて、牙を磨き爪を研いでおくべきなのだ。


 見てみろ、あの美しい赤い空を。

 あれを見ていると、自然と自分の血が沸き立ち、テンションが上がってくるのがはっきりわかる。

 これが俺にとっての、目覚めのルーティーンだ。

 他のやつらこそ、最も成果を上げている俺の流儀に合わせるべきなのだ。


 まあ、あいつらがどうなろうと知ったことではない。俺は俺のやり方で、誰よりも成果を上げてみせる。それだけのことだ。






 そんなことを考えているうちに、空の様子がだいぶ変化してきた。

 太陽はもうすっかり山の向こう側に沈み、反対側の空がどんどん暗く色を失っていき、星が瞬き始める。


 ──さあ、一日が始まる。


 闇に紛れてのんびりと草を食む奴らを狩って、今日も存分に喰らってやろう。

 あの空の色にも似た獲物の血と肉の色を思い出し、柔らかい喉笛に噛みつく甘美な歯ごたえを思って喉が鳴る。


 俺たち肉を喰う獣にとって、あの空の赤は狩りの始まりを告げる色なのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 夜行性の獣だから夕焼け…!? すごいアイディアですね! 私なら考えつきません! 面白かったです(*´▽`*)
[良い点] 企画から読ませて頂きました。 読み始めて直ぐ、え! なんで朝焼けが描かれてるの? と疑問に思っていたらそういうオチでしたか。 騙されました。 確かに夜行性の肉食動物にとっては夕焼け…
[良い点] 「夕焼け企画」から拝読させていただきました。 肉食獣が肉食獣たりうるのは、この研鑽からでしょうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ