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僕のお悩み解決大作戦  作者: 藤 理央
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はじめての

初めて小説を書いてみました

自分なりに面白おかしく書いたつもりです

伏線を多く張り巡らせてますので

展開を予想しながら温かい目で見てもらえると嬉しいです

感想等教えて頂けたら幸いです

「富士山は綺麗だけど、不思議だ」

 季節は春。まだ、山頂辺りには、「溶けてたまるか」と言わんばかりに冬の間に積もった雪が綺麗に輝いてる。

 でもどうして、山頂に雪が積もるのだろうか?

 太陽によって地球が温められているのであれば、太陽に近い位置にある富士山の山頂は、僕たちが暮らしている地上よりも暖かいはずである。

  でも、現実は標高が高ければもちろん寒い。当然、気温が低くなければ雪は積もらない。

 そんな事はわかっているが不思議だなと感じる。

 これから僕は18年間暮らした東京を離れて、4月から静岡の大学に通うために一人暮らしを始める。

 東京に住んでいるのに、わざわざ静岡の大学に行く人間は、なかなかいないと思う。でも、やりたい事をやる為に選んだから他の人は気にしないようにしている。

 はじめて乗った新幹線の車内から、はじめて生で見る富士山を横目に馬鹿な事を考えていると、僕の思考を遮るように社内アナウンスが入る。

「ご乗車ありがとうございました。まもなく静岡に到着いたします」

 新幹線の女性車掌さんの美声により、新幹線が静岡に到着する。忘れ物が無いかを確認し席を立つ。

 新幹線のドアが開くと同時に僕の大学生活が始まる。


○逃げ上手と追い下手

 静岡に着き、ネットの地図でこれから住むアパートへの道を調べる。

 僕は入試が無かったため静岡には1度も来ていない。これから住むアパートも適当に学校から近いアパートをネットで選んで契約した。

 僕が入学する大学は不思議な事に、入試が存在しない。入試の代わりに、大学で何を学び、何を目標にするのかを作文にし、大学に送るだけと簡単なものである。ただ、合格率は高くない。その理由は僕達には分からないけど、恐らく高校での貢献度が大きく響いているからだと思う。

 例えば部活で良い成績を残したキャプテンだったり、生徒会長を務めていたなどと、色々あると思う。僕は部活に入ってなかったし、特に良い成績を残してないけど、ちょっと変わった事をしていたから、合格したのだと思っている。

 不思議な大学だと疑問を抱くが入学式は1週間後。それまでに準備しなければいけない事が山積みである。

 考え事をしていたせいか、地図を見ているのにも関わらず、何度か道を間違えながらも目的地のアパートに到着する。

「お、思ってたより…」

 三階建ての横長アパート。年季はそんなに経っておらず、外見は写真通り綺麗だ。写真写りは良いけど、実際は汚い事なんて事もあると思ってたから、少し嬉しい。

 何事もモチベーションは大事だ。これから4年間住むアパートが汚いようだと、やる気が出ない。

 荷物は事前に部屋に送ることが出来たので、部屋に入ったら大量の荷物を整理しなければならない。

 何事も始める時は忙しい、僕の中の常識。

 僕は自分の部屋である201号室は向かう。

 1階から2階への階段には虫の死骸があったが、僕は見ないようし、このアパートが素晴らしいと思い込ませる。初日からイメージダウンは良くないから。

 部屋の前に着き、ポケットから事前に受け取っていた鍵を取り出し、鍵穴に鍵を刺す。そこで違和感を感じる。

 「鍵が開いている…」

 よくよく考えてみると、自分の落ち度に気付く。

 宅配を頼むのにも関わらず、大家に部屋の鍵を開けてもらうよう連絡していなかった事を思い出す。

 いやいや、まてよ。

 普段から部屋の鍵を閉めていたのであれば、配達屋は荷物を仕方なく外に置いていく思うし、もし、普段から部屋を開けていたとしたら、この場合、配達屋は荷物を部屋に入れて、鍵を閉めずに出ていった事になる。

 前者後者だとしても思い浮かぶ事は、荷物が盗まれてしまっているかもしれない可能性。ただ、自分が悪い事もあり、一概に誰かを責める事は出来ない。

「はぁ…」

 結果はわからないが、思わずため息が溢れる。

 何れにせよ、部屋に入らないと始まらない。荷物が部屋にあると祈り恐る恐るドアを開ける事にした。

 ドアを開けると、確かに大量の段ボールが敷き詰めてある。

 しかし、窓が全開に開いており、日差しと風が部屋の中へと、入り込んでいた。

 そして段ボールの上に金髪の女性が座っている。

 状況が理解できない。

 高鳴る心臓。

 開けたドアを壊れるくらい強い勢いで閉めて咄嗟に部屋の外に出る。

 「落ち着け僕、状況を理解するんだ」

 心臓を抑えながら、状況を理解する。

 頭に浮かんだ事は、1つだけ。

 「金髪が空き巣に入っている…」

 「あ、あの…」

 後ろに振り向くと、ドアから顔を出した金髪女性が、モジモジしながらこちらを見ている。

 年齢は同じくらいだろうか。綺麗な顔立ちで身長は170センチくらい。見た目はギャルのような姿だが、どこか違和感を感じさせる。

 「あ、空き巣じゃ、ないですか?」

 我ながら変な質問だと思ったが、つい口から溢れる。

 「空き巣では無い!です…。私…いや、とりあえず、役目は終わったので、失礼します。さようなら」

 理由を説明せずに、逃げ出す空き巣。いや、空き巣だとしたら話などせず一目散に逃げているだろう。

 ただ、役目が終わったと言っている事から、金髪空き巣なりに、やるべき事があり、何か伝えたかった事があると考える。

 僕は、一応理由を聞くために早足で逃げた金髪空き巣を追いかける。

 しかし、1階に降りたはずの金髪空き巣の姿は、もうどこにも無い。

 「逃げ足が早すぎる」

 あの女性の事が気になるが、とりあえず部屋の荷物を確認する事にした。


○悪者退治

 静岡に来てからしばらく経ち、明日は遂に入学式。

 朝のランニングと夜の散歩。

 この土地に慣れるために、色々下見をするようにしている。

 このアパートにも慣れた頃だ。

 初日はどうなる事かと思ったけど。

 結局、あの日段ボールの中身から、部屋の中まで、異常がないかチェックしたが、何も盗まれてないし、特に変わったこともなかった。

 一応配達屋に連絡してみると、その日は鍵が閉まってた為、外に荷物を置いたと教えてもらった。あの金髪空き巣はもしかして、荷物を中に運んでくれたのかもしれない。だとしたら、どうやって鍵を開けたのだろうか。疑問は残るが、荷物が無事で本当に良かった。

 そしてあの人の事は、これからは、敬意を示し空き巣さんと呼ぶ事にした。次に、空き巣さんに会う事があれば、ちゃんと話を聞こうとも思っている。


 現時刻21時。

 日課である散歩はこの時間に家を出ている。

 最初は特に理由もなくこの時間に出ていたが、今では目的があってこの時間に出るようにしている。

 目的地のコンビニに到着する。

 「やっぱり、今日もいる」

 この6日間毎日決まってこの時間にコンビニに現れる女の子。初日にたまたま立ち寄ったコンビニで初めて出会った。特に話した事もないから、出会ったと言う言い方はおかしいかもしれない。

 もちろん向こうは僕のことを知るはずもない。

 ただ僕が一方的に目を付けている。

 その理由はこの高校生くらいの女の子が毎日、不自然な行動をしているからである。

 女の子は毎日同じ生理品コーナーで立ち往生し、黒い箱を手に取っては棚に戻し、人目を気にして周りを見渡し、しばらくすると何も買わずに店をでるのだ。

 明らかにおかしい。

 側から見たら、完全に万引きする人間の行動だ。

 僕も気にしなければいいだけなのに、何故か気になって毎日コンビニに入りその子を観察してしまっている。

 でも、今日はいつもとは違い、コンビニの外から女の子を観察する事にしている。

 店内を外から眺めていると、女の子はいつも通り生理品コーナーで立ち往生。周りを見渡し、店員以外誰もいないことを確認している。その後、黒い箱を手に取り隠す。

 僕は見てしまった。万引き現場を。

 僕はあの子を見逃す事が出来ない。

 追求する為、バレないように外で待つ事にした。

 しばらくするとコンビニから袋を持った女の子が出てくる。万引き犯のくせに何か買ったのだろうか。

 僕は万引き犯を捕まえる決心をする。

 「君、ちょっと待って!いきなりで驚くかもしれないけど、ビニール袋の中身確認しても良い?」

 驚いた表情。明らかに動揺している事が分かる。

 「い、いきなりなんですか!話しかけないでください!」

 動揺と言うか、怯えているようにも見える。それにしても話しかけないでくださいって、まるで僕が変態みたいな物言いだ。

 「ここ数日、うちの事、付け回してますよね?夜女の子1人になるのを、狙ってたんですね!このストーカー!」

 気付かれていないつもりだったけど、気付かれてたのか。普通に考えて毎日同じ人がコンビニいたら、こちらと同じように、向こうも僕の顔を覚えててもおかしくない。

 「ちょっと待って!話を聞いてほしい!僕はストーカーでは無い!」

 僕はストーカー扱いされ、動揺を隠しきれない。

 「いや、ストーカーです!毎日同じ時間になんなんですか!しかも袋を見せろって…」

 万引き犯を捕まえる正義のヒーロー感で、後を追いかけていたつもりが、いつの間にか自分がストーカー紛いの事をしていた現実に直面する。

 「ご、ごめん!そんなつもりはなくて、僕はただ毎日君の怪しい行動を見ていたから、悪さでもするのかと勝手に疑ってしまって…。いきなりこんな事言っても伝わるか分からないけど…」

 疑われた時は、素直に非を認め、自分の意見を伝える事が相手を落ち着かせる1番の手段だと思う。

 「何を訳のわからない事を言ってるんですか?勝手に人を疑った挙句、言い逃れしようなんて!うち許せません!」

 あれ…火に油を注いでしまったようだ。

 こうなったらどうしようも出来ない。強硬手段に出るしかなさそうだ。

 僕は素早く女の子に近づき、手に持っていたビニール袋を強引に奪う。この中にあるであろう万引きの証拠を突きつける事にした。

 「ちょ…ちょっと、何するんですか!」

 怒る女の子を無視し、ビニール袋の中身を確認する。そこには、オレンジジュースと黒い箱。しかも、黒い箱にも購入した証拠のテープが貼ってある。

 「これ両方ともちゃんと、買ったの?」

 誰がどう見ても購入した証拠があるのにもかかわらず、僕は言う。だって、万引きの証拠がないとしたら、僕は万引きと勝手に疑ったストーカー犯になってしまうからだ。

 「中を見ないで!ください…」

 どんどん耳が赤くなる女の子。余程、中を見られたく無いのだろう。罪悪感に駆られつつも、黒い箱を再度確認をする。やはり、テープは貼られている。

 が、しかし…

 「0.3ミリ…?」

 これは紛れもなく、男女が仲良くなり、その後、ちょめちょめをする時に使用されると、噂されているアレだ。

 「君、6日間これを買うために立ち往生していたの?」

 コンドームを買うたために、6日間通い詰めたとはおもえないけど、確かにコンビニで買う勇気は僕にも無い。

 それにしても、この子は誰にも見られたく無いコンドームを、ストーカーに見られてしまうとは。友達に見られる方がまだ良いかも知れない。

 いや、そもそも、僕はストーカーじゃないけど…。

 「ま…間違えたんです、本当は別の物を買おうと思ってたんですけど。似てたから、ははは」

 下手くそな嘘。下手くそな作り笑い。

 何か他に隠している事がある様にも感じる。

 僕にはこの子の心が読める。

 読めるからこそ打てる強気の一手。

 「僕には君の心が分かる。もし、今から僕が言う事が、真実だった時は、ストーカーと呼ぶのをやめてもらいたい」

 これは自分を守る為の手段。

 いつの間にか体育座りのようにしゃがみ込み、顔を隠している女の子。

 不覚にも高校生相手に可愛いと、思ってしまった。

 「嫌です、うちは悪くないですから」

 顔も上げずに、拗ねている様子。それも、また可愛い。

 だが、男にはやらねばならない時がある。僕は邪念を捨て、言葉責めをする。

 「ごめん、話を続けさせてもらうよ。君はこの6日間、比較的人が少ないこの時間を狙い万引きの作戦を練っていた。だけど、毎日僕が見ている事に気が付き、なかなか犯行に及ばなかった」

 僕はこの子は黒だと思っている。

 「だが、今日は違った。僕が店内に居なかったから」

 店内に他の人がいないか確認しているところから、バレないように万引きしようとした事が分かる。

 「ビニール袋にはちゃんと購入した品が入っている。だけど、それはただのお飾り。そのインパクトの強いコンドームを、オマージュとして使い、別の何かを盗んだ。違うかい?」

 これが僕がこの子の表情、目の動き、しぐさから読み取った真実である。そして、盗んだ物はポケットにでも入れてあるのだろう。

 すっと、女の子が立ち上がり、呆れた表情で近寄ってくる。

 「違いますよ、全然違います。唯一正解していたのは、あなたがうちを毎日見ていたストーカーって言う事実だけ」

 僕は人の心が読める、きっとまだ嘘をついているのかもしれない。嘘だとは思うが、これ以上踏み込まず退散した方が身のためだと気付く。

 「完全敗北ってところかな」

 「何急に、格好付けてるんですか?ストーカーのくせに」

 「だって違うんでしょ?僕には負けを認める事しか…それとも、本当の真実を教えてくれるの?」

 「質問は受け付けません!あと、今頃非を認めたって、うちは辱めを受けた事忘れません!でも、本当にストーカーじゃ無いなら、今後会う事は無いですよね?私と会わない事を約束できるなら今回は水に流します!」

 僕の意見が本当に違うとしたら、この子には本当に悪い事をしてしまったと思う。ここは素直に謝る事にした。

 「ごめん、そう言ってもらえると助かるよ」

 「いえいえ、どういたしまして!でも、これから先うちに会えないからって、他の女の子をストーキングしないようにしてくださいね」

 はじめての笑顔。

 ストーカーから解放された安堵から溢れたのだろう。

 「あと、最後に1つ!うちも人の心読めます!あなたの心!うちの事身長小さいからって中学生くらいだと思ってましたよね!うち明日から大学生ですから!」

 高校生くらいだと思っていたがまさか僕と同じ歳とは。自分から身長のこと触れるところからして、身長はコンプレックスなのかもしれない。

 「すごい、当たってる…」

 とりあえず、良い気にさせておこう。

 「あなたよりは、勘が鋭いのです!」

 満面のドヤ笑顔。この子単純だなぁ。

 ストーカー扱いされたくないから、すぐ顔から目を背ける。

 話もついたし、そろそろ撤収するのが身のためだ。

 そんなことを考えていると、女の子が僕の背けた目を覗くように見てくる。

 「あなたも同じ歳くらいですよね?帰る時は、ストーカーにあわないように気を付けてくださいね!あと、その袋の中身、やっぱりうちには必要ないのかも。それ、あなたにあげます!大事に使うんですよ。それでは、さらばです!」

 小さく手を振り、僕の家とは反対の方に歩き出す。

 「触らぬ神に祟りなしとはこの事だな」

 僕はその女の子の後ろ姿に、許してくれた感謝ともう怪しい行動をしないようにと、願いを込めて小さく手を振った。


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