7 クロムの説得 (ダンタリオンの視点)
「マモン様!考え直してもらえませんか」
俺は頭をひねって考える。
どうにかマモン様の機嫌を取らないと。
「えー考え直すって言葉、あたし大っ嫌いなんですけど~」
マモン様は面倒くさそうに、宙を仰ぐ。
困ったなあと狼狽する俺の隣で、クロムが口を開く。
「あ!そうそう、ダンタリオンの旦那は、勇者の治療のためにすっごく頑張ったんだぜ!」
(……そう来たか、クロム!)
「なんか、治療薬をつくるために高ーい薬草を買ってたし?」
クロムが俺に助け船を出してくれている。
俺はこの流れに乗ることにした。
「え、ええ。俺は薬屋ですので。なんとしても治したくて」
そう、俺はエテルを奮発して、なかなか手に入れられない高級薬草やレアアイテムを購入したのだ。
そして最高峰の塗り薬を開発した俺は、死にかけのパブロを元気に回復させた。
俺の家から脱走されるくらいに。
「あのさア…、それ。逆効果だから」
マモン様は「馬鹿ね」という目で俺を見やる。
「勇者は死にかけぐらいにしとけば、逃げられなかったんじゃねーですか?」
「……」
確かに…それは、そうなんだが。
これにはクロムも沈黙してしまったかと思いきや、元気よく口を開いた。
「で、でもさ。ほっといたら死んでたよな、あれ?」
(クロム……どんなときもフォローしてくれて、ありがとうな)
俺はクロムとの友情を噛みしめつつ、
どんどん不機嫌になっていくマモン様に怯えていた。
クロムはまた一つ、思いついた!という風に続ける。
「しかもさ!高ーい封印アイテムの檻まで買って、勇者に呪いをかけてた剣を封印したんだよな!優しい~ダンタリオンの旦那、ヒューヒュー」
(ああ…あれで、今月稼いだ俺のエテル、全部持っていかれたんだったな)
我ながら散財が過ぎる自覚はある。
だが、パブロの持っていた剣には禍々しい魔力が宿り、パブロの全身を蝕む呪いになっていた。
だから、治療の前にまず、剣を封印する必要があったんだ。
「すべては、勇者をマモン様のもとへお届けするためです!」
俺はそれらしくまとめて、再び頭を下げる。