6 崩壊 (ダンタリオンの視点)
「はあああ!?勇者を逃がしたああ!?」
「カーっ!」とカラスの鳴き声を交えながら、激怒するマモン様。
こちらが食われてしまいそうな勢いである。
「も、申し訳ございません。マモン様!」
俺はとりあえず、跪いて、首を垂れて…。
反省の意を全身で表現する。
「すいませーん」
隣で、クロムも一緒に頭を下げてくれている。
……なんか、ノリが軽いのが心配だが。
「……アンタさあ、サタンのとこにいた剣よね?」
マモン様がクロムを見下ろす。
「ふん、サタンの奴に無理やりコレクションにされて、宝物庫に入れられたっきりだ!お陰で動きがなまっちまったぜ!」
ため口で話すクロムに冷や冷やしたが、マモン様はご機嫌のようだ。
「アハハ!それで。サタン封印でちゃっかりダンタリオンの剣に戻ってんの?最高!ギャハハ!」
大笑いのマモン様が落ち着くまで、
俺たちはおとなしく鎮座する。
(この流れで、勇者を逃がしたことを忘れてくれたらいいんだが…)
「で。ダンタリオンさあ」
マモン様は、ペットのハリモグラを抱き上げながら、
退屈そうに溜息をついた。
「あんたが、エテルも稼げない出来損ない悪魔だから。
面白そーって思って雇ったけど」
「は、はい…」
冷酷な空気が流れ、俺はごくりと唾をのむ。
「もういいわ、あんたの薬芸もそろそろ飽きてたし。
首よ、首!」
「……え!?」
しばらく、脳がフリーズした。
もう長いこと、マモン様に仕えてきた。
俺が他に、エテルを稼ぐ手段はないのに。
(解雇……だと!?)
俺は絶望で、がくりと崩れ落ちた。