69 再会①(パブロの視点)
「……!」
突如現れたその人は、ヨルムンガンドと俺の間に立っていた。
そしてその肩には、つぶらな瞳をしたヨルムンガンドに似た小蛇を乗せている。
「ヨルムンガンド。君がレヴィアタンに従った理由は、これだろ」
俺の前に立つその人がそう言った。
するとヨルムンガンドはしおらしく頭を下げた。
「ぎゃうううっ……」
怪物とは思えない優しい目つきと鳴き声で、ヨルムンガンドはその小蛇にすり寄った。
「レヴィアタンが奪い隠した君の子供――
探し出すのに、随分時間がかかってしまった。すまないな」
小蛇がその人の肩から降り、ヨルムンガンドの傍へと移動する。
するとヨルムンガンドはすっかり大人しくなり、今度はその人を庇うようにオルオンの側に牙をむけた。
「グレゴリーっ!!!貴様ァッ!!!!」
オルオンは苦い顔で、ヨルムンガンドを手懐けたその人のことを「グレゴリー」と呼んだ。
(この人が、グレゴリー……!?)
グレゴリーがどうしてここに居るんだろう。
そんな疑問を頭で処理する間もなく、俺の目の前で熾烈な戦いが繰り広げられる。
「ぎゃああああっ!!」
雄たけびを上げて、オルオンと精鋭部隊に襲い掛かったヨルムンガンドは、そのまま彼らの生命力の大半を奪い取る。
その姿には、子供を奪い取られていた「怒り」を感じた。
(す、すげえ……)
恐ろしいヨルムンガンドも、味方に付けば心強い。
「ぐっ……」
ヨルムンガンドの口から吐き出されたオルオンたちは生気が抜けて、ぐったりと倒れた。
この間に伯爵たちは避難し、一部は荒らされた精霊の丘の修復へと向かった。
倒れていたニコ・マクスーン伯爵はホップウェル伯爵に保護され、後で事情聴取を受けることを約束していた。
「怪我はないか?」
グレゴリーがそう言って、座り込む俺に手を差し伸べた。
俺と同じ、ハチミツ色の瞳が、こっちを見ている。
どくんと心拍数が跳ねあがって、手に汗を握る。




