48 闇使いの帝国
ロドリゴは、マシュを見下ろしながら嘲笑する。
「愚かですよねー。精霊の力があれば、自分たちはなんでもできると勘違い」
「……っ」
マシュにとって、グレゴリー以外の、この見知らぬ敵の存在は混乱でしかなかった。
「まあ、あなたがたの頼りの精霊様はもうじき消えますので。
ご安心ください」
と、淡々と告げるロドリゴの言葉にマシュは顔をしかめる。
「……どういうことだ」
「わかりませんか?グレゴリーはあなたたちをここにおびき寄せて、閉じ込めるためのエサですよ。
あの男は、闇使いの癖に精霊使いに媚びようとした。
だから罰をうけているんです」
「……!」
グレゴリーが闇使いたちから罰を受けている。
その言葉から、サタンと契約したグレゴリー・オーサーとその他の闇使いたちの関係性が垣間見えた気がした。
「あなたはただここで、指をくわえて見ていてください」
「なにを……」
「知りたいですか?すぐにわかることですけど」
ロドリゴがバカにしたように鼻で笑う。
「手始めにオズワルド、それから7大国の精霊の丘を順々に破壊するんです。
今、他の王国でも主要な軍隊は闇使いに拘束されて無防備ですから。
あとは魔界からスケルトンの戦団が押し寄せて……すべてを片付けます」
「……っ!?」
魔法7大国を巻き込む凄惨な計画に、マシュは息を呑む。
単独行動を好むと思われた闇使いが、どうやら組織ぐるみで暗躍しているらしいことに、マシュは驚愕していた。
しかし今更知ったところで、彼になす術はなかった。
「そんなこと!させてたまるかっ」
王国騎士団長として、精霊の丘の、そして王国の民たちの守護を諦めるわけにはいかない。
マシュは彼の精霊魔法で拘束を解こうと試みるが、やはりびくともしない。
「抵抗しても無理ですよ。オルオン様の元で世界は一つになる!
そして今度はあなたたちが、闇使いの奴隷になる番です」
ロドリゴはそう言って、怪しげに微笑んだ。
「オルオン――?」
マシュは、初めて聞くその名に眉をひそめた。
どうやらその彼がこの闇使いの帝国という構想の中心らしい。
(ああ――最強の闇使いオルオン様)
ロドリゴは、彼が唯一崇める存在である、かの闇使いオルオンのことを思い浮かべた。
(世界はあなたの元にひとつになり、そして闇使いの帝国が誕生する!)
闇使いの帝国――、いまだ存在しえなかったその実現を目の前にして、ロドリゴは興奮を抑えきれないでいた。
その思いは、グレゴリーを拘束している闇使いの少女シシィも同じである。
ロドリゴとシシィ。
2人の闇使いはここオーサー伯領にて、オルオンへの忠誠心をまた深く心に誓っていたのだった。




