43 魂の契約(パブロの視点)
魂の契約を始めて結ぶダンタリオンと俺に、ちびサタンが契約の方法をレクチャーしてくれた。
「魂の契約の方法は簡単だ。
悪魔のシジルに、契約者の血を落とせばいい」
「シジルって?」
俺が尋ねれば、ちびサタンは「そんなことも知らねーのか」という感じで肩をすくめた。
「シジルは悪魔がそれぞれ持つ紋様みてーなもんだ。
ダンタリオン、お前のシジルを手に浮かび上がらせてみろ」
「ああ」
ダンタリオンが大きくて黒い手を前に出すと、その手の甲に紋様が浮かび上がった。
「これが……ダンタリオンのシジル?」
ゼンマイ仕掛けの機械のような、幾何学的な紋様を「DANTALION」の文字が円形に囲っている。
うまく説明できないけど、なんかイイ。
「かっけー!!おいら、初めて見たよ」
クロムも上機嫌で跳ねている。
「えっと……次は。俺の血を垂らすんだよな」
俺は血が流れる傷口を探した。
だけどダンタリオンが治療したおかげで、もう綺麗に治ってしまっている。
「ここに血が残っているぞ」
そう言ったダンタリオンが俺の左首の鎖骨に溜まった血に、彼の手の甲のシジルを触れさせた。
すると、ダンタリオンのシジルが黒く光を放ち、俺の肌にもダンタリオンのシジルが浮かび上がっていく。
「っ……!!」
その一瞬の光の勢いに圧倒された俺は、少しよろめいた。
「契約完了だな」
「……これで?」
ちびサタンの言葉で、俺は自分に刻まれたシジルに触れてみる。
「ああ。貴様がシジルに触れてその悪魔の名を呼べば、召喚できる。
それから、逆に悪魔のいるところに貴様が移動することもできる」
「……なるほど、便利だな」
このシジルを使って、いつでもダンタリオンを呼びだしたり、逆にダンタリオンの元へ俺が行くこともできるってことだ。
「ダンタリオン、改めてよろしくな」
俺はダンタリオンに手を伸ばす。
するとダンタリオンも、そのだらんとした長い腕を俺に向けて、俺と手を重ねた。
「最初の願いは――決まってるな?」
尋ねるダンタリオンに、俺は笑顔で答えた。
「ああ、一緒に人間界へ行こう」
これは俺がようやく手にした、故郷へ帰る希望の道だ。
喜びを噛みしめて俺はダンタリオンの手を握る。
「では帰りたい場所を思い浮かべてみてくれ」
ダンタリオンの言葉に頷き、俺は目を閉じて考えた。
俺の帰る場所を。
すると周りの空間がゆがみ始め、俺たちは人間界へとひとっ飛びした。




