42 仲間の結束(パブロの視点)
「なんか打ち解けちゃってるけど!!
吾輩は勇者を許したわけではないゾ!」
甲高い声を上げて俺の視界に飛び込んできたのは、さっきから傍にいる小さい真っ黒な悪魔だ。
「えっとぉ~さっきから誰なんだ?」
そんな俺の疑問を解消するように、ダンタリオンが小さな悪魔を抱き上げた。
「彼は小さくなったサタン様だ」
と、衝撃の他己紹介をする。
「えっええーーっ!?」
(サ、サタンだと!?)
俺はここにきて現れた刺客に戸惑う。
「そうだ!吾輩は魔王サタン。
吾輩の力を封印した貴様は、許しがたい男だ!」
と、ちびサタンが俺をびしっと指さす。
「……パブロに危害を加えるつもりなら。
サタン様とはここでお別れするしかないですが……」
と、ダンタリオンが言えば、ちびサタンは必死にブンブンと首を横に振った。
「危害は加えない!そんな力も残ってないし!
吾輩はダンタリオンと一緒にいたい!」
小さな白い目をうるうるさせる小さなサタンは、ぬいぐるみのような愛らしさがあった。
(あれ?なんか。か、かわいい……)
と、つい思ってしまった俺の隣で、クロムがケタケタと笑声をあげた。
「いつの間に、サタンを手下にしちまうなんて。
さすがダンタリオンの旦那だよなあ」
しかしこれは不服だったらしいちびサタンは、クロムをキッと睨みつけた。
「吾輩は手下ではない。ダンタリオンの守護者と呼んでもらおうか」
とか言ってる。
ということは、ダンタリオンに付いてくるつもりなんだろう。
「……サタン。あんたが俺を恨むのは当然だと思う」
かつての敵でもある魔王サタン。
彼と行動を共にするならば、俺は伝えておきたいことがあった。
「俺は王国の命令で、魔王サタンを封印した」
ダンタリオンの肩に乗っかったちびサタンは、「ほう」と俺の話を聞こうとしてくれている。
ダンタリオンもクロムも、静かに耳を傾けてくれているようだ。
「後悔はしてない。
戦士としての俺の仕事は、王国の命令に従い、執行することだ。
命をかけた戦いの場で、命令に疑念を持つ余裕もない。だけど――」
俺は丁寧に言葉を探した。
ダンタリオンに、クロムに、サタンに、伝えたい気持ちを拾い上げるように。
「だけど俺は、あんたがどんな悪魔で、何を思っていたのか知りもしない。
あんたが魂の契約を結んだ、闇使いグレゴリーがどんな人間かも」
「……」
「戦場じゃ、敵と分かり合う余裕なんてない。
仕方ないとわかっていても。
それは一方的で、虚しいことだ」
それは口からもれでた、俺の本音だった。
(たぶん、ダンタリオンとクロムと会って、俺は変わった)
俺はこの魔界で実感してしまったのだ。
敵だと思っていた「悪魔」と、それと契約する「闇使い」という人間。
そんなカテゴライズでひとまとめに出来るほど、彼らは一様ではない。
「俺は……もっと悪魔や魔界のこと、知らないといけないんじゃないかな。
だから俺は魔王サタン、あんたがどんな悪魔なのかも知りたいよ」
俺がそう言えば、ちびサタンは白くて丸い目をうるると輝かせた。
「勇…者…」
と言いながら、俺の胸に飛び込んできた。
「おっと……」
「お前のことは嫌いだ。しかし、その小さな頭をひねり、他者に学ばんとする姿勢は嫌いじゃない。ダンタリオンの契約者として、認めてやらんことはないゾ!!」
(なんか言い方に棘あるんですけど……)
と思いながらも、俺はこの小さな魔王の協力に感謝して、頭をなでなでした。
「よろしくな、ちびサタン様」
「なでなでするなぁ!!」
と、発狂するちびサタンは、それでもマスコットキャラクターみたいに可愛い。




