39 窮地からの覚醒(パブロの視点)
「……くそ…っ。
なんだんだよ、どいつもこいつも~っ!」
悪魔に捕まって、さんざんもて遊ばれて。
挙句の果てに、俺の剣は魔物だったとか。新しい魔王ルシファーだとか。
勇者として魔王サタンを封じたっていう達成感はどこへやら。
知りたくもない情報で、ぺっしゃんこに潰れた。
「こんなことなら――」
仲間に置いて行かれた、あの時、あの場所で。
パンデモニウムで、骸骨に喰らわれて死んだ方がよかった。
そんな考えがよぎった。
「……」
でも、それじゃああんまりだ。
俺は何も知らないまま魔物の剣を持たされてた。
誰がなんの目的でやったことか、俺はまだ知らない。
ユリウスたち勇者の仲間は、どこまで知ってたんだろうか。弟の代わりに俺が勇者になったことも誰かに仕組まれたことだったんだろうか。
そうやって俺は、疑いたくない人を疑って、苦しくなっていく。
「……っ」
このまま死んで、何が残るんだろう。
魔法も、信じられるものも、失ったままだ。
「こんなところで…死にたくない」
俺はパンデモニウムで死ななかった。
どういう巡りあわせか、俺はクロムとダンタリオンと出会ったからだ。
アイツらのお陰でこうして生き延びたことがただの偶然でも、俺には運命のようにも思えた。
(せっかくつないだ俺の命……ここで終わらせてたまるか)
骸骨の戦士がじりじりと近づいてくる中、俺は芋虫のようにもがきながらポケットに忍ばせていたドラゴンの角を手に掴むことに成功する。
「よし……っ」
そしてその角先で、少しずつ、この蜘蛛の糸でできた殻を切り裂いていく。
(落ち着け……俺)
恐怖で震える手を抑えて、ついに蜘蛛の糸を全て切り裂いた俺は、煩わしいこの白糸を投げ捨てた。
そして自由になった手足で、ゆっくりと立ち上がる。
「……っ!」
(俺はもう諦めないぞ)
この最悪な状況から形勢逆転する。
その瞬間はさぞかし気持ちいいだろうからな。
「俺は生きて魔界を出てやる……っ!!」
と、ドラゴンの角を骸骨の戦士たちに向けて構えた。
――ということはせず。
「とにかく逃げるぅーっ!!」
と、骸骨の戦士に背を向けて、俺は全力疾走したのだった。




