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ダンタリオンと勇者   作者: 小栗とま
魔界の章
32/84

30 闇使いオルオン


 魔界の王宮パンデモニウム、王座の間。


 ここでは新たな魔王ルシファーが君臨し、

 彼女に従う悪魔レヴィアタン、ベルゼブブが仕えていた。


 そこへある人間の男が現れると、3体の悪魔の間に緊張が走った。


「魔王就任おめでとう、ルシファー」


 と、ゆっくりと両手を叩き拍手を送る男の風貌は、

 オズワルド王国宰相ネロその人である。


「オルオン様」


 と、ルシファー、レヴィアタン、ベルゼブブが頭を垂れ、一斉に跪く。


 7つの大罪の3体が服従を示すその光景は、魔界にまたとない珍しい様子であるのは言うまでもないことだ。


「ああ、いけない。

 ……汚い顔に姿を変えたままだった」


 オルオンと呼ばれた男は、自分の顔を触り、ネロに変身していた魔法を解く。


 その本来の姿は、白髪を長く伸ばした中年の男である。

 顔は青白く、両目とも失明しており、切り傷の跡を残したまぶたを閉ざしている。


 この男こそ、ルシファー、レヴィアタン、ベルゼブブの3体の悪魔と魂の契約を交わしている闇使いだ。

 圧倒的な力を持つ闇使いとして自らが君臨するために、契約した3体の悪魔と共に人間界支配を企てている。


「全て、計画通り進んでいます」


 ルシファーが粛々とそう告げるが、オルオンは不服そうに鼻を鳴らした。


「計画通り?ならば今頃すでに、ヨルムンガンドも、骸骨の戦士どもも、

 人間界に進軍させているはずだ」


 オルオンは、コリコリと首の骨の音をたて、首を傾げている。

 そして口元には薄気味悪い笑みを浮かべているのだ。


 この仕草は、彼の怒りが最高潮であることを示している。


「レヴィアタン、君の作戦ではなかったか?」


 オルオンはレヴィアタンに詰め寄り、光のない瞳でまっすぐに睨みつける。


「ヨルムンガンドを勇者の剣に見立てる。そしてサタンと勇者パブロを同時に破滅させた暁には、すぐに人間界を征服してみせると?」


 オルオンの畳み掛けるような冷たい声色が空間に染みていく。

 

「僕の作戦は間違っていません!

 ただ、ただ、マモンの配下の雑魚悪魔が!思わぬ邪魔を入れただけだっ!」


 レヴィアタンは自分の作戦が汚されたことに苛立ち、自分の指の爪を噛む。

 決して自分が間違っていたとは思わないのが彼の性格である。


「レヴィアタンがミスったのは間違いねーけどよお」


 と、ベルゼブブが野太い声をあげれば、レヴィアタンはきっと目くじらを立てた。


「おいらがわからねーのはよ。なんでアンタが、あんな弱っちー赤い髪の勇者にこだわったのかってことだよ」


 ベルゼブブの疑問に、オルオンは激しい嫌悪感を露わにした。

 そして次の瞬間には、腰に付帯していた剣を振りかざし、ベルゼブブの豚耳を切り落とした。


「ぎゃあああっ!」


 痛さにもがくベルゼブブを前に、オルオンは淡々と話し続ける。


「私は魂を7つもっている、選ばれし人間だ。

 そんな貴重な魂を……君に2つ、君に2つ、君には3つも捧げている」

 

 オルオンはそう言いながら、レヴィアタン、ベルゼブブ、ルシファーを順に指さしていく。


「その私をがっかりさせるとは、どういうことだ。なあ、魔王よ?」


 オルオンは静かな口調で、それでいて強引に、

 ルシファーのあでやかな紫色の髪を掴んだ。


「貴様……っ!!」


 と、レヴィアタンがオルオンにつかみかかろうとすれば、オルオンはその閉じられたまぶたを開いた。


「ふん。できないだろう?」


 と、光の無い白い瞳が、冷たくレヴィアタンを見ている。

 レヴィアタンはわなわなと震える拳を、オルオンにぶつけることもできずに静止していた。


「悪魔は人間に直接、危害を加えられない。

 だから、人間か魔物を介して、人間に危害を加える」


 オルオンは魔界の法則をよく理解していた。


「……ぐっ」

「やめなさい。レヴィアタン」


 レヴィアタンが悔しそうに暴れるのを、ルシファーが静かな声で制する。


「フン」


 オルオンはルシファーの髪の毛を掴んだまま、乱暴に突き放した。


「余計なことを気にする暇があるなら、早急に計画を勧めろ」


 オルオンはそう言い残して、再びネロに変身すると人間界へと去っていった。



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