25 アスモデウスの毒針(パブロの視点)
「どうして?」
アスモデウスの問いかけに、俺は固まる。
「どうしてって……」
俺は考えたが、すぐに答えはでない。
「ココを出ても。君に行き場所はないだろ。魔界から出ていく道は閉ざされた」
「そ、それは……」
悔しいが、確かに俺に行く先はない。
そんな俺の葛藤を見透かしたように、アスモデウスは怪しく微笑んだ。
「なら僕と楽しく、おしゃべりを楽しもうよ?」
クロムがガクブルと震えだす。
「に、兄ちゃん!下、下!」
「へ?」
クロムに言われるまま下を見ると、俺たちの足元には無数のサソリが集い始めていた。
ん?サソリ……サソリって猛毒の針を持ってるんじゃ!?
「ひゃっっっ!!」
俺は慌てて膝を抱えて、足を長椅子の上に置いた。
サソリたちは、毒針つきの尻尾を高くあげながらうごめいていて、俺とクロムはどんどん青ざめていく。
「ふふ。そんなに怯えないでよ。君たちが無駄な抵抗をしないように、一応いてもらってるだけだから」
と、微笑みを浮かべるアスモデウス。
どうやらサソリたちは彼の配下らしく、今のところ大人しく鎮座している。
アスモデウスに逆らったら……俺、刺されるな。
もはや怖くて泣きそうなんですけど。
「脅すなんて、卑怯だぜ!」
クロムが勇敢にそういうが、アスモデウスは動じない。
「たとえ君が剣でも、この子たちの毒は有効だから。言葉には気を付けて?」
と、アスモデウスが挑発すると、クロムは「はい、黙ります。」と、即座に沈黙した。
(……ク、クロム……)
そうだ、クロムは頼れるのか頼れないのか微妙な剣だった。
「それじゃあ、おしゃべりタイム」
アスモデウスがそう言ってニヤリと口角を上げる。
「んー何から聞こうか。好みの女の子とか?なーんて」
「……」
「……」
アスモデウスはふざけているのか、ふっと息を吹いて笑った。
「いきなり質問攻めにするのも紳士的じゃないよね。
まずは、君をその気にさせないと」
アスモデウスはそう言って、何から話そうかと考えるようなしぐさをした。




