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ダンタリオンと勇者   作者: 小栗とま
魔界の章
27/84

25 アスモデウスの毒針(パブロの視点)


「どうして?」


 アスモデウスの問いかけに、俺は固まる。


「どうしてって……」


 俺は考えたが、すぐに答えはでない。


「ココを出ても。君に行き場所はないだろ。魔界から出ていく道は閉ざされた」

「そ、それは……」


 悔しいが、確かに俺に行く先はない。

 そんな俺の葛藤を見透かしたように、アスモデウスは怪しく微笑んだ。


「なら僕と楽しく、おしゃべりを楽しもうよ?」


 クロムがガクブルと震えだす。


「に、兄ちゃん!下、下!」

「へ?」


 クロムに言われるまま下を見ると、俺たちの足元には無数のサソリが集い始めていた。

 ん?サソリ……サソリって猛毒の針を持ってるんじゃ!?


「ひゃっっっ!!」


 俺は慌てて膝を抱えて、足を長椅子の上に置いた。

 サソリたちは、毒針つきの尻尾を高くあげながらうごめいていて、俺とクロムはどんどん青ざめていく。


「ふふ。そんなに怯えないでよ。君たちが無駄な抵抗をしないように、一応いてもらってるだけだから」


 と、微笑みを浮かべるアスモデウス。

 どうやらサソリたちは彼の配下らしく、今のところ大人しく鎮座している。


 アスモデウスに逆らったら……俺、刺されるな。

 もはや怖くて泣きそうなんですけど。


「脅すなんて、卑怯だぜ!」


 クロムが勇敢にそういうが、アスモデウスは動じない。


「たとえ君が剣でも、この子たちの毒は有効だから。言葉には気を付けて?」


 と、アスモデウスが挑発すると、クロムは「はい、黙ります。」と、即座に沈黙した。


(……ク、クロム……)


 そうだ、クロムは頼れるのか頼れないのか微妙な剣だった。


「それじゃあ、おしゃべりタイム」


 アスモデウスがそう言ってニヤリと口角を上げる。


「んー何から聞こうか。好みの女の子とか?なーんて」


「……」

「……」


 アスモデウスはふざけているのか、ふっと息を吹いて笑った。


「いきなり質問攻めにするのも紳士的じゃないよね。

 まずは、君をその気にさせないと」


 アスモデウスはそう言って、何から話そうかと考えるようなしぐさをした。






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