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ダンタリオンと勇者   作者: 小栗とま
魔界の章
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15 精霊の丘


 人間界。オズワルド王国。

 その精霊の丘には、魔界から繋がる井戸がある。


「精霊様。どうか、勇者4名を故郷の地オズワルドへお運びください」


 鈴のような声でそう告げるのは、聖女エレナ・フルーム。

 精霊の守護を司る彼女は、勇者パブロ・フルームの義理の妹でもある。


 彼女を先頭とする司祭たちが列をなし、この精霊の丘で勇者の帰還を祈り待つのだった。


 一面にシロツメクサの白い花が広がるこの丘には、人々に魔法の力を授ける精霊たちが天界から降りて宿る。故に「精霊の丘」と呼ばれている。


 オズワルド王国の民たちは、この丘で授かる魔法の力で豊かに暮らしてきた。


 王国の要ともいえるこの力の源は、国民以外の侵入を許さないよう、司祭らの魔法によりドーム状に結界が張られている。


 そんな神聖なる精霊の丘のまんなか。

 ポツンとただずむ井戸の中から這い上がってきた人影は、紛れもなく、魔界から帰還した勇者たちである。


「勇者様だ…!」

「勇者様が帰還されたぞ!!」


 司祭たちは歓声をあげ、疲れきった彼らを労り、迎え入れる。


 ユリウス、リア、ロミオ。

 井戸から順番に這い上がる3人の勇者たちの無事を確認し、安堵に満ちていくこの丘で、しかしエレナは内心にぬぐえない不安を抱えた。


(お兄ちゃんは……?)


 彼女の義理兄、パブロ・フルームの姿が見えないからだ。

 そんな彼女の動揺を嗅ぎ取ってのことか、勇者たちは残念そうにうつむき、首を横に振った。


 その無言の仕草だけでも、パブロが魔界で殉死した事実を確定するには充分だ。


 エレナの張り詰めた足の力が抜け、精霊の丘に崩れ落ちたとき、勇者のリアが彼女を抱き留めた。

 そして2人の少女は互いに抱きしめ合いながら、パブロの死を嘆いて涙を流したのだった。


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