13 悪魔レヴィアタンの策略
真っ赤な月が浮かぶ魔界の空の下。
ダンタリオンの家を抜け出した蛇――もとい、勇者パブロが所持していた剣が、とある居城へとやってきた。
それは、7つの大罪に名を連ねる悪魔レヴィアタンの城だ。
霧がかったレンガ造りの古城は、窓にツタが伝うばかりの廃墟に見える。
その城に1人、城の主であるレヴィアタンだけが、薄暗い居城の一室に鎮座している。
彼の上半身は人間の青年の姿だが、下半身は大蛇である。
緑色のくしゃくしゃした髪の下に、切れ長の緑瞳の目とすらりと高い鼻を持つ美青年ではあるが、目の下の隈がひどく、血色の悪い顔をしている。
下半身の蛇はどす黒い紫色のうろこを光らせ、とぐろを巻いて居室を狭そうに占拠している。
そして彼の視線は、宙に映し出される幾多もの「映像」に向けられている。
それは、魔界中を飛び回る彼の手下のトンボたちが、その瞳に移した映像であり、レヴィアタンはそれを常に監視している。
「……来たか」
ニヤリ、と口角を上げたレヴィアタンは、蛇の姿をした勇者の剣を彼の肩に迎え入れた。
蛇はその口から、真っ赤なエテルを装飾した指輪を吐き出す。
レヴィアタンはそれを手にとり、興奮に鼻息を荒くした。
「っ…!ははっ!やったぞ!」
それは、見た目からして魔王の指輪である。
こうして役目を終えた蛇は、動かぬ勇者の剣の姿へ戻り、コトリと音を立てて床に落ちた。
「僕のためにご苦労様?勇者の剣と勇者たち」
レヴィアタンは、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。




