10 魔王の指輪 (ダンタリオンの視点)
魔王の指輪、という聞きなれない単語に俺は首をかしげる。
「すまんクロム。俺は普段引き籠っているし…。なんのことだか…」
魔界のことにかなり疎い自信がある俺は、そう言って肩をすくめた。
するとクロムは首を横に振って、「知らなくて当然さ」と言う。
「おいらはパンデモニウムで盗み聞きしたんだ。
……指輪のことはトップシークレットらしい…!」
と、クロムが声をひそめる。
(トップ…シークレット…!?)
「い…いいのか。しゃべって??」
何処からともなく冷や汗をかきただした俺は、ぷるぷると震えながら確認する。
「ちょっと!旦那は聞きたくねえのかよお!」
「いや、聞きたいって!」
俺はもう、すっかり話に夢中で、クロムを磨くことを忘れてしまっているくらいだ。
クロムは「よし」と一呼吸置くと、ゆっくりと話し始めた。
「魔王の指輪はな、赤色のエテルで装飾されてる趣味の悪い指輪だ。どうやらあの指輪に、骸骨の戦士を操る力があるらしいんだ」
「……魔王の、象徴ってことか…」
俺は「魔王の指輪」とやらの見た目を想像する。
魔王サタンは俺より5倍程巨大で、厳つい牛の顔をしている。彼が付けている指輪は、きっと、巨大で厳ついのだろう。
(しかし。そんな魔王様を封印した勇者たちって…すごくね?)
と、本題と関係のない所へ気がそれていた俺を、クロムが引き戻す。
「けど勇者たちが、指輪ごと魔王サタンを封じまったんじゃねーかな?」
「……!!」
トップシークレットである魔王の指輪のことを、勇者たちが知っていたとは思えない。きっと、無自覚に封じてしまったのだろう。
「だから7つの大罪は、勇者を探してるんじゃないかな。どうやるか知らないけど、きっと魔王の指輪だけは取り返したいんだ」
そう話を締めくくるクロムは、いつになくシリアスな雰囲気だ。
なんだか感心してしまった俺は、「なるごどな」と声を上げて頷いていた。




