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「――しばらくはこのような戦闘が続いていく。コトハがFAを取ってカイトをしつつ、俺は後方からダメージを出す。KBが続いている間はどんどん強気に攻めていい」
「なんとなく感覚は掴めたから、次はもっとうまくできると思う。あれがパーティーの連携ってやつなのね――それよりも、どうしてアルトはフィイをおぶってるの?」
奇態な状態の俺を見て、コトハが睨みを利かせてきた。
「だってフィイをあのままにしておけないだろ。いくらお前がターゲットを持っているとは言え、ブレスに当たったらどうするんだよ」
「怪しいわね、そんなこと言ってどうせ背中の感触にいかがわしいことでも考え――」
「だ、誰がそんなことを考えるか! ……とにかくまあ作戦はそんな感じだ。まさかジャバウォックにKBを与えられるほど強くなっているなんて。コトハもだいぶ火力が出るようになってきたじゃないか」
やや話題逸らしが露骨に過ぎたのか、コトハがジト目で見つめてくる。
そんな目をされても知らんよ。俺は邪な思いなんて抱いていない。
「……新しく習得したスキルのおかげよ、どうせアルトは知ってるんでしょうけど。
スキル〝バーサーカー〟発動中は筋力100%UP、20%移動速度上昇。職業名にちなんだスキルだけあってかなり強力な効果ね」
やはり俺の見立て通り、コトハはそれを習得していたか。
彼女の体から放出されている青のオーラは、バーサーカーの発動中を意味している。
火力に特化したジョブだからこそ、ここまでやってこれたのかと思えば、結果的にコトハが二刀を持ったのは正解だったのかもしれないな。他のジョブじゃあここまで火力は出しきれない。
「だけど肝心のデメリットは忘れていないだろうな。50%の最大HP減少、および被ダメージ量100%UP、うまくやらないと一撃もらったらダウンする。この先も気を抜くなよ」
「平気よ、フィイもいることだし心配しないで」
コトハが余裕の笑みを浮かべる。
実際、いざとなればフィイのリンカーネイションがあるし、一回はミスプレイしても許される。
こう考えると、前衛1後衛1支援1と、ちょうどいいバランスのパーティーになったな。
もう一人支援よりの職がいてもいい気はするけど。
「アルトくん。わ、われは力になれているだろうか。お荷物でなければよいのだが……」
フィイが自信なさそうにぽつりと言った。
「間違いなく力になっているから安心してくれ。フィイのバフとデバフがなかったら、きっとKBは取れなかった。移動速度低下も役立ってる。あれのおかげでコトハはだいぶやりやすかっただろうし」
「そうよ、回避がしやすくなって簡単だったわ。ダメージの底上げにも繋がってるし、絶対にお荷物なんかじゃない。ありがとうねフィイ」
「それなら……よかったのだ。役立てているようでなにより、えへへ」
にやけた声音が背後から聞こえる。……嬉しそうだな。
「間もなくモンスターが投入されますので、冒険者さまは準備をお願いいたしします!」
さて、そろそろ休憩は終わりのようだ。上級コロシアムも折り返し、さっさと片付けて次なる難所へと急ごう。







