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冗長にならないよう、ジャバウォック終わったらまた結構スキップします。
ぐるぐるの動き、分かりやすいように谷底と同じ挿絵を挟みました。
「お、おい見ろよあれ――あんなことがあり得るってのかよ!」
「嘘だ、信じられねえ……あいつらはいったい何者なんだ?」
「まさかレベリングしているっていうのか、70Lv差のあるモンスターを相手に!?」
俺たちの快進撃を前に、観客たちはいよいよ大きく狼狽え始めた。
上級コロシアムの第二ウェーブを務めるモンスター〝コカトリス〟
更に第三ウェーブ〝コボルトファイター〟
続く第四ウェーブ〝デッドリースパイダー〟と、次々と格上モンスターをなぎ倒していく俺たちを目に、コロシアム内は常に驚きの声が絶えなかった。
そして肝心の経験値はこれまでに倒したどのモンスターよりも比較にならないくらい美味く、十ウェーブに到達した段階で俺たちのLvは12も上がっていた。
これから敵が更に強くなることも考慮すればLvUPはまだまだ期待できる。間違いなく最高効率でのレベリングだ。
「――第九ウェーブを突破しました、続けて第十ウェーブへと入ります、より強力なモンスターが投入されますのでご注意ください!」
「問題はここからだな……」
アナウンスが遂にその時を報せる。
俺たちが警戒しなくてはいけないのは、この先だ。強力なスキルや特性を備えたモンスターが大量に出てくる。たったひとつのミスプレイが命取りになるんだ。
「コトハ、フィイ。十ウェーブ目からは出し惜しみしなくていい。習得したスキルをばんばん使っていけ。そうじゃないとたぶん、やばい」
俺の気持ちが伝わったのか、二人は目の色を変えて武器を構え直す。
「アルトがそう言うってことは、よっぽどなのね……分かったわ」
コトハの体から青白い流動体が放たれる。何かスキルを使ったな、バーサーカー職で青のオーラだと……おそらくアレだな。強気のコトハにお似合いの技だ。
「ならばわれも最初から全力で臨もう。
爾が翼の蔭を以て、我を眸子の如く護れ――イシュトトリア!」
フィイもまたスキルを発動する。
足元に展開された太陽の紋章は、自陣パーティーにはバフを、敵にはデバフを付与するAoEスキルだ。この半径十メートルの円に入ると、全ての敵は移動速度が20%低下、被ダメージ10%増加、さらに味方はクリティカル率3%上昇の恩恵を受ける。
さすがは隠しジョブのホーリーマスター。支援にも有能なスキルが多くて助かる。
「――来たか」
折よく準備が整った刹那に、第十ウェーブ目のモンスターが投入される。
モンスター名〝ジャバウォック〟。
ドラゴンのような翼と鱗を持ちながら、その首はろくろ首のように長く、尻尾には無数の蛇が生えており、とても竜の類には見えない形容をしている。キメラじみた化け物だ。
そのくせスキルは〝竜の息吹〟を放ってくるもんだから、竜なのか何なのか判別つかない。ちなみにダメージは掠っただけで2,000。もろに食らったら普通に死ぬ。
これはいよいよ立ち回る必要があるな。
「いいかコトハ、首を後ろに下げるモーションが見えたらジャバウォックの直線上には立つな。その後、ブレスが飛んでくる。直撃したらお前でもダウンは免れない」
「分かったわ、それ以外は何かある?」
「まずはモンスターの方向を揃えよう。お前が前衛を務めてターゲットを取れ。俺は後方からダメージを出す。そうすれば安全に戦えるはずだ――初見で攻撃を見切るのは難しいだろうが、できるか?」
「心配しないで、今まで散々床を舐めてきたんですもの。絶対にやり遂げてみせるわ」
「……そうだな、任せたぞ!」
全方位から押し寄せるモンスターたちを、コトハは率先してまとめ上げていく。谷底でやったように、モンスターにFAを仕掛けてターゲットをかき集める。
次にモンスターの攻撃を躱しながら、時計回りにぐ~るぐると動くことで準備は完了。ジャバウォックたちの向きは統一された。これで多方向から攻撃される心配はない。
「うまいなあいつら、多数戦にかなり慣れている」
「ああ、とても新米冒険者の動きじゃねえ。あれはいったい……」
そんな俺たちの動きを見て驚嘆する傍観者たち。
パーティーで挑む時は、この動きがソロよりも重要だ。
多数戦対多数戦だからこそ、ターゲットがバラけたり予期せぬ方向からの攻撃を受けやすくなる。モンスターのターゲットを取る役割と、後ろから攻撃する役割がしっかり分担されていなければ、パーティーは壊滅する。
さあ綺麗にジャバウォックたちを束ねたところで、反撃開始だ。
FA……ファーストアタック。MOBは最初に殴ったプレイヤーを襲うようにプログラムされているので、その性質を利用してターゲットをかき集め、モンスターの行動を統一させることが狙い。







