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日間70,000PVありがとうございます!これからも更新頑張ります!
MMOあるある~装備をロストして引退~
笑えないくらい悲しいですよねアレ。こちらでもその様子をやっていこうかなと思います。
「そろそろ一時間経っただろ。結果を確認してみようか」
出品されたアイテムはどれも値が付いたようで、画面を見るとSold Outの文字が表示されていた。後は金額の受け取りボタンを押せば、勝手にインベントリへと金が追加される。
それで肝心の売上額はと言うと。
「おお、四点で5.5mか! まあまあな額になったな!」
予想を倍近く上回る五百五十万。
いっても三百万だろうと思っていただけに嬉しい。これがオークションの醍醐味だ。
「すごいじゃない、そんなに跳ね上がるだなんて。でもどうしてそんなに高い値が付いたのかしら」
コトハが画面をのぞき込んで、売り上げの内訳を確認する。
■販売金額詳細[ルクス]
谷底のモーニングスター 500,000
谷底のモーニングスター 300,000
谷底のリング 4,500,000
ヴァーリルの濁った瞳 200,000
「見ての通り、指輪がかなり良い値で売れたんだ。このリングは良くても3mが相場だけど、アイテムは状況次第で売り上げが大きく変動するからな。試しに〝谷底のリング〟で検索してみろ。面白いものが見れるはずだ」
「面白いもの? ……なるほどそういうことね、これは確かに面白いわ」
検索フィルターを適用後、谷底のリングと表示されたアイテムはたったの三つ。
つまるところ、俺たちが偶然出品したアイテムは品薄状態にあったわけだ。
「供給が足りなければ需要が上がる。需要が上がれば価格も上がる。だからこうして多少、割高でも買い付けるやつがいるわけだ。場合によっちゃあ、もっと上がっても不思議じゃない」
「レアアイテムはドロップ率が低いからなおさらね。供給が一定じゃないから、時にはこんなことも起こるわけ。――いいじゃない、面白いわ。つまり運さえよければだれでも一攫千金のチャンスがあるのね。いよいよ冒険者って感じだわ!」
「そういうことだ。ダンジョンでどんなアイテムがドロップするかは、本当に運しだいだけどな」
何はともあれ、まとまった金が入ってこれでしばらく安泰だ。
コトハはレア武器を持ってるからいいとして、フィイは装備に不満がないのだろうか。
「フィイ、お前は欲しいものとかないのか? 武器とか防具とか」
「……」
「フィイ?」
声を掛けても反応がない。ちっちゃなシスターさんはオークションに病みつきのようで、「おあああ」とよく分からない声を上げながら画面を操作していた。
こいつ、やっぱり大人ぶってるだけの子供だな。
まあ楽しんでいるならよしとしよう。あとは安く買い叩ける武器でも探さないと。
お、これとかよさそうだな。ミスリルの直剣か。品数が多すぎて価格が暴落してる。こういう値が落ちてる物を漁るのも楽しみのひとつで――。
「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
とその時、けたたましい男のしゃがれ声が広場に鳴った。
「俺の――俺の〝谷底のリング〟が! クソ、もう少しで+10だったのによ! あああぁ、マジであり得ねえだろ畜生――ッ!」
男はそうとう堪えているようで、地面に突っ伏したり奇声を上げたりと、それはもう酷いありさまだった。あいつ……たぶんやったな。
「ねえどうしたの、あの人かなりヤバそうだけど」
コトハは顔をひきつらせている。さすがの彼女もどん引きのようだ。
「おおよそ〝強化に失敗〟したんだろう。装備はな、同じ装備を素材として〝強化〟することができるんだ。でもそれには成功確率があって、失敗したら消滅する。どんなに大枚をはたいた装備でも、一瞬で泡と消えるわけだ」
「それって要は、レアアイテムを強くしようとすると、さらにもう一つレアアイテムを消費するってこと? お金が溶けていきそうな苦行ね」
「まあ……実際に苦行だ。失敗するとああなる」
男は意気消沈と、くずおれたまま動く気配がまったくない。
谷底のリングって言ってたから、あいつが俺たちのアイテムを競り落としたのか。4.5mも払っておじゃんとは……総額でいくと30mは溶かしているだろう、つくづく笑えない。
しかも+10って言ってたから、多分+9まで成功してたんだろうな。あとひとつで完成だったのに……ご愁傷さまだ……。
3m……300万
4.5m……450万
5.5m……550万
30m……3000万







