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「うおらああああぁ!!」


 ルドラによる、気迫(きはく)に満ちたバトルアクスの振り降ろし。


 ただの通常攻撃に過ぎないが、(かす)っただけでも馬鹿にできないHPが持っていかれるだろう。なにせ俺と奴のLv差は50。ステータスの差を見てみると……



■ステータス状況

 アルト:体力20、筋力20、魔力25、知力20、幸運20

 ルドラ:体力93、筋力30、魔力1、知力30、幸運1



 はっきり言ってこの差はふざけているとしか思えない。HPで見ると7,300もの開きがある。これは倒そうと思うと、アレを発動させるしかないか。


「……っ!」


 大斧の()(はら)いを受けた俺は、たちまち壁の方まで吹き飛ばされてしまう。


 途轍(とてつ)もない衝撃だ。ゲームでなければ間違いなく即死しているだろう。


「アルト!!」


 コトハが叫ぶ。


 安心しろ、これはただの〝調整〟だ。外部からのバフは付与されない決闘のシステム上、自分で掛けられるバフは盛れるだけ盛っておかないと勝ちの目がない。


 これでステータスはウォークライで1.1倍、激震で1.5倍か……。


「おぉ、そのオーラはスキル〝激震〟か。よもやLv100の冒険者がそんな芸当をするとは驚いた。さては坊主、ただの冒険者じゃねえな?」


 俺の体を(まと)う赤の気勢(きぜい)を見て、ルドラが言った。


 さすがはLv150の冒険者。ある程度の強スキルは知っているらしい。


「決闘名誉は新米騎士のようだが……こいつは油断ならねえな。だったら隙すら与えず、さっさとけりをつけてやるぜぇ!」


 雄たけびを上げながら大斧を振り回すルドラだが、通常攻撃をするばかりでスキルはなかなか撃ってこない。こいつ、かなりの手練(てだ)れだな。


 ほとんどのスキルは発動後、硬直時間が発生する。つまり決闘で先出しするのはリスクが大きく、いかにスキルを撃たせるか、あるいは確実に命中させるかの駆け引きが勝敗を(きっ)する。


 そして何よりの焦点は、奴のメイン武器。


 大斧を振り回しちゃあいるが、こいつはかなりきな臭い。


 ハイランダー職は〝剣、槍、斧〟の三種を巧みに操作する。


 扱うメイン武器によって習得するスキルも変わってくる。よって大斧のスキルが来るかと思えば、次には剣を構えているかもしれない。インベントリから武器を取り換えるのにはコンマ一秒もかからない。こいつは曲者(くせもの)だ。


「おいどうした坊主、ビビってんのか? 早くスキルを撃ってこいよ!」


「それはこっちの台詞だ。でかいのは図体だけか?」


「はっ、笑わせてくれる。一丁前に決闘ごっこをしようなんざ、50Lv足んねえぞ坊主!」


 見せかけだけの怒声を上げて、冷静に通常攻撃を続けるルドラ。


 ダメだ、このままじゃ(らち)が明かない。とりあえずやってみるか。


「――うおおおぉぉ!」


 大斧の振りに合わせて、ロングソードを一閃する。


 キンッ。1ダメージ。いくら何でも堅すぎる。こいつどんだけ防御力を積んでるんだよ。こりゃあ〝等価交換〟を使ってもまともにダメージが通らないな。


 通常攻撃じゃなくて、スキルを使わないと。


「ガハハ、こりゃあひでえダメージだぜ。もう降伏したらどうだ? どうせあと一発もらったら終わりなんだ。(あらが)うだけ時間の無駄だろう?」


 もうかれこれ十分以上は回避に(てっ)していたその時、お喋りに(ふけ)るルドラが足を止める。


 1ダメージを見て気を緩めたのか、何にせよこれは好機だ。時間を稼げればアレを使えるかもしれない。


「さあな。まだ勝負は分からないと思うぞ」


「抜かせ、1ダメージでどうやって俺を倒すっていうんだ? まだHPはたんまりと残っているぜ」


「やりようはある。いくらでもな」


 言葉を交わしながら左手にマジックロッドを装備する。


「お、おいあれってよ……」


「ロッドと直剣だあ? そんな職業あったかよ?」


 左右に異なる職業の武器を装着した俺を見て、周りはますます騒ぎ出した。


「ほう……見慣れねえ職業名だとは思ったが、まさか隠しジョブか。それらのうち、どちらか或いは両方が坊主の本命だという……ああ、こいつは面白い」


 ルドラもまた興味深く、しかし慎重に俺の動向をうかがっている。


 だが――はたして次に来るスキルまでは想像できただろうか。


「な、なにぃ……これは!!」


 目を見開き、思わず立ち尽くすハイランダー。


 天井より飛来する十三の隕石は、どうあがいても集会場(ここ)で回避することは不可能な範囲攻撃。それは本来、アークメイジのみが使役できる上位スキルの――


「しゅーてぃんぐすたーー」


 パッと長杖を掲げた直後、どーん! 降り注ぐ流星が容赦(ようしゃ)なく男を蹂躙(じゅうりん)する。


「ひゃああああぁぁぁぁ!!?」


 一方で観戦していたコトハは自分も直撃しないか、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


 そんなに怖がらなくても、決闘時は建物にも他者にも、被害の判定は入らないから大丈夫なんだけど。いちおう後で謝っておこう。


「さあこれで決着……って、マジかよ」


 ぜえぜえと息を上げながらも、男は存命だった。HPがまだ100ほど残っている。


 こいつのスキル振り、さてはガチタンクだな?


「この程度でおれが、おれが……負けるわけねーだろうがぁ!」


 目玉を引ん()き、ルドラが武器を構え直す。


 インベントリから取り出した武器は盾と直剣、アレがやつの本命か。


「ルドラが耐えた! シューティングスターの準備時間は10秒、近づかれれば勝ち目はねえ、この勝負決まったぞ!」


 状況は外野の説明の通りである。今からまた流星を撃つような待機時間は望めない。


 それでも……近づかれたら危ないというのなら、近づかれなければいいだけだ。


「坊主――てめぇそれは!!?」


 咄嗟(とっさ)に取り出したのは、ひと張りのリカーブボウ。


 即座に矢を装填し、的を見据え、弓を引き絞る。


 悪いなルドラ、俺の本命は長杖による魔法攻撃()()じゃない。


 ――剣、弓、杖による物魔(ぶつま)混合(こんごう)攻撃だ。


「バウンスショット」


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