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ご覧いただきありがとうございます。タンクとアタッカーは喧嘩をする生き物……。
「えっと、きみたち大丈夫?」
モンスターの群れを一掃した後、彼らへと近づく。四人の冒険者たちは生気を失ったようにぐったりと地面に突っ伏し、あるいは仰向けになっていた。
「お、おれ、死んだかと思った……」
「それはこっちの台詞よ、ほんとうに焦ったんだから」
「しばらくレベリングはいっかなあ」
「おれが思うに、まずは作戦を練ってからだな――」
声をかけても四人のうち三人の冒険者は、こちらのことなど気づいてもいない様子だ。しかし、
「あなたが私たちを助けてくれたんですよね? おかげさまで何とか生き延びることができました。本当にありがとうございます」
ひとりの男だけはすぐに俺たちの前へと立って、頭を下げにきた。
男の職業はファイター系列のドラグーン。Lvは彼らの中で最高の79。彼――ラートがこのパーティーのリーダーと見受けられる。
「いえいえ、それほどでもないんだけど、もっとお礼してくれたっていいわよ――」
突然しゃしゃり出てきたコトハの口を強引にふさぐ。
最近は大人しくしていると思ったのに、こいつは……。
「悪い、聞かなかったことにしてくれ。こいつは仲間のコトハで、こっちの金髪がフィイ、俺は一応リーダーをやっているアルトだ。全員無事だったようで良かったよ」
「アルトさん、アルトさんですか……どこかで聞いたことのある名前ですね。たしか……」
顎に手をやっていたラートは一転、晴れた面持ちで手を合わせた。
「思い出しました! あなたがあのアルトさんですね!」
「えーっと、あのっていうとどのアルトなんだそれは?」
「あのアルトといったらあのアルトさんですよ! たった一日でLvを70上げ、フィールドボスをことごとくワンパンし、さらには銃弾をすべてパリィしただけでなく、ヴァーリルの谷底を初見一時間で制覇した、あのアルトさんですよね!?」
ラートが興奮気味にそう叫ぶと、後ろにいた三人がざわめき始める。
「おい、あいつがチートと噂の冒険者か!?」
「ねえ失礼じゃない、チートなんか使ってないって証言があったわよ」
「将来有望で引く手あまたらしいな。まったく羨ましいよ、俺も美少女に囲まれて侍らせる生活をしてみてえなあ」
最初のチート疑惑はともかくとして、最後の一言だけはいただけない。
俺がいつこいつらを侍らせたんだよ。だれだそんな噂を流した奴は!?
「――ここには偶然立ち寄ったんだ。少しのあいだ遠くから様子を見ていたけど、レベリングはいつもあんな感じなのか?」
ラートはバツが悪そうに首を縦に振った。
「ええ、これまでも何とかこの方法でやってきたんですが、ここのところずっと失敗続きで。もう少しLvをあげたらIDにと思っていたものの、この分だと難しそうです」
彼がレベリングの事情を明かすと、後ろの三人がまた言い合いを始めた。
確かにこの分だと難しいな。パーティーは連携を取ることが何よりも大事なのに、責任を押し付け合ってたら始まらない。少しテコ入れをしてあげるべきだろうか。
「なあ、お前たちはいったい何に悩んでるんだ?」
彼らに声を掛けてみると、まずメイジの女、ハルワがテオに指先を向けた。
「テオがいつも釣りすぎなのよ! ほんとうにちょっとずつでいいのに、何十ものモンスターを集めてくるもんだから、倒せるものも倒せないわ!」
「いいや違う、それは間違いだぞ!」
首を振りながらテオが口を挟む。
「この二人が火力不足なんだよ。ハルワとナッキがちゃんとダメージを出してくれたら、最高効率でレベリングできるのによ」
「なんだよ俺たちのせいかよテオ、それはさすがに酷すぎるぜ」
今度はナッキがやれやれと息を吐いた。
「だけど事実じゃないか? 現にアルトさんたちは簡単に一掃して――」
そして反発するテオ。直後に繰り返される、口論の応酬。
ううーん、このパーティーはけっこうな重症だな。基本的にタンクとアタッカーは、罪をなすりつけあうものだから、ありがちな光景っちゃありがちな光景なんだけど。
それでもお互い寄り添って改善点を見つけていかないとなあ。







