059(トルニヤ峠)
サクっと戦闘です!イベント消化していきます
「ここは〝トルニヤ峠〟と呼ばれる場所で適正Lvは71-80。フィールドボスもいないし、俺たちの敵になるようなモンスターはいないよ」
「それだといいんだけど……あ、ねえ、ちょっと見て。あそこなにか変じゃない? すごくたくさんのモンスターがいるわよ」
コトハの指さした先、そこにはひとつのパーティーと波のようなモンスターの群があった。戦闘に立つファイターの男がスキル〝挑発〟によって周囲のモンスターを根こそぎかき集めてきたのだろう。
これくらいのレベル帯となると、レベリング手段を身に着けている冒険者も多い。特段、驚くことでもないが……。
「さすがにアレは多すぎだな」
目に見えるモンスターの数は目視五十を超えている。加えてあちらのパーティーメンバーは四人。平均Lvは75。四人パーティーだと一度に集めるMOBは二十がせいぜい。とりわけ有利な条件があるわけでもないのに、いくらなんでも釣りすぎだ。
「ねえテオ、タゲを集めてとは言ったけど、ちょっとこれは多すぎよ! こんな数あつめてきても処理できないじゃない!」
「はあぁ!? そんなの知らねーよ、どうして先に言わなかったんだ!」
「いやいや普通あれだけのモンスターかき集めてくるか? あり得ないっしょ」
「お前ら言い争いしている場合か! 見ろモンスターの大群がもう目の前に!」
四人の冒険者はぎゃあぎゃあと罪を押し付け合うばかりで、まともに戦えていない。
何しろあの数だ、戦った瞬間にHPをもっていかれて即戦闘不能だろうな……。
「あの人たちはいったい何をしているの? アルトが〝挑発〟を使った時はスムーズに倒せていたのに。どうして戦わないのかしら」
逃げ惑う四人を見て、コトハは嘆息を漏らした。
「きっと慣れていないんだろう。実は〝ターゲットをまとめる〟のはそう簡単なことじゃない。スキル〝挑発〟の有効範囲とそれによって集まるMOBの数、そしてパーティーへと綺麗にまとめ上げる立ち回り、そういった複数の条件を把握していないと〝タンク〟は務まらない」
「へえぇ、じゃあやっぱりアルトは簡単に見えて実はすごいことをやっていたのね。わたしとレベリングしてた時は、いつもモンスターの数が一定だったもの。来る方向も揃ってたし」
「そういうことだ。偉そうに言うつもりはまったくないが、これがいわゆるPSの差だ。無造作に〝挑発〟を撃てばああなる」
人さまのレベリングにあまり首を突っ込みたくはないが、彼らのパーティーはいよいよマズイ状態に陥っていた。
いつまでも逃げ回り続けることで、彼らはさらに周囲の敵をおびきよせ、とんでもない数のモンスターを引き連れてしまっていたのだ。
とは言っても、ファイターの彼を責めるのはかわいそうだけどな。タンクもDPSも一朝一夕でマスターできるようなものでもないし、ああやって失敗を繰り返して覚えていくしかないんだ。……その過程で喧嘩が生じるのも、またMMOではあるんだけど。
「さあ行こう二人とも、あのまま放っておいたら全滅だろう」
「えぇ!? あのモンスターの海と戦いにいくの!?」
「さ、さすがにあれは多すぎないかねアルトくん……」
「大丈夫だって、俺を信じろ。――俺が〝シューティングスター〟で数を減らすからコトハは残党の始末を。フィイはバフと万が一に備えて〝リンカーネイション〟の準備をしてくれ。一気に片付けるぞ!」
はじめに〝挑発〟を発動して、モンスターのターゲットを俺へと集中させる。
その瞬間、モンスターの塊が一斉にこちらに向きなおった。……隣から聞こえた悲鳴は、いまは気にしないでおこう。
〝ウォークライ〟の発動も終わり、即座に装備をロングソードからロッドへと変更。
これで魔法職のスキルが発動可能だ。
「悟れ、地の審判者よ、戦きて其前へ喜べよ、ブレス!」
直後、フィイが唱え上げる。
アークマスターのスキル〝ブレス〟によるステータス増加効果も付与が完了。
HP調整をする暇もないため〝激震〟は未発動のまま、長杖を掲げて流星を放つ。
「シューティングスター!」
十三の隕石は蒼天の彼方より飛来すると、やにわにモンスターの群へと降り注ぐ。
大地を抉る破砕音、大気をどよもす断末魔――大海のごときモンスターたちを鏖殺するには、だが僅かにまだ遠い。
星々の目をかいくぐり猛進するモンスターたち。奴ら生き残りを仕留めんと二刀を佩いた少女がいま、藍色の長髪を揺らして佇立する。
そして訪れた〝百花繚乱〟
少女は押し寄せるモンスターたちにも動じず、ただ泰然と二口の刀剣を乱舞させ、迫る脅威を捌き切る。その直後、
「やあああああぁぁ!!」
ついぞ放たれた黒々とした斬撃が、直線状の全てを薙ぎ払う。
スキル〝横一文字〟
空間さえも切り裂いてのけるストライフの一太刀は、格下モンスターたちを一匹たりとも過つことなく片付けた。
かくして五十を超えるモンスターたちとの戦いは――俺たちの快勝で幕を閉じた。







