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「スキルポイントも貯まっているだろうけど、今は絶対に使うなよ。二次転職後のスキルの方が強いから、今取ると勿体ないことになる」
こっそりスキルツリーを開いているコトハに言う。
同時に、びくっと背筋を震わすコトハ。
目を離したすきに勝手をするのは相変わらずだな……。
「そ、そうね、どうせ取るならもっと強いスキルの方がいいもの」
「俺が言ってなかったら習得しそうな勢いだったけどな」
コトハがムッと口先を尖らせる。
「そんなことしないもん、わたしを何だと思ってるの?」
「いいやしてた絶対にしてた、お前の指先はいまスキル〝トリックブレイド〟に向いていただろ、なんならそのまま押下しそうだったけどな」
「し、しないってば! そういうアルトはどうなのよ? さっき変なシステム音が聞こえたけどもしかして取っちゃったんじゃない?」
「俺はファイター系列とマジシャン系列、すべてのスキルを習得可能だからな。スキルの強さで言えば、二次転職以上のものを取れるし、しぶる必要がないだけだ」
「む、むむむむ……」
言い返せず、ぷるぷると小刻みに震えるコトハは本当のところ何歳児なのだろうか。
これが齢十六の反応だとは思えない。
「ん?」
ピコンと、メッセージの着信通知を報せるサウンドが鳴る。
「どうしたのアルト?」
「いや……個チャがきたんだけど、ああ、なるほど。あの男か」
チャット画面を開いたら、そこにはシャミイという冒険者の名前が表示されている。
以前、いざこざがあったホルクスのパーティーのメイジだ。今さら連絡してきたということは、たぶん俺のID攻略方を実践した結果報告か。どれどれ、結果は……
〝シャミイ:アルトさん、お久しぶりですシャミイです。三日前、アルトさんが教えてくれた方法でIDを周ってみたんですが、お陰さまでかなりうまくいきました! まさか階段から安全に攻撃できるなんて……パーティーの仲もそれからだんだん良くなっていって、今では笑って過ごせる日々が続いてます。アルトさん、本当にありがとうございました!〟
とまあ、無事に周回できるようになったようだ。これでひとつのパーティー解散を防げたわけか。良かった良かった。
〝シャミイ:追伸、せめてものお返しと思ってアルトさんたちの良い噂を広めておきました! あなたたちはチーターでも何でもない本当の冒険者です。いちフレンドとしてこれからもご活躍を期待していますよ!〟
「……良い噂ってなんだ?」
気になりはしたものの、こっぱずかしい返答が来そうなので聞くに聞けない。まさか偉大なる最強の冒険者さまだとか、そういう大げさなことは言ってないよな?
「アルトの実力に気が付くなんて、見る目があるわねあいつ」
「真に実力のあるものは、必然的に頭角を現すもの。こうしてアルトくんは覇道を築き上げていくのだな」
どうしてコトハとフィイが合点しているのかはさておき、いよいよ次の地域が見えてきた。ここを乗り越えたら、闘争都市までもうすぐだ。
「アルトくん、新たな地域が見えてきたぞ。ここは……」
「緑も豊かになってきたし、いかにも山道って感じね。変なモンスターが出なければいいけど」
傾斜の険しい谷を越え、俺たちはいよいよ山脈を下る峠へと差し掛かっていた。







