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別パーティーから喧嘩を売られてしまいます。
「アルトアルト、これがいわゆるダンジョンへの入り口ってわけ? 魔法陣のように見えるけど、上に乗るとどうなるのかしら」
コトハが興味津々といった風に、足元のマジックサークルを指でつんつんしている。とても危ないのでやめて欲しい。
「それに乗るとIDの中に転送されるんだ。向こうに行ったら大量のモンスターがいて、進んでいくとボスと対面できる。倒せば経験値はもちろん、ドロップアイテムも入手できる。いいものがでるかどうかは、運ゲーだけどな」
「いいものか……願わくは武器が出て欲しいものだ。アルトくんの武器は未だに攻撃力1のロングソードだろう。それではこれから心もとない」
フィイが俺のプロフを見て言った。至極真っ当な意見である。
俺たちがこれから向かう先は適正Lv100のインスタンスダンジョン。今になっても駆け出し冒険者の街にいるような装備で行くなんて、舐めプに過ぎる。
「大丈夫だ、出発する前にノルナリヤでこれを買ってきた。バフもあることだし、モンスターを倒しきれる火力は十分に出るはずだ」
インベントリで温めていた長杖を取り出す。
〝マジックロッド〟
魔法攻撃力+10 魔法クリティカル発生率+2%、アイテム発生率+1%
特にこれといった特徴の無い基本的な魔職武器だが、これだけで十万ルクスした。クエスト報酬などでそこそこ稼げてはいたものの、手痛い出費である。
「なるほど、武器を拵えていたのか。それならロングソードよりも遥かに上等だろうが、剣に杖という組み合わせは極めて歪だ。レヴァーテインというジョブ名も初めて耳にする、前例のないジョブなのではないか」
たぶんそうだろう。ステータスの筋力と魔力を均等に配分することで発見できるジョブがあるなんて誰も考え付かない。俺がサブ垢でトロールしていた時に、偶然発見できたジョブだからな。どこの攻略サイトにも載ってない。
「おそらくな。――それとIDに入る前に、攻撃スキルを習得しておこうと思う。転職してからコトハもまだ取っていないだろ」
「それはそうだけど、わたしもうスキルポイントは残っていないわよ?」
コトハがスキルツリーを開いて、自分のポイントを確認する。残高は13ほど。
攻撃スキルは習得に多くのスキルポイントを必要とするため、それでは全然足りない。どんな攻撃スキルであれ、20から30は使うからな。だけど、今は関係ない。
「転職を終えると、ひとつだけ好きな攻撃スキルを取得できる〝ボーナス効果〟が付与される。だからポイントが足りなくても習得できるはずだ」
「なによそれ――それじゃあわたしが今までしてきた特訓は何だったの? 強いスキルが使えたら、もっと楽に倒せたのに!」
「だってそれだとPSが上がらないだろ。強いスキルでゴリ押しとかさ。ゴリ押しできない敵の場合はどうするんだよ。その時にこそ実力が現れるんだぞ」
「む、むむむ……ねえフィイはどう思う!?」
すがるような目で懇願された彼女は視線を逸らして、
「すまないコトハくん、知ってはいたが口止めをされていて。……つまりわたしもアルトくんに同意見だ」と、申し訳なさそうにコトハを突き放した。
「そんなの、そんなのあんまりじゃない! わたし頑張って、何回も倒れて、酷い目にあってきたのに!」
やや癇癪気味に、コトハは俺の体をゆすり始めた。
確かにちょっと意地悪だったかもしれないけど、それは酔うからやめてくれ……。
「おい、うるせえぞ! いつまで騒いでやがる!」
とその時、長弓の男が声を荒げた。
そう思うのならとっととIDに入ったらどうなのだろうか。その荒々しい態度からして、俺たちに怨みを持ってそうな感じがする。







