037
決闘終わりです!
新地域に向かいます!
「それで? 決闘には何を賭ける」
問われたヴァーティはしばし考え込むように、顎に手をやってから
「俺が勝ったら三十万ルクスとヤカテストスのドロップアイテムをすべて寄こしな。俺たちの報酬品をそのままにしておくわけにはいかねえからなぁ」
と、内心の欲望がありありと窺える欲求を口にした。
こいつやっぱり嫉妬してるだけじゃないか。報酬金だけならまだしもドロップアイテムも徴収の対象ってどういう理屈だよ。まあ争いの火種なんてそんなものか。
「いいだろう。では俺が勝った場合は先の暴言を撤回し、彼女たちにきちんと謝罪してもらおうか」
「謝罪だぁ? そんなもんを決闘の賭けにするなんて、いよいよ如何わしくなってきたな」
「何とでも言え。無論、この条件に腰が引けるというのなら話は別だが、どうする?」
ヴァーティは訝しげに目つきを細くした。
「くだらねえハッタリをかましやがる。言っておくが、これだけの大衆がいるんだ。インチキしようもんなら一発でバレるぜ。それこそ街を追い出される羽目になるだろうよ」
「いつまでもべらべらと。腰にぶら下げたそれは水鉄砲か? いいからさっさとかかってこい」
俺の小言がよほど気に障ったのか、男は顔に野太い血管を浮き上がらせた。
「いいぜやってやるよ――ならお望み通り芥子粒になっちまいなぁ!!」
憤怒の咆哮に合わせて、大気を切り裂いて駆ける二発の鉛。
ホルダーから拳銃を取り出し、狙いを定めて、引き金を絞る一連の動作に要した時間はわずか0.5秒。
俺以外の冒険者が相手であれば、それだけで決着していたに違いない。しかし、
「なに――ちょっ、え、はぁ!!?」
態度が一変、拳銃使いはみっともない声を上げてうろたえる。
俺がロングソードを横に一閃した時のことだった。
「どうしたガンスリンガー。手が止まっているようだが」
「ど……どうしたもこうしたも、てめぇいま、剣で、弾を!?」
「ああ、迫る脅威を払っただけだ。剣士の世界ではこれを〝パリィ〟と言う。覚えておくといい」
「――っ!!」
ヴァーティの顔色がさらに青くなる。それでも怖気づくことなく撃ち続けているのは、彼なりのプライドなんだろう。あっぱれだと賞賛を送りたい。
「ど、どう、どうして……そんなはずがねえ、すべての銃弾を弾くだなんて、そんな!」
男は五十を撃ち終えたところで、ついに心が折れたのか銃撃を止めて立ち尽くした。
あいつは俺が超人じみた反応速度を持つ化け物、あるいはチーターだとでも思っているんだろう。だが違う。これもまた知識と経験を使っただけに過ぎない。
この世界の銃は、地球の銃とそもそもが異なっている。性能上、銃なんて近代兵器を出してしまったら、武器や職業間でバランスの崩壊が起きる。
だからこそここでは銃の性能が〝調整〟されているんだ。
銃撃のモーションを開始として、銃弾が対象に到達する時間は、必ず0.5秒。そして、0.5秒経った後でなければ、再び銃撃モーションを取ることはできない。
つまりどうあがこうが、二丁の拳銃で、秒間四発しか撃てないということだ。
さらに銃弾はその弾道にもパターンがある。飛んでくる場所は無差別ではない。必ず対象の右わき腹と左胸部に飛んでくる。
タイミングと場所が分かっているのなら、どうということはない。俺はモーションが見えてから0.5秒後に、左右へと剣を払うのみ。それだけで俺は奴の銃撃すべてを〝パリィ〟してのける。
これがチートでも何でもないカラクリの正体だ。
「あぁ、あり得ねえ、銃が剣に負けるなんて、そんな!」
「――終わりだな」
すっかり戦意を喪失しているヴァーティを切っ先でつつく。
「あ、がっ……」
そうするとワンショット制により拳銃男はあっけなくダウン。
かくしてガンスリンガーとの決闘は終幕を迎える。
観衆が見届ける中で〝銃弾をすべてパリィする〟という偉業を成し遂げてしまった俺は、この街で真の実力者だと認められるようになってしまった。
新しい地域に向かいます!!面白いと感じて頂けたら★★★★★を押してくれると大変嬉しいです!
ちなみにですが、MMORPGでは意外と近代兵器モリモリです。爆撃機とかレーザー光線、核弾頭とかドローンまで何でもござれです。威力調整されてるので意外とそんなに強くないですけど。







