表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/216

032

MMOはバフゲー……。街に戻ります!転職したら一気に強くなる予定です。



「アルトくんの筋力が、とんでもないことになっているが――これはまさか!」


 フィイが俺の異常に気付いたようだ。


 スキル〝等価交換(とうかこうかん)〟は、一時的に自分のステータスを再分配することができる。


 現在各バフの恩恵(おんけい)によって俺のステータスは、


 体力40、筋力40、魔力40、知力28、幸運2


 ――これらのステータスのうち、知力以外のすべてを筋力に再分配すると――


「き、筋力119!!? こんなの化け物じゃない!?」


 コトハが俺のステータスを見て驚嘆(きょうたん)した。


 かたわらのフィイも信じられないと言いたげに立ち呆けている。だけどそろそろ最後の仕上げだ。アークマスターである彼女のスキルが、決定打となる。


「今だフィイ、奴にデバフを!」


「う……うむ!」


 フィイが咄嗟(とっさ)にロッドを構え直す。詠唱(えいしょう)は直後に、桜色の小さな口から(つむ)がれた。


(しゅ)よ、()(ため)()きて、我が敵の暴虐(ぼうぎゃく)に向かへ、(なんじ)が定めし審判(しんぱん)(もっ)て、我等萬民(われらばんみん)(たす)(たま)え――ティニルル!」


 解き放たれたスキル名に合わせて、ヤカテストスの体が薄紫色に発光する。デバフ状態にある奴は被ダメージが1.5倍。


 この間に盛りに盛った筋力でロングソードを叩きこむ。


「あとは――運ゲーだあああああああぁぁ!!!」


 唯一そのままにしておいたステータス〝知力〟は、クリティカル発生率を高めてくれる。


 現時点でクリ率は20パーセント強。そしてこの世界でのクリティカルダメージはなんと2倍。


 もし運を引き当てることができたのなら――HP5,000のフィールドボスでさえ、ワンパンのうちに仕留められる。


「――ッ!!」


 一、二、三、とたて続けに振るった斬撃の直後、モンスターの頭上に表記されるダメージの色は赤。それはこの土壇場(どたんば)で俺が20パーセントを引き当てたことを意味していた。


 クリティカルによって更に威力が増した結果――ダメージは圧巻の5,568。


 フィールドボスを余裕でオーバーキルする脅威の数字を、俺はスキルも使わずたかが通常攻撃で叩き出してしまった。


      ◇


「こんなの絶対におかしい、チートよチート! 今度こそアルトがインチキをしたわ!」


 フィールドボスのドロップアイテムを回収していると、コトハがそんなことを言ってきた。


「チートじゃないって。ちゃんとした計算式の上に基づいた正しい結果だよ。それにこれで俺たちはギルドに登録できるんだ。別に悪いことじゃないだろ」


「それはそうだけど……せっかく頑張ってコツコツ削ってたのに、こんなの意味がないじゃない。……今日こそは力になれるって思ってたのに」


 不貞腐(ふてくさ)れたように、コトハは()っぺたを(ふく)らませている。俺がワンパンで倒してしまったことをお気に召さないようだ。


 でも確かにコトハはけっこう頑張ってた。すぐダウンするかと思いきや、泣きながら必死になって戦ってたし。意外と彼女はファイターとしての素質があるのかも。


「そんなことない。コトハのおかげで時間が稼げたしすごく助かったよ。ありがとうな」


 (ねぎら)う意味で小さな頭に手を添える。彼女は特段、抵抗もせず……というかまんざらでもなさそうな顔をしている。もうちょっと撫で回してみよう。


「え、えっと、その……」


 するとコトハは反論もせず、もじもじと身じろぎし始めた。顔は火が出そうなくらい真っ赤になっている。


 まさか……尿意を(もよお)したのだろうか。さすがの俺も携帯式トイレは用意していない。というかそんなアイテムは売ってない。


「いいもん、いつかアルトの分までわたしが倒してあげるんだから!」


 そう言ってコトハは何やら(わめ)きつつ、どこかへと走り去ってしまった。


 あの反応を見るにやっぱりトイレだな。


「アルトくんよ、われも、われも頑張ったと思うのだが……」


 今度はフィイが釈然(しゃくぜん)としない目つきで訴えてきた。


「それは知ってるよ。フィイがいなかったらあそこまで早く倒せなかった。感謝してる」


「そ……そうじゃなくてだな、われも褒美(ほうび)(たまわ)りたいのだ。……ダメだろうか」


「褒美って?」


 聞き返しただけなのに、フィイは「ううぅ」と低い声で(うな)り始めた。心なしか睨まれてもいるような気がする。


 二人はいったい何なんだろうか。今日はコトハもフィイもちょっとおかしい。


「とりあえずクエストも終わったことだし、コトハを探しに行くか……」


 洞窟の中でうろうろしていた藍色髪(あいいろがみ)を回収して帰路(きろ)辿(たど)る。コトハの顔色はしばらく赤いままだった。


■ダメージソース[小数点切り上げ]はGUIDEにございますので興味ある方はそちらでご覧ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご愛読頂き有難うございます
星5評価ブクマレビューなどを頂けるととても嬉しいです。モチベーションが上がります。

ADRICAのMAPです(随時更新)。
MAP MAP MAP
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 等価交換という言葉の意味と、ステータス再分配というスキル内容がミスマッチかと
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ