027
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長い一日が終わりました。次話でクエストにいきます!
想定通り、ノルナリヤでの夜はひどかった。
「ねえ、ちょっと狭いんだけど、もう少しそっちに詰めてくれない?」
左側から聞こえてくるお姫さまの声と、
「アルトくんよ、このままではわれがベッドから落ちそうだ。申し訳ないのだが、幾ばくか詰めてはくれないだろうか」
右側から鳴る幼きシスターさんの声。
どうして俺は二人の少女から密着されているのだろうか。俺の記憶では、コトハとフィイが一緒に寝ようと言いだしたのが発端な気がする。決して俺によこしまな思いがあったわけじゃ――
「ちょ、ちょっと……ねえアルト、変なとこ触らないで」
身じろぎひとつせずにいると、コトハにジっと睨まれた。
ぴったりと体をくっつけてくるのは彼女なのに、どうして俺が文句をつけられているんだ。しかもこれといった感触を覚えちゃいない。
腕に伝ったせめてもの触感というと、板みたいにまっ平らなモノで……なにか触っただろうか。
「アルトくんきみも男の子なのは分かるが、こうも堂々と触られては、その」
続けざまに鳴るフィイの声。冤罪が冤罪を呼ぶ。
常に無表情だったお前がこの時に限っていかにも恥じらいのある顔をするのはやめろ。くっついてきたのもお前からだ。
しかもフィイはコトハと違っておそろしい凶器を持っているし、現にいまも当たっている感触がある。
これはとんでもない破壊力だ。圧倒的弾力感があまり、銀河系の星々ですら滅んでしまうかもしれない。
「俺、一切動いてないんですけど。あとコトハには別に何か触った感じもしないんですけど――」
途中まで言ったところで、左腕に激痛が走る。コトハに尋常じゃない握力でぎりぎりと握られていた。
痛みのあまり飛び起きようと思っても、動いた瞬間に俺は冤罪者ではなく本物の犯罪者になってしまうため、それはもうすごい思いで我慢した。
「アルトくん、アルトくん。コトハくんの方はということは、やはりわれに対しては何かしているという自覚があるのかね。別に嫌というわけではないが……むう……」
ここぞとばかりに揚げ足を取ってくるフィイには、もう小賢しいとしか言いようがない。
ええい、鎮まれ、鎮まるのだ! 余計なことを考えようものなら、俺はとんでもない状態異常に陥ってしまうだろう。
もしそんな有様を見られ神父に告げ口でもされれば、いよいよ変態だのロリコンだの言われてこの街から追い出されかねない。
ここはゲルフォント=シュナイダーの定理でも考えて……。
「閃いた」
頭によぎった超越数と共に、この場を打開する起死回生の一手が浮かび上がる。
よくよく考えてみれば、なにも同じベッドで寝る必要なんてないじゃないか。
寝床の外には雄大な土地が広がっている。……ただの床だろうと無粋なことは考えない。
この責め苦を脱出できるのなら、それはもう床ではなく理想郷なのだ。よし、勝機は見えた。
「どうしたのアルト、急にぶつぶつと言い出して」
「閃いた、閃いたんだよ。この窮地を脱してのける方法がな」
「えっと、アルトは何を言ってるの?」
「いいか、よく聞いてくれ。コトハもフィイも窮屈な思いをしているだろう。それはな、ひとり用のベッドに三人で寝ることがそもそもの無茶だったんだ。――というわけで俺はいまから床で寝る。二人は俺から離れて、ただちにこの密着状態を解いてくれ。いいな?」
決まった……俺の言い分にはまったく非の打ち所がない。これでようやく俺は煩わしい感触から解き放たれる。デカイのにも小さいのにも挟められるのはもうごめんだ。
「――そんなのダメよ。冒険者が床に伏すのは死ぬ時だけって言われてるのに、そんな縁起でもないこと許せないわ!」
「同感だ。われらの女神様も床で寝ることは死者も同然だと言っている。ノルナリヤ大聖堂に伝わる詩篇の第二聖詠を覚えていないのかね」
二人はかつてない真剣な眼差しで俺に訴えかけてきた。
ADRICAで知らないものは無いと思っていたが、どうやらこの世界には俺の知らない礼儀がまだまだあるらしい。
「そう……なんだな」
ベッドから抜け出すのは無理だろう。決して邪念が込み上げてこないように、心の中でマントラを唱えた。







