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 カーリグルとの一件から数日。


 俺たちは順調に日課をこなしていた。やることと言えばIDバステウス浜辺のクリアと、舞い込んできたギルドクエストの達成。Lv190からLv200の間は経験値テーブルが急激に跳ね上がる。しばらくは根気よくレベリングを続けていく必要があるだろう。


 この日も無事に日課が終了。居間のソファーでくつろいでいると、リズがとててと駆けだしてきた。


「おにいちゃんおにいちゃん。次のエリアにはいついくの?」


「次のエリアと言うと――タウティア開拓地か。あそこは大して用も無いし素通りかな。モンスターはいるけど経験値的に美味しくない」


「なら早く次の都市へ行きましょうよ。新しい都市がわたしたちを待っているわ!」


 どこからともなくコトハが湧いてきた。


「Lv200にならないと入れないって言っただろ。あそこはバルドレイヤと一緒でLv制限があるんだって」


「でもでも、レベリングは一日一回のIDだけだし……他に効率のいい狩場はないのかしら。初めの頃みたいにID以外であったらいいのに」


 コトハがムッと頬を膨らませた。


 一応レベリングに最適な狩場はあるが――そこはキルゾーンが適用されている。俺だけならともかくみんなの命を懸けてまでレベリングはしたくない。


「まあ時間ができたと捉えようぜ。日課が少ない分、他のことに時間を回せるわけだし」


「他のことって?」


「たとえばそうだなあ……ギルドメンバーの勧誘とかどうだろう。うちにはデバフ特化のジョブがいないって話を覚えているか? せっかく時間が余ってることだし探してみてもいいかもしれない」


 電子パネルを展開して〝ギルド情報〟タブを選択。ギルドのステータスが表示された。


 ギルドレベルだったりギルド名だったり、様々な情報が載っている。が、それらは今ここで必要な情報ではない。俺が知りたいのは〝ギルド加入申請者〟だ。


 バルドレイヤではそこそこ名が売れてしまったため、俺たちのギルドに入りたいと加入申請してくる者が後を絶たない。特に拒否もせず承諾もせずいた結果、現在の加入申請数は三百オーバー。これだけあればデバッファーもいるだろう。勧誘というより厳選だな。


 ちなみにギルドへの加入申請は同じく〝ギルド情報〟から手続きできる。ギルド名検索から探せたり、レベル順実績順などでソートも可能だ。


「アルトくんはどのようなジョブを探しているのだ?」


 いつの間にか右隣にフィイが腰掛けていた。左隣にはペルの姿も見える。


「目星はまだつけてないよ。けど有用そうなジョブがいたらひとまず面接を――」


「め、面接……ギルドに加入するためには面接しなくてはならないのだ!?」


 ペルが大声を上げた。


「なるべく自分たちとあう人材を探そうと思ったら、必要かな。やってないとこも勿論あるけど、たとえば出入り自由のギルドとか。でも長期滞在して欲しいとこだとほとんどやってると思う。空気感とか人柄ってどうしても話してみないと分かんないし」


「随分と大ごとなのね。でも片っ端から面接してたらいくら時間があっても足りないわよ? 申請数がすごいもの」


 コトハが頭上からひょこっと顔を出して言った。


「だな。一応デバフを持ってるジョブだけに厳選した方が――」


「あら、年齢でソートは掛けないのかしら」


「……なぜ?」


「アルトのことだから十二歳以下じゃないと面接の対象にならないのよね」


 お前は俺を何だと思っているのか。そんなことを真顔で言うんじゃない。


「人をロリコン呼ばわりするな。俺は至って健全だぞ」


「え? でも毎日一緒にお風呂で――」


「お、おおおおぉぉお前たちが勝手に入ってきてんだろうがぁ!! しかもこちとら余計なことはいっっさいしてない! 冤罪(えんざい)にもほどがあるぞ!」


「リズの着替えは手伝ってあげてるのに?」


 それに関してはノーコメントで対応させてもらおう。なにぶん放っておくとマッパで駆け出す有様なので仕方ないのである。


「しかしだなアルトくん、毎朝起きると密着していて苦しいのだが……あれはどういうつもりだろうか……」


 今度はシスターさまが良からぬことを言い出した。


「それはむしろ俺のセリフだ。どうして俺の部屋の俺のベッドで朝起きると五人が寝ているんだ? 俺は知らないうちに召喚スキルを習得していたのか?」


「ククク……お兄さまの内なるネクロマンサーが(うず)いているのだ。いずれは我と共に死霊への道を歩む者、今の内に実感を噛みしめておくとよいであろう……」


 ペルがまた厨二臭いことを言い始めた。無視だ無視。「ふええぇ……」なんて構って欲しそうな声が聞こえるが気にしない。こら、(そで)を引っ張るんじゃない。


「ええい、今はそういう話をしているんじゃない。本題に戻るが――」


「ごまかしたわね」


「ごまかしたのだ」


「ごまかしてる!」


「ごまかしておるな」


 あられもない非難が飛び交い始めた。物凄い数の視線を感じるがもう知らん、知らんよ俺は。まともに相手をしてると余裕で日が暮れてしまう。さっさと仕事に取り掛かろう。


「――ひとまずはこんなものかな。だいぶ数が絞れたと思う」


 三百を超える申請数のうち、目ぼしいジョブを割だしたところ二十くらいにまで減少した。断った方には悪いけど、またの機会ということで。


「俺ひとりでやってもいいんだけど、できればもうひとり来て欲しい。一対一は相手が緊張しちゃうだろうからさ」


「おにいちゃん、面接ってどんな感じでやるの? もし練習できるならリズはやってみたいかなって!」


 リズが俺のひざ上に乗っかって言った。


「たぶん思ってるよりかは堅苦しくない。ラフな感じでいいんだけど……そうだな一度試してみるか。やってみないと分からないだろうし」


 俺が面接の練習をすると言ったら、リズに続いて彼女たちが次々と挙手した。俺が面接する側で彼女たちがされる側。奇妙な予行練習の始まりである。


※出入り自由ギルドとは……いつ抜けても入っても自由なゆるゆるプレイを軸としたギルドのこと。

PCゲーのRPGならギルド加入でたいてい面接が……。

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