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コトハさんのオリジナルイラスト完成しました。色塗り直してたらかなり遅れてしまいました。002,003の挿絵、または目次・各話の下に画像として載せてあります。割と可愛く描けた気はしますので興味ございましたらご覧ください。線画から色塗りまで全部オリジナルです。
「やあ君たち。ちょっと疑問に思っていることがあるんだけど聞いてもいいかい?」
カーリグルがモデル歩きで近づいてきた。視線は俺の後ろに向けられている。君たちとは俺を除いたコトハらのことらしい。
「見たところ君たちも冒険者のようだね。知っているかい、レベリングや装備をより効率的に集めるには、より強い者と組んだ方がいいんだ。君たちはそこの彼と組んでいるようだが……とても見合っているとは言えない。
そこでだ、もし良かったら僕のパーティーに入らないか? 待遇はもちろん良くするしドロップアイテムも優先的に渡すよ。何て言ったって僕は210Lvの冒険者だからね。装備は一通り揃ってるし、必要なものがないのさ」
すまし顔のカーリグルはやけに饒舌だ。マナー違反であるパーティーメンバーの引き抜きを、白昼堂々とやってのけるとは驚愕に値する。
彼は強ければ何をしてもいいと、本心から思っているんだろう。でなければこんな無礼な行為はとてもできやしない。
「さあ、これはお近づきの印に。奇麗な君たちにぴったりだと思うよ」
カーリグルは懐から数本の薔薇を取り出した。一本ずつ彼女たちに配っていく。
今どきこんなアプローチをする奴がいるのかよ。しかもMMO世界で。
『……』
配られた薔薇をコトハは受け取った瞬間に握りつぶし、フィイは聖水をかけて浄化させ、リズはバーナーで火あぶりにすると、ペルはケルベロスに丸のみさせた。
満場一致の拒絶である。
「はは、そう照れなくてもいいのに。でも謙虚な子も悪くないね」
勘違い男がきらりと白い歯を見せる。
その瞬間、四人の少女たちが完全武装し始めた。立ち込める殺気が尋常じゃない。
「なあカーリグル、一旦話を戻さないか。俺は実力主義的な考えは良くないと思っているし、それを誰かに押しつけるのも良くないと思う。メルとアッシュにも悪い影響を及ぼしているんじゃないかな」
しかし俺が訴えても彼は目も合わせようとしない。果てには――
「礼は?」
「えっと……礼って?」
「しらばっくれるなよ、礼は礼に決まっている。この僕が話しかけてやったんだぞ、そして会話もしてやっている。話を聞いて欲しいのなら、まずは目上の僕に対するお礼が必要じゃないのか?」
カーリグルは見下した態度で吐き捨てた。
こうなったらもう交渉の余地はないな。穏便に解決しようと思うだけ無駄だろう。何よりコトハたちの顔つきが凄いことになっている。飛び掛かる前に手を打たないと。
「誰がどう目上だって? 悪いが俺にはあんたがそこまで強いようには見えない」
言い差した直後、カーリグルの両目がぎろりと見開く。
「何をふざけたことを。低俗すぎてLv差も理解できないのかい?」
「たったの20だろ。20程度で優劣をつける馬鹿がどこにいる。四捨五入したら零だぜ」
「十の位で四捨五入するな!! ええい鬱陶しい低Lvめ、そんなに愚かだと説得するだけ時間の無駄だ! 君がどれくらい間抜けかってことを、直に分からせてやる!」
そらきた。揉めるとすぐに勝負事に発展とはいかにも実力主義者らしい。
「もちろんだ受けて立とう。それでどう分からせてくれるつもりだ? 腕前を競うスタンダードな方法だとやはり決闘が――」
「TAだ。決闘なんて下らない、一流の冒険者ならTAで競うべきだ」
カーリグルが即答した。
まさかここに来てその勝負を受けることになるとは。どのIDのTAかは知らないが、面白い勝負になりそうだ。
・パーティー引き抜きとお礼のくだり実話です。オンゲーの界隈によっては有名な話かもしれません。「俺さまが話しかけてやったんだからお礼しろ」とんでもプレイヤーです。