018
次で終戦です。主人公がその強さの理由を見せつけます
「さあ潔く負けを認めてコトハに謝れ。俺たちはそういう約束だろ」
「アルト――」
後ろの方で暗い顔をしていた彼女は一転、俺の手を取って満面を咲かせた。
反対にダグニアの面貌はみにくく歪むばかり。まさに爆発寸前である。
「く、くそが……舐めやがって、許さんぞこのクソガキども!!」
男は怒りに任せて背中から特大剣を取り出した。次にこいつが何て言うかなんて安易に想像できる。きっとこいつは決闘――
「決闘だ坊主! この俺さまと決闘しやがれ!」
思った通りの怒声の直後、眼前に〝決闘申請〟画面が表示された。ダグニアは本気で俺とのタイマンを望んでいるみたいだ。
「負けを認めたくないからその腹いせにって……つくづく呆れる男だ」
「なんだなんだ? まさか俺との決闘が怖くて逃げようって腹か?」
「勘違いしてるみたいだが、取り消すなら今の内だ。俺はPVPも極めたカンスト勢、決闘名誉は〝騎士団長Ⅻ〟に到達した。お前程度じゃ話にならない」
「ハッ……とんだ見栄っ張りだな。騎士団長だって? お前のプロフには〝新米騎士〟って書かれているじゃねえか、くだらねえハッタリだ!」
ガハハと大笑するダグニアには、諭そうとするだけ無駄だろう。引くつもりもないみたいだしこうなれば実力行使だ。
「ルールは〝一本勝負、今のMAPを適用、消費アイテムの使用不可〟で異存ないな」
俺の提案にダグニアは頷く。
「ああもちろん、オーソドックスが一番だ。HPが尽きた方の負け……分かりやすくぶちのめせる」
「そうか――だったら問題ない」
決闘申請の〝承諾〟ボタンを押すと、いよいよタイマンが始まった。そして沸き立つ大衆の声。やってやれだの、しばき倒せだの物騒な声が絶え間なく鳴っている。
「アルト――勝って!」
そんな中、唯一、俺を応援する声が響いた。
言われなくても分かっているさ、この手のタイプは徹底的に分からせないといけない――だから俺はこの決闘で〝たった一度もスキルを使わない〟縛りプレイで挑んでやる。
「いつまで突っ立ってるつもりだ坊主、そんなに死にたいのならとっととくたばっちまえ!」
ダグニアの咆哮の後、いよいよ怒涛の攻撃が始まった。
鋭い振りの斬撃、刺突のみならず、ファイターのスキルを駆使した衝撃波や波動攻撃の数々が襲い掛かる。奴の殺意は本物のようで、どれもが容赦のない一撃だ。しかし、
「お、おい、何か様子が変じゃねえか?」
「ああ、妙だな。どれだけ振ってもダグニアの攻撃がまるで当たらねえ。避けているというより、あらかじめ次の攻撃が分かっているみたいだ」
「それならあいつはまさか第六感を使っているのか!?」
一向に当たらない攻撃を見て、周りがざわめき始めた。実際はモーションを見て後からくる攻撃を先回りして躱してるだけなんだけど、どうも周りの奴らはこれが超常現象みたいに見えるようだ。
「くそ、くそ、どうして当たらねえ、てめえやっぱりチート使ってるだろ! こんなの絶対におかしい、あり得ねえ!」
当初の威勢はどこ吹く風で、ダグニアはすっかり焦りの色を見せ始めていた。見立て通りこいつは口だけで〝決闘慣れ〟していないな。
「お前は決闘の何たるかをまるで分かっていない、そんなのじゃ当たらなくて当然だ」
「なにを――ほざけこのチート野郎が!」
いくら憤激しようが、ダグニアの攻撃は空振りに終わる。そろそろ可哀想だし、種明かしをしてやるか。