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「ええ、はい――後はこちらで処置いたしますので、この度はほんとうにありがとうございました」


 ぺこりと受付嬢のお姉さんがおじぎをする。


 地下洞(ちかどう)から帰還した俺たちは、バルドレイヤのギルドに来た。


 悪意のあるMPK行為をしていたヘズシルたちを連れていくと、彼らの悪行の数々が判明。これまでにも困ったふりをして多くの冒険者たちを罠にはめていたのだと言う。


 彼らはケベル同様にギルドから登録を抹消された。さらには都市を追放されたことだし、今後はクエストも受けられないだろう。自業自得だ。


「アルトさん、この度は誠にありがとうございました! ヘズシルたちに騙された時はいったいどうなることかと思いましたが――こうして装備が戻ってきて嬉しい限りです!」


 もう夜遅くだと言うのに、多くの冒険者たちが俺たちの周りに集まっている。


 ヘズシルらが不正に集めたアイテムを元の持ち主へと返した結果、このような大事(おおごと)に発展してしまった。


「礼なら彼女たちにも言ってくれ、俺だけの成果じゃないんだしさ」


「おっしゃる通りですね! コトハさん、フィイさん、リズさん、わたしたちの装備を取り返していただきありがとうございます!」


 深々と頭を下げる彼らを前に、


「いいのよ、そんなに大したことじゃないから」


「うむ。非道な賊どもに(ちゅう)を下しただけなのだ」


「えへへ、ちからになれたのならリズもうれしいな」


 三人はぎこちなく照れ笑いしている。謙虚(けんきょ)な対応ながらもまんざらではなさそうだ。


「すまねえな恩人、また手を(わずら)わせちまってよ」


 聞きなれた男の声が鳴る。


 よくよく見ると冒険者の中には、ウルクたちがいた。


「まさかウルクも被害に遭ってたなんてな」


「ほんと情けねえ話だよ。レアアイテムにそそのかされちまって、鉱山までは良かったんだが地下洞まで潜り込んじまった。欲に目がくらむとろくなことがねえ」


「それは確かにそうだけど悪いのは騙す側さ。決して被害者の側じゃない」


「はは、そう言ってくれると嬉しいねえ。何にせよ恩人には助けられてばかりだ。この埋め合わせは必ずどこかでさせてもらうぜ」


「その時を楽しみに待っているよ。もしまた何かあったら気軽に相談して欲しい」


 ウルクと首肯(しゅこう)を交わしてその場を後にする。もう少しみんなと話していたかったけど、へとへとだ。いい加減ギルドハウスに帰りたい。


「ここのところトラブルが絶えないわね。MPKだの横殴りだのって、みんなもっと仲良くできないのかしら」


 帰り道でコトハがぽつりと言った。口元はムッときつく結われている。彼女は誠実な性分のため、ああいう輩が許せないのだろう。


「もっともな考えだと思うよ。でもズルをしたり誰かの邪魔をすることに快楽を見いだす下賤(げせん)な輩は、一定数存在する。そういうのがいなくなればトラブルも起きないんだろうけど、難しい問題だな」


「ええ。ほんとうに」


 ふとコトハと同じタイミングでため息をつく。彼女とも馬が合ってきたかもしれない


「――肝心のギルドクエストはどうなったのだ? ほとりで黄金のアジサイを集める予定だったと思うのだが」


 フィイが言った。


「それならさっき納品してきたよ。たまたまヘズシルたちからドロップしたんだ。やけに無いと思ってたらどうもあいつらがガメていたらしい」


「つまり今回もクエスト達成ってことね! もうそろそろギルドのレベルも上がってくる頃合いかしら」


「まだまだだよ、そんなにすぐ上がるほど甘くはない。クエスト自体、低難易度のものばかりだしな」


「もうそろそろむずかしいクエストがきてもいいのにね。リズは調査や採集以外のクエストがしたいかな! たとえばドラゴンさんのとうばつとか!」


「それは……だいぶあとの話になりそうだな……」


 会話中、ピコンと軽快な通知音が鳴る。個人チャットのようだ。差出人は……


『ペルケドラ:我を置いてけぼりにしてみんなでクエストなんて酷いではないか! もしも明日、我を誘わなかった場合、世界は深淵に呑まれるであろう! 分かったら次は絶対に誘うのだあああ!』


 厨二少女が……とってもご不満らしい。緊急時だから仕方なかったという言い訳は通用するだろうか。


「あのねおにいちゃん、さっきねギルドのお姉さんからこんなものをもらったの! もしかして新しいクエストなのかな」


 リズが一通の封筒を寄こす。中身は見るまでもなくクエストの依頼だろう。


 それを見た瞬間、コトハとフィイが騒ぎだした。きっとペルがいれば彼女もはしゃいでいるに違いない。


 ギルドクエストを受けるかどうかは、ギルドマスターの俺が決定できる。


 だけど選択肢はひとつしかない。答えはもちろんイエスだ。


「次のクエストも受けよう」


 俺がそう言った途端、彼女たちはなおいっそう喜んだ。


 黄色い声を上げながらこちらに――ってよせ、抱きついてくるんじゃなぁい!!


「……ああ、視線が痛い」


 結局俺はギルドハウスに着くまで、彼女たちを引きずりながら歩いていった。


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