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「やああああぁぁ!」


 襲い掛かってくるモンスターたちを、コトハが次々と処理していく。


 長杖を持ち魔法攻撃を得意とするバンシー、四足歩行で走る獣の巨人スプリガン、短刀を(たずさ)えた半透明の生霊(いきりょう)レイス。どれもがLv170台の格下モンスターだ。


 たとえ群れで襲い掛かろうとも、コトハにはまるで敵わない。フィイとリズからバフを受けて、更には能力上昇の特殊ポーションをがぶ飲みしていることもあり、恐るべき殲滅力を誇っている。まさしく狂戦士と呼ぶに相応(ふさわ)しい働きだ。


「IDのモンスターと比べると、Lvほど大した相手じゃないわね」


 一通り片付いたところでコトハが言った。


「インスタンスダンジョン内のモンスターは、外の一般モンスターよりステータスが高めだからな。同Lvでも能力値がダブルスコアなことなんてザラにある」


「だからやつらは経験値やドロップアイテムが優れているのだな。皆こぞってID周回するわけなのだ」


 フィイはステータス情報欄の経験値バーを見ている。モンスターを一掃(いっそう)してもゲージがほとんど変動していないことに気づいたようだ。


「狩りでのレベリングが成り立つのは、本当に湧きが多いところだけだ。基本的にはID周回が一番効率がいい。一部例外もあるけどな」


 フロアの半ばまで進むとMOBのバリエーションが一新した。


 赤褐色(せきかっしょく)の肌を持つレッドゴブリン、岩のように堅い皮膚の巨人トロール、どちらも肉弾戦に特化したMOBだ。特殊な攻撃をしてこない代わりに攻撃力がずば抜けて高い。


 そろそろ松明係(たいまつがかり)は退職して、俺も戦うべき頃合いか。


「大丈夫よ、ここはわたしに任せて。全部やっつけてみせるから」


 武器を取り出す俺を見て、コトハが言った。


 まさか彼女にそう言ってもらえる日がくるとは。当初の頃を思い返すと感慨深い。


「――けっこう進んだはずだけど、ヘズシルさんたちの荷物はどこなのかな」


 リズがきょろきょろと辺りを見渡している。


 ここまで何も無いというのは不思議な話だ。そろそろ手掛かりくらいあってもよさそうなものだが……まさか本当に最下層に置いてきたのだろうか。彼らのLvでそこまで行くとは、命知らずだとしか言いようがない。


「どうしたのアルト?」


「いや……いま後ろから足音が聞こえた気が……」


「こんな時間に来る冒険者なんて、わたしたち以外にいないわよ。どうせモンスターの足音じゃないの?」


「それもそうだな。……深く考えすぎかもしれない」


 B1の探索もいよいよ終わり、残すところB2のみとなった。B1同様、崖際(がけぎわ)に掛けられた梯子(はしご)(くだ)っていけば到着だ。


「警告 この先のエリアはPK(ピーケー)が適用されていますのでご注意ください」


 最下層に降りる直前、眼前に展開された警告画面をフィイが読み上げた。


「なにやら危険な臭いがするわね……PKってなにかしら?」


「プレイヤーキルの略称だよ。PKが適用されたエリアでは、冒険者同士に当たり判定が付与される。要は常に決闘状態って感じだな。他のパーティーは全て敵とみなされる」


「とんでもなく物騒(ぶっそう)なエリアなのだ。そんな場所に行かなくてはならないとは」


「周りにはいっぱいモンスターさんがいるから、もし争いになっちゃったらふつうの決闘よりもむずかしいことになりそうだね」


 PKエリアの面倒くささが無事みんなにも伝わったようだ。


 モンスターと戦いながら冒険者とも戦闘なんてダルイどころの話じゃない。もちろん一帯にはデスペナルティも適用されているし、ダウンすればルクス、経験値、アイテムを失う。細心の注意を払わなければいけない。


 俺がずっと抱えていた不安の原因はこれだろう。大した用も無いから前作じゃ滅多にこなかったメルクス地下洞のB2はPKが適用されている。万が一、面倒くさい冒険者に絡まれでもすれば一大事だ。


「だからって今さら引き返すつもりはないわよ。絶対にアイテムを取り戻すってヘズシルさんたちと約束したんだから!」


 コトハの啖呵(たんか)にフィイとリズが頷く。――覚悟が決まってるなら続行だな。


 俺たちは警告文を無視して地下洞の最深部へと踏み入った。


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