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 ひと段落ついたところで俺たちは森の入り口に帰還した。


 ベスクさんの救助だけでなく、エリートモンスターの討伐にアイテムの収集にと、もろもろをやったおかげでエイザさんは大喜び。これで彼女は安心して町までいけるそうだ。


 一方で俺たちは日没まで森の探索(たんさく)を進めた。明日には次のエリアに着くだろう。はやく新たなインスタンスダンジョンでレベリングしたいところだ。


「ククク……舞い戻ったかお兄さまよ」


 ギルドハウスに戻ると、ペルが俺たちを出迎えた。手には二通の封筒が握られている。


 差出人は――都市のバルドレイヤだ


「郵便受けに封筒が入っていたのだ。宛先はギルドマスターとなっている。暗黒界からの招待状かもしれぬゆえ、是非ともお兄さまに一読して欲しいのだ」


 間違いなくそんな招待ではないが、内容は気になるところだ。……ツッコミもせずに無視していると、彼女から構って欲しそうに見つめられる。ええいあとでだ、おしゃべりはあとでにしよう。


「えーっと手紙は――ギルドについての説明がひとつで、もうひとつはギルドクエストについてだな。ちょうど依頼が一件添付(てんぷ)されてきている」


『ギルドクエスト?』


 聞きなれないであろう単語に、ギルメンたちが声を揃えた。


「表では出回らないクエストだよ。ギルド専用のクエストで、こなしていくとギルドのレベルが上がる。高レベルギルドになると報酬が良くなったり、ギルドに名前を付けることができるんだ。あとはギルド同士での対抗戦に出場できる権利が得られたりとか」


「なんだかすごく面白そうね。ねえアルト、わたしたちはまだクエストの経験があんまりないんだし、受けてみてもいいんじゃない?」


 コトハがすかさず声を上げた。よほど今日の採集クエストが楽しかったんだろう。またやりたいと態度に出ている。


「おにいちゃん、リズもクエストやりたい!」


 最年少の彼女が手を挙げると


「ギルドの名誉を挙げるチャンスなのだ。われも挑戦したい」


「ククク、闇の依頼とは酔狂(すいきょう)なものよ。是非とも受けて立とうではないか」


 フィイとペルもまた同意する。


 ギルドはメンバー全員が団結していなければならない。俺はクエストよりもレベリングを優先したいものの、それじゃあギルドマスターとして失格だ。どうにかしてギルメンの要望に応えたいところだが……。


「ちょうどおあつらえ向きのクエストがきてた。〝ギルドクエスト 結晶の海岸調査〟内容は危険なモンスターが出現していないか見て回るだけ。俺たちの進路的にもぴったりじゃないかな」


 そう伝えた途端、彼女たちの顔色がパアっと明るくなった。みんな大げさにはしゃいでいる。――この反応を見れただけでもゴーサインを出してよかった。


「でもあれよね、ただの調査だけなんて物足りないわ。わたしたちには実績があるのに。報酬もたったの100ルクスでいかにも初心者向けって感じじゃない」


 コトハの主張はやや図々しくも正論だ。ただの調査なんて、本来は駆け出し冒険者がやるような低難易度クエストである。


「しょうがないさ、個人としての実績があってもギルドとしてはまだまだなんだから。ギルドレベルを上げていれば、そのうち高難易度の依頼がくるよ」


「ねえねえおにいちゃん、ギルドのレベルっていくつまであるの?」


 きょとんとした顔でリズが言った。


「最低が1で最高が5。クエストをクリアすることによってギルドにポイントが加算されていく。ギルドに名前を付けれるのは3からだ。Lv3からちゃんとしたギルドと見なされることが多い」


 電子パネルを操作して〝ギルド情報〟を表示する。


 俺たちのギルドはポイント0、実績0、レベル1、ギルド名No10057という愛想もない状態だ。ギルドとは冒険者にとってメンツでもあり重要なステータスでもある。


 さすがにギルドを建てた以上、ずっと放置というわけにはいかない。コツコツと頑張って一流のギルドにしないと。


「みんな、絶対にわたしたちのギルドを世界で一番にするわよ!」


 コトハが威勢(いせい)よく切り出すと、彼女たちも大声をあげる。


 微笑ましい光景だ。俺も右手を突き上げて叫んだ。


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