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 決闘で勝利したことによって、タウパーティーたちの装備やアイテムがドロップした。幸いなことはテミルパーティーから奪ったモノが多かったことだろう。ほぼほぼ俺たちが取り返すような形になって、ドロップ品はテミルパーティーへと返却。


 両パーティーが目を覚ますまで十二時間。バルドレイヤで意識を取り戻したタウ一行(いっこう)は突然、頭を地べたに擦りつけると、


『本当に――すみませんでした!』


 先の非礼について詫びた。態度が一変しすぎてちょっと理解に苦しむ。彼らにいったいどんな心境の変化があったんだろう。


「えーっと……君たちは悪いことをしてたっていう自覚はあったのか?」


 タウが首を横に振った。


「悪いことなんてそんな。だけどあんたたちの名前を見て気づいたんです。アルトさんにコトハさん、フィイさんにリズさん……どれもレイドボスの討伐に大きく貢献した大英雄さまじゃないですか。しかもアルトさんは都市戦の優勝者。そんな名高い方に喧嘩を売ってしまったなんて……それこそ笑い物にされてしまいますよ」


 タウの発言を(かんが)みるに、彼は行い自体が悪いとは思っておらず、俺たちが有名人だから謝ったということか。――それじゃあ一件の根本的な解決にはならないな。


「あくまで俺の個人的な意見だけど、実力主義的な考えは好きじゃない。強いから偉いとか、有名人だから謝るとかそういうんじゃなくてさ。タウたちはもっと謙虚(けんきょ)になるべきじゃないかな。自分よりも格下な相手には、何でもしていいわけじゃないぞ」


「でも、冒険者は力が全てじゃないですか。狩場だってそうですよ。狩場はより優れたパーティーに明け渡すべきです」


 差別的な発言をさらりと言ってしまうタウは本気なんだろう。つまり弱者にはエリアを踏む価値すら無いと。俺も一時期、拗らせていた考えなだけによく分かる。


「タウ、それは絶対に間違いだ」


「なっ――」


 彼の目が大きく見開く。いかにもどうしてと言いたげな顔だった。


「俺たちは常に平等だ、力の大きさは関係ない。仮に強者だけがクエストを受けられる、レベリングできる環境を想像してみろ。そんなことになったら絶対に引退者が続出する。タウは無人と化した街やフィールドを見ても、楽しいと思うのか?」


「それは……」


 流石に彼もこの問いにはイエスと答えなかった。彼の中に良心が残っているのなら説得できる可能性は高い。


「最初はみんな弱いもんなんだよ。悪いと思いながらも誰かに寄生して、少しずつ強くなって、ようやく独り立ちできるようになったら今度は誰かを手伝う側に回る。コンテンツっていうのはそうやってどんどん大きくなっていくんだ。今回の狩場の件に関してもそうだ。気に入らないからって難癖をつけてたら人は減る一方だぞ。歩み寄る姿勢を見せないとさ」


 俺の提言にタウは言葉もなく頷いている。フリではなくきちんと彼の心に届いていればよいが。そんな心配はすぐに晴れた。


 彼がテミルパーティーの方へと向き直った時のことだった。


「その、悪かったな色々と。理不尽なことで突っかかって問題を起こしちまった。単に狩場を独り占めしたかっただけで……つまり俺のせいだ。本当に悪い」


 これにはテミルも驚きを隠せないのか、直ぐに返事が出ないようだった。


「お、おう……装備も戻ってきたことだしいいってことよ。きちんと謝ってくれたんなら俺のパーティーメンバーだって許してくれらぁ」


「ありがとう。こんなことはもうしない」


「気にすんなって、誰しも(あやま)ちは犯すもんさ。ただしほぼ同Lvの俺たちを格下扱いしてたことだけは気に障るがな。だけどまあそれも仕方ねえってもんだ」


 (わだかま)りを吹き飛ばすように、テミルが大笑する。すんなりと謝罪を受け入れるなんてかなり大人な対応だ。


 何にしてもいざこざが長引かないようで良かった。これで本当の一件落着。彼らの復帰待ちをしていたこともあって時刻はすっかり深夜を回っている。俺たちもまたギルドハウスへと帰還した。


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