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「まさか……メルクトリが魔人だったとは……何と言うことだよまったく……」


 やりきれないとばかりに、カーラバルドが深々と嘆息(たんそく)する。


 魔人を退(しりぞ)けた俺たちが訪れた先は王室。一件の事情聴取のために(うかが)ったのだが、どうにも王さまの顔色が良くない。


 騎士団長の片割れが魔人だったのだからてっきり王も魔人サイドだと思っていたのだが、話を聞いた限りじゃカーラは無実のようらしい。


 俺に対する騎士団への推薦(すいせん)はメルクトリの熱弁を聞き入れてとのこと。更に都市戦の組み合わせもメルクトリの独断。封鎖区域で待機していたモンスターの調査報告は全て奴による偽造だったと判明。つくづくふざけた男だ。


 一応、無礼を承知でカーラを斬らせてもらったのだが、当たり判定は無し。これで彼が俺たちと同じ人間であることが証明された。白だと見て違いないだろう。


 そして肝心の経験値だが、どうやらキルゾーン中は入らないらしく、あれだけのモンスターを倒したのに俺たちのLvは175のままだった。


 惜しいというかもったいないというか……きっと経験値が入っていれば今頃230くらいにはなっていただろう。


「――彼が魔人であったことは残念だ。しかしこうして見ればひとつだけ彼の言い分が正しかったことが分かる」


 (あご)に手をやったまま、カーラがしたり顔で切り出した。


「ええっと、正しかったことって?」


「それはな〝莫大な資金を投入してでもアルトくんを騎士団へと招き入れるべき〟という提案さ。何せあれだけのモンスターたちを撃退してしまったのだからね。更にはレイドボスまで討ち取ってしまった。

 どちらも君のお陰だと聞き及んでおる。数百人を束ねてしまうカリスマ性と技量……これを千年に一人の逸材と言わずに何というか。その功績(こうせき)(たた)えて報奨金も用意しておるのだぞ」


 カーラは嬉々として監視場での一件を語る。


 だけど、俺には戦いの成果が全て自分のおかげだなんてまったく思えなかった。


「いえ、恐れながら。その評価には誤りがあります」


 即座の反論にカーラは目を丸くする。


「ほお……誤りとな。では聞かせてもらおうではないか、どのように誤りがあったというのかを」


 俺は席を立って振り向く。そこにはギルメンだけでなく、共に戦場を駆けた強者(つわもの)たちの姿が。騎士団も含めて、彼らこそが都市を守り抜いた立て役者だ。


「監視場での戦いは激戦でした。決して俺ひとりでなし得るものではありません。みんなが命を()して戦ってくれたおかげです。特にレイドボスの最終形態――自爆を止めるには俺ひとりでは絶対に不可能だったでしょう。だから英雄は俺だけじゃない。あの場にいたみんなが英雄なんです」


 ひとしきり聞いた後、カーラは納得いったように頷いていた。特に異を唱える様子もなく「なるほど」と相槌(あいづち)を打っている。


「ではこうしようではないか。モンスターを撃退した全ての者を英雄と認め、ひとりにつき1Gの報奨金を与える! 此度(こたび)は本当によく頑張ってくれた! これは心からの礼である、是非に受け取ってくれたまえ!」


 カーラバルドが高らかと宣言した瞬間、王室はかつてない喧騒(けんそう)に包まれた。


 ひとりにつき1G――10億ルクスという破格の報酬はバルドレイヤが大都市であるからこそ捻出(ねんしゅつ)できる額だろう。それにしてもな大盤振る舞いではあるが。


「いいんですか、全員ってなると約8000億でしょう。都市が破綻(はたん)したりしないんですか?」


 俺の心配がよほど面白かったのか、カーラはにんまりと破顔(はがん)した。


伊達(だて)に大都市とは呼ばれておらんよ、金ならいくらでもひねり出せる。それに彼らは皆、都市のために命を懸けてくれた。ならばこちらも全力で礼をするのが王たる務めであろう。もっとも冒険者からすれば1Gなど直ぐに溶かしてしまうのだろうがな」


 分かり切った風な物言いに、こちらも口角を緩めてしまう。


 装備に強化にエンチャントにと、俺たちはいつも金欠だ。それでもこの臨時報酬は有難い。心配には及ばないようだし、素直に頂戴(ちょうだい)させてもらおう。


「いま一度重ねて礼を言う。冒険者、騎士団諸君よ、此度の偉業――誠に大儀であった!」


 カーラバルドが賛辞(さんじ)を送る。冒険者と騎士団が雄叫びを上げて呼応する。俺たちの活躍は都市中に広まって、この日は三日間のお祭りでも最大の盛況(せいきょう)ぶりをみせた。


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