表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

141/216

140


「ちょっと大丈夫? かなり顔色が悪いわよ」


 そんな俺を見兼ねてコトハもまた近寄ってくる。


 普段は彼女たちがべたべたと引っ付いてくることに気だるさすらあったものの、ホモ野郎だと噂を立てられるよりかは遥かにマシだ。ここが天国のように思えてくる。


「いいかコトハ、世の中には色んな人がいる。中には他人のケツをスコップしようとしてくる輩もいるんだ。来世、もし男に生まれた時は覚えておくといい」


「言っている意味がよく分からないんだけど、なんだか大変そうね」


「ああ、とても大変だ」


 素気(すげ)()い会話を交わしながら俺たちは決闘場へ。


 観客席で待ち受けていたとある人物を目にすると、背筋に悪寒(おかん)が走り抜けた。


「――よおアルトくん。今日は都市戦最終日だが、調子はいかがなものかな」


 軽い挨拶を飛ばしてきたのは南の騎士団長メルクトリ。俺がいま最も警戒している人物だった。


「ん? どうして尻を手で隠しておるのだ?」


「え、いや……特に深い意味は……」


 かの偉大な騎士さまを男好きだと断ずるのは流石に失礼かもしれない。いつも通りの態度で会話に臨もう。


 ……おい待て騎士団長さま、それ以上近づいてくるんじゃない。やっぱりソッチの趣味かこの野郎。


「えーっと、今日も例によってサボりで?」


「おうともよ! 今日は都市戦最終日、これだけの人で賑わっておるのだ。騎士団だけ仕事仕事ではつまらんだろうて。なあに明日からは業務に戻るさ」


 昨日とほぼ言い訳が変わらなかったが、もう気にしないでおこう。願わくば言葉通り、明日からは勤勉に務めていただきたいものだ。


「確かにすごい人混みですよね。この会場だけでも何千と……他の会場や通りの人たちも含めると何万人っていう規模で。とにかく()()()()()っていうか」


 言いさした途端、メルクトリが俺の両肩を掴む。彼は子供のようなあどけない笑みを浮かべていた。


「そうだその通りだとも……多くて多くてたまらんのだ!」


 急に大声を張り上げた騎士団長に目を疑う。いったい彼に何があったというのか。


「周りを見たまえよアルトくん、これだけの人がいるというのに力を得ている者はほんの一握り。ここまでトーナメントを勝ち上がってきた者に比べれば、何とも無駄に膨大なものか!」


 メルクトリは息を荒げて訴えかけてくる。これまで目にしたことのないような熱狂ぶりだ。それほど……俺の言葉に共鳴できるモノがあったのだろうか。


「何十万、何百万といようがな、優れた者はごく少数でそのくせ民草(たみくさ)は我が物顔で踏み荒らしていくのだ。我らの星を、何の(やま)しさも見せぬ泰然(たいぜん)たる態度で。いやはや、まさか君がその理解に至るとは……勿体ないとしか言えぬ」


 怒涛(どとう)の勢いでまくしたてるメルクトリには、口を挟む隙もない。


 彼はひとしきり喋り終わった後、どこか名残惜しそうに俺を一瞥(いちべつ)した。


「――さて次はグループAの準決勝だったか。相手はあのティファレト。一筋縄ではいかないだろうね。健闘を祈っているよ」


 ひとしきり勝手に喋った後、勝手にどこかへと去っていくメルクトリはメルクトリだとしか言いようがない。相変わらずの奇天烈(きてれつ)さだ。


 ……にしても彼はバルドレイヤの人たちを快く思っていないのだろうか。あの言い分だとむしろ邪魔のように聞き取れる。自分たちの都市に住まう民を邪険に扱っているとでも?


 まさかな。それなら都市を守る騎士団長になんてなっていないだろう。


「分からないことばかりだけど……とりあえず今はアレだな」


 第六十一試合目の開始はもう間もなく。フィールドには既に俺を待ち構えている拳法家の姿が。おそらく彼がこのトーナメントで最大の難敵だろう。


 ここを乗り越えられるかどうか。――いや絶対に勝ちあがらなければいけない。そのために俺は全スキルポイントと有り金をはたいてきたのだから。


 今も声援を送ってくれる彼女たちのためにも必ず勝利してみせる。


閑話も終わり作者のメンタルも回復したところで、いよいよ彼との戦いです。激戦を予定しております!疲れそうだ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご愛読頂き有難うございます
星5評価ブクマレビューなどを頂けるととても嬉しいです。モチベーションが上がります。

ADRICAのMAPです(随時更新)。
MAP MAP MAP
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 案の定、黒幕 そしてそれに気づかない鈍感主人公 女性の好意以外にも鈍感だったか キャラが一貫してるぜ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ