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「いいの、買い物なんかに来て。まだ都市戦は続いてるのに」


 のんびりとショッピングしていると、コトハが(たず)ねてきた。


「残るはTOP8だからな。しばらくは休憩時間、だから息抜きにも丁度いいかなって」


「なら……何も置いていこうとしなくてもいいのに」


「だって付いてきたらまた騒ぐだろお前ら。いいか、街の中で人さまにべたべたと引っ付いてくるんじゃない。俺がどんな名前で呼ばれているか知ってるか? ロリマンサーだのワイフボットだの酷い噂が流れてる。分かったな自重しろ?」


「……混浴してた時は鼻の下伸ばしてたくせに」


「なっ、おまえ――」


 コトハの語弊(ごへい)(とが)めた頃には時すでに遅く……俺は周りの冒険者にドン引きされていた。


 何だその、俺が無理やりこいつらを風呂に連れ込んだド変態みたいな眼差しは。まったくもって逆だからな畜生。


「おお、見たまえよアルトくん。銀のかなづちが大量にあるのだ。これでエンチャントがたくさんできる、夢のようではないか!」


 フィイが棚にあるエンチャ用アイテムを指さした。


 きらきらと目を輝かせている彼女は、きっとそれで遊びたいだけだろう。余裕ができたらいっぱい買ってやるか。とりあえず今は数個だけ購入。


「あのねあのね、リズはこれがいいとおもうの。おにいちゃんはどう思うかな」


 リズが持ってきたのは、バルドコーラと呼ばれる状態異常を回復する飲料。


 おおかた効果ではなくジュースを飲みたいだけだろうが、リズの悲しむ顔は見たくない。


 まあこれくらいなら……購入。


「ククク、我はこれが気に入ったぞ。何とも禍々(まがまが)しい気色(オーラ)を放っておる。きっと魔界へ通じる魔道具に違いない」


 ペルが手にしているのは、飲むとランダムな効果が発動する謎ポーション。


 いらない。これはいらない。しかし「却下だ」と言うと「ふえぇ……」と素の声で(なげ)かれた。


 …………購入。


「ねえねえアルト! ほら見て、こっちにこんなアイテムが」


「却下だ」


「まだ何も言ってないじゃない!」


「どうせまたろくでもないものだろ。お前はフィイたちより年上なんだから我慢しろ」


「どうしてわたしだけ……ううぅ、ううううぅぅ!」


 コトハからげっ歯類みたいなつぶらな瞳で睨まれる。


 ちょっと可哀想だったかもしれない。物だけは見てやるか。


「これは……」


 コトハが見つけたアイテム、拡声器(かくせいき)。それは地域一帯の冒険者へと強制的にチャットを流すことのできる消費アイテムだ。ひとつチャットを流す度に消費するため燃費が悪い。


 そう言えばこんな物もあった。拡声器を利用して幾つものパーティーへと情報を共有、連携を取ってレイドボスを倒す、なんてことも前はしてた。


 これを利用すれば……もしかするとあの事態に備えることができるのかも。


「ナイスだコトハ、すっかりこの存在を忘れてたよ。本当にありがとうな」


「まあね、う、うん……わ、分かってたのよアルトが何を必要かくらい。だってわたしが()()()()()()()()なんだから当然でしょ」


 しどろもどろに言うコトハはとても胡散(うさん)(くさ)い。威張(いば)るように部分的に言葉を強調した点もまた不明だ。が、気にしないでおいてやろう。


 一方でぐぬぬと悔しそうな声を上げているのはフィイとリズ。よく分からないが女同士の争いというものには首を突っ込まぬ方が利口なのだ。ドイツの哲学者ショーペンハウアーも言ってた。


「アルトくん、あんな物よりももっといいアイテムがこっちに」


「おにいちゃんおにいちゃん! ほら、このポーションの方がきっと――」


 対抗するかのようにあっちこっちからアイテムを集めてくるロリっ()ども。


 ええい、買い物が進まん……進まんではないか!!


「大変そうね」


 そんな俺を気にも留めず、ふふんと上機嫌に鼻を鳴らすコトハ。


「ああ、本当に大変だ」


 今も俺にべたべたと(まと)わり付いてくる少女×3の相手をするのは、まさに大変だとも。


 それどころか時にはコトハにも睨まれる。更にはバルドレイヤの冒険者たちなんて喧嘩っ早い奴ばっかりだ。もう幾ら挑まれたか分からない。


 それでもこの忙しさが楽しいと思える。この日常を守らなければとも。


 だから俺は有り金をすべてはたいて拡声器を買えるだけ購入した。


 いつ攻め込んでくるか分からない、モンスターの大軍勢に備えて。


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