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122(アルトvsノルニオッゾ)

ちょっと長いですが、区切るとテンポ悪そうなので一気にいきました!


 決闘場はコロシアムとほぼ同じ作りで上階には観客席が設けられている。ドーム状かつ屋根のない青天井。選手たちが戦う地上には一切の障害物がなく、円形の平地があるだけ。


 余計な小細工もできない、まさに決闘にはおあつらえ向きのフィールドだ。


『はじめに出場選手の紹介です。アルト選手Lv175、職業ミストルテイン、遠近両刀のテクニカルなジョブです。対してLv181のノルニオッゾ選手は近接特攻のハイランダー。剣、槍、斧三種の武器を巧みに操ります。Lvも近く非常に熱い戦いが予想されるでしょう!』


 アナウンスの選手紹介が終わったところで、対面の黒髪オールバック男ノルニオッゾが不敵に笑う。


「熱い戦いか……悪いなあんちゃん、()()()()をするつもりはねえんだけどよ。6Lv差もありゃあ負けの言い訳もつくってもんだ。そう気負わなくていい」


 いかにもな口ぶりの彼はなるほど、勝利を確信しているようだ。


「そうか。たかが6程度ならいくらでも(くつがえ)せると思うのだが」


「はっ、くだらねえことを。お前のプロフを見たところ決闘名誉は〝見習い騎士〟とても決闘慣れしているとは思えねえ」


「これが初の公式大会だからな。悪いがここで名誉ポイントを稼がせてもらう」


「ビッグマウスもほどほどにしておけ。ふふっ、オッズを見ても結果は明らかだ。お前が勝つと思ってるやつは少数。結局、俺が勝つってわけさ」


 はるか頭上に掲げられた電子パネルには、俺とノルニオッゾどちらが勝つか賭けの内訳が表示されている。俺が三割でノルニオッゾが七割。


 俺側に三割もあることに驚きだ。恐らく元々都市にいた住人たちだろう。外部から来た者はほとんど俺を知っていない。


『――それでは第一試合アルトVSノルニオッゾ、試合を開始してください!』


 アナウンスの声と共にブザーが鳴る。それに応じてなお激しく湧き立つ観客たち。


「これだけ大勢の人がいて、そのうちの七割を失望させてしまうのは忍びないな」


 半ば独り言のように呟くと、


「それは不要な心配だ。……この後失望するのはよ、見る目のねえごく少数だぜ、三割男!」


 手に大斧を携えたノルニオッゾが、怒声を上げながら駆けだした。


 接近戦はハイランダーの領分。対してこちらは習得スキル的に見て中遠距離が得手。


 ならば近寄らせるまでもなく――迎撃する。焦りを見せた時が奴の最期だ。


「これは……」


 ノルニオッゾが俺の武器を見て瞠目(どうもく)する。


 インベントリから取り出したのは二丁のリボルバー。本来であればガンスリンガー系列でなければ使用不可の武器。ミストルテインである俺には、これさえも使用可能の対象だ。


「チィッ!」


 バックステップで距離を取りながらの銃撃。ただの通常攻撃に過ぎないが、それでもじわりじわりとノルニオッゾのHPは削れていく。


 装填、銃撃、そしてバックステップで立ち回ることによって完璧なカイティングを継続していく。


 このまま追いかけっこを続ければ、いずれ奴が倒れる定めだろう。近接ファイターには打って付けの対処法だ。


「調子に――乗んじゃねえよクソがぁ!!」


 さりとて奴はLv181の冒険者、そう易々と倒れる男でもない。


 ノルニオッゾが気迫に満ちた面貌(めんぼう)で大斧を振り上げる。やにわに男を中心として大気が逆巻く。いわゆる溜め攻撃、強力なAoEスキルを放つ前兆だ。


 十秒を超える馬鹿みたいに長い詠唱を必要とするスキルだが……これは、()()()()()()()


「スキル〝バーストエンド〟!」


 大斧が大地を叩き付けた刹那、ことごとくを破砕する衝撃波がフィールド全体に放たれる。当然、回避などできようはずもなく――俺は壁際まで吹き飛ばされた。


 瞬時にできたこと言えば空に向けて一条の矢を放ったことのみ。


 HPゲージは赤く点滅している、あと一発でももらえば即座にダウンするだろう。


 ……だが()()()()()


「はははっ、これがハイランダーさまのスキルよ! 呆気のねえ勝負だったなぁ!」


 横たわる俺を見て、すかさず距離を詰めてくるノルニオッゾ。


 今が好機だと言わんばかりに大斧を構えて疾駆(しっく)する。そして最後のとどめを刺そうとそのバトルアクスを目いっぱいに振りかぶって、


「がぁ……っ!?」


 瞬間、雪崩を打って空から降り注いだのは総計五十もの弓矢。


 奴の追撃を信じて放った〝フェリルノーツ〟は見事に男の総身(そうみ)を刺し貫いた。


 かてて加えて瀕死になったことにより〝激震〟が発動。ステータスは1.5倍。上積みされた威力によってノルニオッゾのHPが大きく削れる。


「こいつ、小癪(こしゃく)な手を――っ!!」


 ハイランダーが激昂(げっこう)する。是が非でも俺を仕留めようとバトルアクスを振り回す。二度、三度、四度と(たけ)(くる)う大斧はだが俺を捉えることなくあと一歩のところで空を切る。


 俺がバックステップによる銃撃を再び開始したのだ。ただの通常攻撃にやられるほどこちらも甘くはない。


 だがこの状況はハイランダーにとって何より都合が悪く〝激震〟によって通常攻撃の威力もまた跳ね上がっている。鉛を浴びる毎にゲージが目に見えて減少する。いかつい(おもて)に冷や汗を(にじ)ませるノルニオッゾ。


 打てる手などいくらでもあろうが、次に奴がどうするかは想像に易い。――俺は武器をマジックロッドに持ち替えた。


「だから――調子に乗ってんじゃねえよ格下ァ!!」


 大斧を振りかぶるハイランダー。スキル〝バーストエンド〟を撃つ前兆であるのは一見して汲み取れる。だからこそこちらが()()()()()()()()()()()


「はははっ、これでお前は死に、死に晒すんだよぉ、無様な醜態(しゅうたい)を観衆の前で――」


 ノルニオッゾの饒舌(じょうぜつ)はそれ以上続かなかった。


「は……っ?」


 頭上から迫りくる数々の隕石を目に、男は硬直する。


 もはや間に合わないと悟ったのだ。スキルを中断することも回避に徹することも。


 俺が奴の初撃を丸腰のまま受けたのはなにも〝激震〟を発動するためだけじゃない。数々の攻撃を躱された挙句に〝バーストエンドは当たった〟という印象を奴の中で色濃く刻ませるためだ。


 そうすると人間は最終的にどういった行動に出るか。()()()()()()()()()()()()()()。それも、()()()()()()鹿()()()()()()()()()()()


 これだけの隙を晒してくれるのなら……こちらの大技が簡単に当たる。


「スキル〝シューティングスター〟相手は死ぬ、ほらな」


「お前……お前、お前えええぇぇ!!」


 フィールドに轟き渡る怒号と歓声、それらを男の満身もろとも挽き潰すのは蒼天(そうてん)の彼方より飛来した十三もの流れ星。HPが尽きてノックダウンするノルニオッゾ。


 アナウンスが俺の勝利を告げた。


のちほどトーナメント表更新します……

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[良い点] >ちょっと長いですが、区切るとテンポ悪そうなので一気にいきました! ナイス判断!一気に1試合分読めるのはめっちゃ爽快でした!
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