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閑話終わりです
「ねえリズ、わたしにもそれ貸してよ。おばけなんてわたしが倒しちゃうんだから!」
「えー……だっておねえちゃんすぐこわすもん。リズが作ったジョウロもすぐに壊しちゃったし」
「あはは……そ、そうだったかしらね……」
痛いところをつかれたのかこれにはコトハも苦笑い。
素のステータスで筋力が115もあるのが原因なのか、元々の荒い気性が原因なのか、彼女は割とすぐに物を壊す。対して作る側のリズはご立腹である。
ていうか……いい加減眠くなってきた。そろそろ電気を消そう。このままだとこいつら一向に騒いだままだろうし。
「ひゃあっ……わ、わわわ……アルトくん、で、でんき、でんきが!」
パチンと電気を落とした瞬間、フィイがパニックに陥った。
あのーシスターさん、これ心霊現象じゃないですよ。
「くせ者、くせ者よ! やっぱりこの家の中にゴーストがいるわ!」
そして自信満々に声を張り上げたのはコトハ。
こいつは……毎度毎度、事を大きくすることしかしねえ……っ!
「ああもう何がおばけだよ、今のは俺が電気を落としただけで――」
カチ、電気をつけ直した途端、
「ひゃあああああああああぁぁぁ!?」
今度はフィイがぐるぐる目になりながら発狂した。
「ぼ、棒が振れている、激しく振れているのだ!!」
どうやらシスターさんは手に持ったエセ探知棒の揺れを見て動揺しているらしい。フィイよ気づいてくれ、それはお前がパニックになって揺らしているだけだ。
「しかも探知機はおにいちゃんに向いているよね……つまりおばけはおにいちゃんにとりついている!」
リズがキメ顔で俺を指さした。
なるほどエセシスターの次はエセ名探偵が湧いたらしい。俺バキバキ正常なんだけどおかしいな。
「やっぱりわたしの見立ては間違ってなかったと言うことね、きっと封鎖区域にいた魔人が憑依したんだわ!。――さあ覚悟しなさい魔人、アルトの身体を返してもらうわよ!」
言いながらコトハはスキル〝バーサーカー〟を発動。青いオーラを身に纏いながら二刀の切っ先を突きつけてくる。
「さ、悟れ、地の審判者よ、戦きて其前へ喜べよ――ブレス!」
間髪入れずにフィイがバフ効果を付与。
「おにいちゃんはわたしが守るんだから!」
続くリズはDEMを展開、近接・遠距離型攻撃ロボットを召喚した。
すっかり戦闘態勢に入っている彼女たちは俺を不眠に追い込む算段なのだろうか。
『やああああああぁぁ!』
そしておばけなるものの存在を信じてやまず、突進を仕掛けてくる少女たち。
俺はコトハの顔面に枕を投げつけてこう言った。
「寝れねえだろうがああああああぁぁ!!」
明日は都市戦本番。出場選手の中で最悪の前日を過ごしたのは間違いなく俺だろう。
都市戦当日に向かいます!