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「おにいちゃん、たてを持ってる敵さんにはどうやってたたかえばいいの?」
問いかけてくるリズの頭には大きな疑問符が浮かんでいた。
「スキルでの攻撃が有効だ。盾と言っても全ての攻撃を無効化できるわけじゃないからな。盾で防げるのはあくまで一定数値のみだ。
……あとは移動速度を上げて背後に回り込んだりだとか。盾を持ってる分、機動力が損なわれるからな。その点バーサーカーのコトハは機動力が高いから、より速く攻めるのが有効的な手段だろう」
「確かにわたしには移動速度を上げるスキルがあるわね……あれなら」
コトハが納得いったように頷く。
だがいくら理解したとは言え、理想を唱えるのと実際にやるのとでは大きな隔たりがある。しばらくはひたすら実践あるのみだな。
「冒険者同士の戦いはスキルの撃ち合いが基本となる。だけどコトハの職業は特殊で、コンボ数を稼いでから強力なスキルを叩きこむ――いわば通常攻撃が主体のジョブだ。
だから勝つためには立ち回りを上手くしないといけないんだ。後で対アーチャーとマジ対策もやっておこう」
「――おにいちゃん、おにいちゃん。」
その時、なにか言いたげにリズがくいくいと俺の裾を引っ張る。
「どうしたんだリズ?」
「あのね、もしよかったらだけど……オペレーター系列のジョブはわたし以外いないよね。だからおねえちゃんのとっくんに、役立てたらなっておもって……」
「それはつまり……リズがコトハと決闘をするってことか?」
こくりと、リズが小さな頭を振る。
たしかに俺ではオペレーターの真似事はしてやれない。だけどリズにやらせて大丈夫だろうか。いくらダメージがなくとも剥き身の刀とか振ってくるの怖いと思うし、トラウマにならないといいんだけど。
「しんぱいしないでおにいちゃん、リズ、がんばるから!」
俺の沈黙を察したのか、リズは気勢に満ちた目で訴える。
覚悟があるのなら、無下に拒んでは失礼というものだ。小さくとも彼女も立派な冒険者なんだから。
「よしじゃあやってみてくれ。コトハ、今からリズとの決闘だ。もちろん手を抜くなよ」
「分かってる。年下が相手だからって舐めたら失礼だもんね。……さあ行くわよリズ!」
「うん……よろしくね、おねえちゃん」
俺に代わって、白髪の少女が訓練場へと足を踏み入れる。
ルールは、先にHP0になった方の負け、今のMAPを適用、消費アイテムの使用不可。
そしてデスペナルティはもちろん無し。通常ルールでの果たし合いだ。
「きて――イージス!」
こつぜんと空中に現れたむき出しの操縦座席、無数の電子パネル、操作ボタン、それらは彼女を中心として展開される。
あれこそが彼女のフィールド、DEMと呼ばれるオペレーター系列特有の武器だ。
「ちょ、ちょっとなによそれ……」
リズのスキルによって〝イージス〟と呼ばれる機械仕掛けの守護者たちが召喚される。
ガトリング、キャノン砲、ミサイルといった遠距離攻撃に特化したDA-79。
ビームソードを四つの手、全てに携える近距離攻撃に特化したAT-31。
初めて目にするスキルの数々に、コトハは大きく目を見開いていた。
「それじゃあいくね……おねえちゃん」
不敵に笑うリズが操縦座席でパネルに触れる。やにわに動き出す二体のイージスたち。
「分かったわ……よく分かんないけど、そのロボットたちを叩き潰してあげるわ!」
コトハが張り上げた宣誓によって、バーサーカー対カタクラフトの火蓋が切られた。
次話、ちょこっと戦闘です!