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これで来た道をすぐ移動できるようになりました。ツリーの収穫とか色々は、今後イベントでやりたいですね。


 わざわざ高い金を払ってギルドハウスを購入した理由にはわけがある。


 ギルドハウスとはただの家ではない。アイテムを生産できる作業台はもちろん、消費アイテムの元になる果実や穀物を植える庭があったり、各地域に転移できるポータルが設けられていたりと、冒険者にとっては(いた)れり()くせりの機能が充実しているのである。


 これで生産場に出向く手間や、素材アイテムをかき集める面倒がだいぶ緩和される。こじんまりとした宿屋暮らしも卒業できたことだ。少々、値は張ったが何も文句ない。


「――といったところだ。ギルドハウスには色んな機能がある。たいていのことは家の中でできるはずだ。ここまでで何か分からないことはあるか?」


 ギルドハウスツアーも終わったところで、彼女たちに呼びかける。


「ポータルっていうのは好きな地域に行けるんでしょ。それだったら一気に高Lv帯のマップまでいけるんじゃない?」


 初めに疑問をあげたのはコトハだった。


「それはできない、ワープするには〝既に踏み入れた地域であること〟という条件があるんだ」


「そうなのね……でもこれでかなり便利な冒険ができるわ。いつでも好きなIDに行くことができそうだし。あれ……でも待って、帰る時はどうすればいいの?」


「その時はメニュー画面を開いて〝ギルドに帰還〟を押せばいい。ID中や戦闘中は使えないけどな。項目を見てみろ、新たに機能が追加されているはずだ」


 コトハたちが冒険者の徽章(きしょう)に触れて、いつもの電子パネルを展開させる。


 プロフ、装備、ステータス、インベントリ……さまざまな情報が並んでいるが、その一番端のタブには〝ギルド〟という項目が追加されていた。やはりこの機能もADRICA通りだな。


「ほんとだ……おにいちゃんすごい! それにおうちには作業台もあるみたいだし、これでたくさんアイテムを作れるのかなって」


 リズが目をキラキラさせている。人見知りな彼女はあまり大勢いる場所にはいきたくないのだろう。どうせだしあとで作業台をリズの部屋に移動させておくか。


「あとは……これだな。ギルドハウスといえばギルドツリー、今はまだ小さな苗木だけど、そのうち立派な大樹になるはずだ。稀にレアアイテムを実らせてくれることもある。これから大事に育てていこう」


 庭の中心でポツンと芽を出している状態のギルドツリーは、まだ幼い。


 しかしひとつきも経てばそれなりに成長した姿が見られるだろう。ツリーの()()()()()()が楽しみだ。


「……おいコトハ、お前はソレで何をするつもりだ」


 とここで早速、常識知らずのお姫さまが行動に出た。その手にはたっぷり水が入った大バケツを抱えている。


「何って決まってるじゃない。水やりよ水やり。どう、わたしって偉いでしょ」


 ふふんと自信満々に胸を張るコトハ。こいつの栄養が足りていない箇所はその平らな鉄板だけではなかったらしい。


「そんなもんかけたら……一発でツリーが枯れるわぁ!」


「あ、ちょっとアルト! そんな……せっかくお水汲んできたのにぃ!」


 ぽーい、とバケツをぶんどって放り投げる。ダバッという重たい音色は、明らかに少量の水が漏らす音ではない。五リットルくらいはあったかもしれない。


「ふふ、ここはわれに任せたまえよ。こんなこともあろうかと聖水を用意していたのだ! さあ神聖なる(めぐみ)を受けて、すくすくと育ちたまえ!」


「――おい待て」


 シャバシャバと聖水入りの小瓶を振るフィイの手を止める。


「な、なにをするのだアルトくん、われは今から水やりを――」


「そんなものをかけたら聖属性のダメージが入るだろ。枯れるからやめろ」


「そういえば聖水には……ダメージがあるのだな……う、うむ……」


 あたかもいうっかり風な言いっぷりだが、俺には分かる。フィイは単に知らなかっただけだろう。


「おにいちゃんおにいちゃん。あのね、わたし……」


 そして矢継(やつ)(ばや)に声をかけてきたのはリズ。


 その手にはなんと……手頃なサイズのジョウロが。


「お水をあげるなら、その、こんなの作ってみたから……どうかなって」


 さすがは工作に長けたカタクラフト。そして一般常識の備えはもしかすると彼女が三人の中で一番かもしれない。いいぞリズ、コトハたちに水やりの作法を教えてやれ。


「リズはしっかりもので偉いな……ってこれはいったい……?」


 ジョウロの持ち手に、なぜか引き金が備え付けられている。なんだこれ。


「そのままだとちょっとおもしろくないから、てっぽうみたいにしてみたの。ほらおにいちゃん、ひきがねを引いてみて?」


「……」


 カチっと音が鳴った瞬間、ジョウロの先端から水のレーザーが放射された。


 ズオオオオオオオオオオ――土壌が吹き飛んだ。


 こんなもので水やりしたらどうなるかは言うまでもない。


「……ツリーの面倒は俺がみる。いいな?」


 今度こそは、名乗り上げるものは誰一人としていなかった。


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