表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/216

099

不穏な空気が漂ってますが、決闘は都市戦開催までしません。決闘は毎回、種を変え品を変えといった風にまだまだバリエーション豊富なので、同じパターンは基本やりません。ご期待ください!


「断る。二言は無いさっさと立ち去れ」


 ぴしゃりと拒絶されたケベルは、しかし大人しく引き下がってはくれないようで、得意げな面持ちのまま(あご)に手をやっていた。


「ほう、これはまた随分と嫌われてしまったものですな。こちらはまだ条件の提示すらしていないというのに」


「条件もクソもあるか。何があっても俺はパーティーメンバーを売らない。分かったら()く消え失せろ」


「おにいちゃん……」


 俺の手を取るリズが満面を咲かせる。


 繋いだ手から震えが伝わってくるあたり、彼女はおびえていたんだろう。もし俺に見放されたらどうしようと。こんな小さな女の子を怖がらせるなんてひどい話だ。


「散々な言い草ですなあ……まあまあ、まずはこちらでも」


 それでもケベルは俺の意見も無視して、インベントリから小袋とアイテムを取り出した。


 500mルクスとエンチャントに必要なかなづち……しかもこれは金色か。


 通常の銀のかなづちならば物理攻撃力のエンチャント数値は+1~+100。しかし金色なら+1~+500と高い上限値が設けられている。武器をより強くするためには必須のアイテムだ。


 その価値は高く、オークションだとひとつにつき100mはくだらない。


「500mと金エンチャ五本……総額1Gで手を打てという話か。安く見られたものだな、それだけでは――いやどれだけ積もうと俺が意見を変えるつもりはない。言ったはずだ、二言はないと」


 そう言い放った途端、ケベルの顔つきは驚愕(きょうがく)に染まる。


「馬鹿な……正気ですかな。資産価値およそ十億ルクスにものぼる好条件を突っぱねると? まるでトレードの素人、とてもまともな冒険者とは思えません」


「ざれごとだ。貴様は回収できる算段を見越しての申し出だろう。たかが1G程度カタクラフトの特殊ポーションを量産すれば容易に元手が取れる。

 たとえば勇猛のポーションは単価1mだが、毎日素材を集めて生産すれば、月でおよそ200~300mは売り上げることができるだろう。その他の特殊ポーション類も含めると、1G以上を稼ぐことなど造作もない。俺がオークションの相場を知らないとでも思ったのか、()()()()()()()め」


「ぐ、ぐぐ……」


 歯を食いしばりながら(うな)るケベルには、これまでの余裕などどこにも見えなかった。


 いよいよゲスの本性を現してきたな。


「よいでしょう! それならば2.5、いや3Gでどうですかな!? これならばさすがに不釣り合いだとは言わせませんよ!」


「断る」


「なっ――」


 この期に及んで交渉を続けるケベルは、真に愚昧(ぐまい)だとしか言いようがなかった。


「はなから言っているだろう、リズを売り渡すつもりはまったくないと。第一、貴様はリズと冒険したいのではなく、収入を得ることが目的だろう。幼いからといってあまり彼女を侮辱(ぶじょく)するなよ。たとえ小さくとも彼女も立派な冒険者だ。飼い殺すような真似はさせん」


「こ、この……大人しく聞いていれば、偽善者風情がべらべらと……っ!」


 エセ公爵(こうしゃく)っぽい見た目の男は、やはりエセだったようで、今ではすっかりその顔に野太い血管を浮き上がらせている。既に気品など感じられない。顔つきも口調も、蛮族(ばんぞく)のそれである。


「――勝負だ、この私と勝負をしろ!」


 そしてケベルは息を巻いて宣告した。


 利欲にまみれたゲスであっても、さすがは冒険者の端くれ。気に入らない相手となると叩き潰さねば済まないようだ。


「何だ何だ、小競り合いか?」


「どうやら冒険者同士のいざこざらしいぜ。――片方は有名人のアルトだな」


「ああ、凄腕の新人だ。何でも初見でコロシアムを制覇しちまったんだとか。その腕前でハーレムを築き上げてるらしいぜ」


「また女の子増えてんな……」


 俺たちの騒動をかけつけて周りから多くの冒険者が寄ってきた。


 非常に納得いかない(いわ)れをされている、やめろ俺は健全だ。ありもしないことを吹き込むんじゃない!


「まあいい……それでお前は決闘がお望みか? 先に忠告しておくが、辞めておいた方がいいぞ。だがどうしてもと言うのなら受けて立とう」


「ふふん、その言葉もまた二言はないであろうな。果たし合いの承諾――しかと聞き届けたぞ、ミストルティンのアルトよ」


 こいつ、俺の職業名を……?


 単にプロフを確認されただけかもしれないが妙にくさいな。いきなり饒舌(じょうぜつ)になった点もまた怪しい。もしや最初から俺をタイマンに持ち込む算段だった?


500m……5億

1G……10億

2.5G……25億

3G……30億

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご愛読頂き有難うございます
星5評価ブクマレビューなどを頂けるととても嬉しいです。モチベーションが上がります。

ADRICAのMAPです(随時更新)。
MAP MAP MAP
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[良い点] 祝!100話です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ