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人間の生態

作者: 杏呑 杳(キョウノ ハルカ)

人間とは不思議なもので、強制力が働くとやる気が無くなったりする。また、その強制力というのも種類があって環境から来る自然的な強制力や、人から人へといった直接的な強制力などがある。

1つ例に挙げると、学校や塾で例えるのがわかりやすいと思うが、自習の時間などを思い出して欲しい。ここでは人から人へ、つまり監督者から生徒へ自習の強制力が働く。自習の強制というのもおかしな話だがそれは3mくらい前の方に置いておく。話は戻すが、自習の時間というのはなんともむず痒く、授業のそれとは違った空間に感じる。それもそうだ。授業なら先生の授業をBGMに、寝てる人もいれば、授業を真面目に受ける人、コソコソとイタズラなんかをしている人もいるだろうが、自習の時間には先生は黒板には向かわずにこちらを凝視しているからだ。また、監督者の行動によってもその空間の緊張感、強制力は変わってくる。

例えば、前の方で腕を組んで座りながら、夢と現を行ったり来たりしている監督者だったそすれば、生徒の中にきっと、先生を起こさないように悪ふざけをする人が出てくるだろう。逆に、自習時間中ずっと教室内を歩き回って監視の目を向けている監督者がいれば、生徒たちは監督者の圧政に怯えながら、または、静かな環境に歓喜しながら勉強に励むことだろう。

私が言いたいのはこのどちらでもなく、教室の後ろの方で静かに監督をしている監督者だ。人間が最も恐れるのは目に見える恐怖ではなく、監督者の視線でもない。後ろで何が起こっているのか、監督者は今起きているか、もしかしたら今自分の後ろで私のノートを凝視しているかもしれない。つまり、分からないという恐怖だ。振り向けば解決するかもしれないが、1度振り向いたあと、また前を向かなければならない。さっき振り向いた時には後ろで寝ていたけど、次振り向いた時には自分の後ろにいるかもしれない。まさにシュレーディンガーの猫状態である。そんなことを考えているうちに、自然と皆勉強に没頭し始める。人間の恐れるもう1つの事は思考する事であるからだ。思考するのを辞めるには何かに没頭するのが最善策だろう。そう思い始める生徒が増えるにつれて、周りの生徒たちもその静かな強制力に押され、勉強に没頭し始める。これが環境から来る強制力だ。

同じ「監督者が静かに監督をしている」状況でも、前にいるか、後ろにいるかだけでも生徒たちの態度はまるで変わってくる。



人間とは不思議なもので、仲が悪い同士でも、周りから見ると仲が良さげに見えたるする。「喧嘩するほど仲がいい」とは言うが、当人達からしてみればただのお節介でしかない。「仲がいい」とは「親しい」と訳されることもあるが、''親しさ''とは一体どういうものかと考えてみると、やはりどれだけ一緒の時間を共有するかであると思われる。例えば、「あの知らないおじさんと、あなたと仲が悪いAさんとではどちらとより親しいですか?」と聞かれれば、「Aさん」と答えざるを得ない。しかしおかしな話だ。別に''知らないおじさん''とは別に仲が悪い訳では無い。なのに、より親しいのは仲が悪いはずのAさんなのだ。それはそうだ。話してもいない人と、少なくともお互いを認識し合ってる人とではお互いをより理解している分親しいはずだ。つまり、「どれだけ親しいかは、どれだけ一緒の時間を共有するかである」という私の考えも正しいのではないか。ここで問題なのは、新たにBさんという「昨日会ったばかりでお互いの名前しか知らないけど良い人そうだ」という印象の人だ。

この場合どちらとより親しいと言えるのだろうか。

''私''はAさんよりBさんの方が好印象を持っている訳だが、付き合いが長く、より相手を理解しているのはAさんの方だ。辞書を引けば、(打ち解け合い、仲がいい)だとか(関係が深い)などと書いてある。この時、打ち解けあっているのはBさんの方だが、より関係が深いのはAさんの方であるから余計にわからなくなる。

ここで私は1つ提案をしてみる。

「仲がいい」と「親しい」を別のものとして考えるのだ。私の考える「仲がいい」を「関係が良好である」と定義し、「親しい」を「相手との認識が深い」と定義することにする。そうなれば、Aさんは「仲は悪いが、親しい」となり、Bさんは「仲は良いが親しくはない」となる。詰まるところ、「喧嘩するほど仲がいい」は今私の中では「喧嘩するほど親しみが深い」という言葉に起きかわったのである。

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