百猫夜行
「来た来た。張り切ってお迎えしなくては。」
一郎の問いかけは無視して、大猫は右手で器用にばっと巨大な提灯を広げた。広げた瞬間、提灯にはもう灯が入っている。
「遠路はるばるいらっしゃいませ!黄泉の国はもうすぐそこですぞ!!」
大猫が声を張り上げる。小さな灯りの列は一郎の目の前までやって来て、それは提灯を手にした猫と人の列だということが分かる。
隊列の先頭は白の子猫。右手に小さな提灯を持ち、二本足で器用に歩いている。その後ろには小学1年生だろうか、黄色い帽子に赤いランドセルを背負った女の子がニコニコしながら白猫を追いかけている。
その次は小太りの黒猫。後ろをちらちら振り返りながらゆっくりと歩いている。黒猫が振り返る先には腰の曲がったおばあさん。杖をついて一歩一歩確かめるように歩いている。
提灯を右手に持って二足歩行する猫と楽しげな人の組み合わせの列がずっと続いている。
ふと大猫の方を見ると、改札があった辺りに巨木のような柱が二本立ち、そこに注連縄が張られている。
柱の先は登山道のようになっていて、道の両脇は灯籠で照されていた。
「これは一体…」
「百猫夜行だ。」